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短編
痴漢電車(逃走中と武装天使閲覧必要) 前編
 これは、ある痴漢の悲劇の物語である・・・。

〜こまどり〜
 男は、ターゲットと決めた高校生らしき少女の身体を撫で回した。と、少女が、自分の手を握り何かをにゅるりと擦り付けた。
 まずい!駅で駅員に突き出されたら、と、男は扉が開くと同時に、逃げ出した。電車の閉まる扉の向こうで、にこやかに手を振る少女。
 痴漢は、その時やっと違和感を感じて、手を見た。
《キャンディ、愛しているよ》
 手に、たぶん接着剤で着けられた紙。その紙に血で書かれた文字。下手くそな男の顔のイラスト。その目の部分には・・・本物の人の睫毛が貼られていた・・・。
 固まる痴漢の前に、ラフなスタイルの男が立った。
「ねえ・・・どーしてぇ、俺のあげたキャンディちゃんへの手紙ィ・・・持っているのおォ」
 そう言って、目の前に立つ男は・・・サングラスを取り・・・。
「ぎゃあああああああーーーーー!!!!」
 男の目には睫毛が1本もなく、無理矢理むしり取ったのか、所々血豆が出来ていた。
「駄目駄目駄目駄目ダアアアアアアアアメエエエエエ・・・・・・・・・!!!!!」
 男は痴漢の肩を握り、絶叫した。

〜一郎〜
 あの日、錯乱状態の男は、駅員に取り押さえられ、混乱の中痴漢は逃げた。ちょっぴり、漏らしていたのは秘密の秘密だ。
 怖かった・・・。もうあんな目には、遭いたくない・・・。
 でも、痴漢は止められない・・・。
 ただ、女を触ろうとすると、じんわり漏れるモノが・・・。
 痴漢は、考えた。背に腹は代えられない。可愛い、または綺麗系の男の子狙いでいこう、と。痴漢は、ノーマル寄りのバイであった。この日のターゲットは、あまり見かけない学生服の、銀髪で紫の瞳の綺麗な少年。
 さわさわと触ると、少年は不思議そうな顔をして、キョロキョロと周囲を見回す。と、いきなり、ぐりっと手首を捻り上げ、
「スリですか!悪い子ですね!」
 と、叫んだ。
 ・・・スリは尻を撫で回さない。
 ともかく、スリと聞いて周囲は、ぎょっとして、寿司詰めの車内にも、少しの隙間が出来る。ここで、痴漢は少年に手を捻り上げられたまま、周囲の人間に認知された。
「悪い子には、メッです。残念ですね。俺の財布は胸ポケットです。それに、ズボンのポケットは横で、お尻の方にはないんです。いくら撫で回されても、モミモミしても、無駄です!」
 ・・・・。
「あのー、お尻って・・・スリじゃなくて痴漢じゃないの?」
 中年の女性が、言いにくそうに突っ込む。
「違いますー。俺、見た目こうだけど、男です。この人一回俺の股間も揉みましたから、女の人と間違えては、ないんです」
 ・・・・。
「あのね・・・スリは股間は揉まないし、貴方みたいに綺麗な子なら、男の子でも痴漢はあるわよ」
 再び突っ込む女性は、勇者である。
「痴漢さん?」
 少年は痴漢を見て、口をぽかんと開ける。
「凄いです!俺、痴漢って初めて見ました!本当に居るんですね!俺、お付き合いもしていない方の、不特定多数の身体を弄るなんて、そんな頓狂な生き物がいるって、半信半疑だったんです!何で、痴漢なんてするんですか?お付き合いが出来ないんですか・・・?まさか・・・ペニスがミニマムで早漏で・・・しかも××で、●●で・・・。可哀想・・・。強く生きて下さい!あ、俺のお尻で良いなら、どうぞ堂々と触って良いですよ!遠慮せずにどうぞ!」
「あのね、痴漢は犯罪なの!次の駅で駅員に突き出さないと!」
「え・・・。ああ、そうですね。申し訳ありません。でも・・・警察で証拠物件としてペニスのチン拓とか取られるんでしょうか・・・。可哀想です。強く生きてくださいね!あ、俺、梶原一郎です!生きているのがつらくなったら、お話し相手ぐらいにはなります!あ、写メール撮って良いですか?痴漢なんて、故郷の村の皆も見たがると思います。凄いです!最近やっと電車に乗っても目的地に着けるようになったんですけど、こんな経験は初めてです!」
 紫の瞳が、きらきら輝き・・・梶原一郎への痴漢行為で、駅員に突き出された痴漢だった。
 ちなみに駅のホームで写メールも撮られ、村の皆に送信された・・・。

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