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短編
八年目
 僕は14歳の時、初めて性交渉を見た。
 神子だと言われた青年は、空也と同じ色の髪と目をしていた。どこにでもいる貧弱な男は、転移羽を持っていた。いや、転移羽にとてもよく似た、傷。
 僕の兄王は、その子を見付けて有頂天になった。なにせ、巫女姫の件でトウリールの不興を買い、僕の様な厄介者を押し付けられ、父王自身は心労で倒れた。神子の確保は、トウリールへの牽制になる。
 トウリールの使者は、王の従兄弟。大人しげな美女は、にっこり微笑んだ。
 兄王は、神子とされる青年と情を交わしていた。何を考えているか分からない、愚かな行い。
 使者は、目の前で乳繰り合う兄王と青年を見ていた。無表情なその様に心かき乱された兄王は、僕や重臣、使者の前で、青年の後腔に自分の男性器を含ませ交わり始めた。
 僕があまりの無様さに目を反らすと、使者は艶然と嗤った。扇子の影で、僕にしか見えなかった嗤い。
 落ち人が・・・。 
 そう無言で形作られた、唇。僕を一瞥して、全て分かっているかのように使者は嗤っていた。

 ぐったり疲れた僕の目の前に空也が姿を現したのは、その夜のことだった。
「どうした?ルー」
 その時、僕は、空也の言葉に気が付いた。
「空也・・・言葉」
「ルー、羽とはなんだ?羽を手折る代わりに、祝福をと・・・ケイテイが夢で言っていた」
 僕は、真っ青になった。
「背中・・・」
「ん?」
「背中見せて!!」
 僕が叫ぶと、空也は服を脱いでくれた。
 背の転移羽に・・・その周囲に、痣が広がっていた・・・。
 僕はへたり込んだ。ケイテイは、僕に神子を与えるつもりなのだ。死して尚、空也の身体に干渉するケイテイのそれは、いっそ呪いと言っても良いほどだ。
 僕は土下座して、空也に隠していた事を話した。空也に嫌われることが怖くて、途中で吐いてしまった。だって、空也以外の誰が、僕を愛してくれるだろう?僕は、空也に他の皆と同じ目で見られるなら、

  シンデシマイタイ。    

 ポンと僕の頭を、空也の大きな手が叩いた。
「仕方ねえなあ。ルー、そんな顔すんな」
 空也の目は、そのままだった。
「おまえの環境は、最悪だ。そんな中で俺に懐いて、少しばかりの嘘を付いたからって、誰がルーを攻めるんだ?むしろ・・・謝るのは俺だ」
「空也・・・」
「そんなに懐いてもらっているのに、俺は、この世界に住みたいと思えねえ。あっちが俺の世界だ。悪いな。どうやったらいいか見当もつかないが、召喚には抗わせてもらう。つまり・・・もしかしたら、もう来ないかもしれねえ」
 空也にもう会えないかもしれない。
 僕の吐瀉物で汚れた唇を、空也が拭ってくれた。青ざめる僕を抱きしめて、でも、確固たる信念で空也は語る。
 僕は、空也の身体に抱きついて、泣いた。
 3日間、僕は空也の身体に纏わり付いて、でも、3日目に空也の身体は僕の腕の中から消えた。
 僕は、泣き叫んだ・・・。
 
 空也・・・空也・・・捨てないで・・・。

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