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短編
六年目
 僕は12歳の時、初めて、隣国トウリールを訪れた。
「ここまで大きくなったのだから、ね。しかし、王族以外の血が入ったせいで、姉上の息子なのに力がないとはね」
 伯父であるトウリール王は、空也に近い理想的な肢体の、美丈夫だ。僕の兄王より言葉遣いも丁寧で、けれど、瞳は冷たく冴えていた。
「神子が女だったら、子を産んでもらわねばならないし、男なら、子種を王族の女性に植え付けて貰う。そして、その子供達の1人と、婚姻して、また子を増やす。分かったね」
 空也は、男だから、子種を植え付ける。種馬という言葉が頭をよぎる。
「いつの間にか、神子の召喚儀式が行われていた。どこに神子はいるのか。召喚儀式を行ったのが誰なのかも、皆目見当が付かない。今の弱体化した神殿では、神子召喚の儀などできようもないと思っていた処に、この朗報だ。これで、トウリールは救われる」
 トウリールの神殿に居る者も、大神官クラスはほとんど王族だ。けれど、淀んだ血により、健康な者はいない。
 健康な成人は、トウリール王族では今7人。
 トウリール王族の血は、不思議な事に、王族以外と混ざれば、その能力が薄まる。魔法力やその他の才能を薄れさせず、淀みを解消するのは異世界の純粋な血筋のみ。血の薄まりを嫌う王族は、兄弟、親子以外は、王族間で婚姻を繰り返す。そして、血が淀む。結果、神子が必要になるのだ。
 僕は、王族以外の血が入ったから、魔法力はなく、この国では憐れまれるべき存在だ。
 でも、構わない。
 王族間でのみの交配で、生物としての能力を衰えさせるこんな奴らに、空也はやらない。
 僕が、トウリールから帰ってすぐに、空也が現れた。
 僕の背はまた伸びて、空也の顎に頭が付くほどになっていた。
 他愛もないやり取り。僕は隣国に行った事を、神子の事には触れずに空也に報告した。
『そんな胸糞悪い処に、良く頑張った』
 空也に褒めて貰って、僕は満足だった。
「でね、空也・・・相談があるんだ」
『あん?』
「自慰ってすると、気分悪くなるもんなの?」
『・・・ならねえよ』
 何とも言えない表情の空也に、申し訳ない気持ちになるけれど、こんな事他の人に相談できない。
「僕、気持ち悪くなっちゃうんだ。けど、夢精は嫌だし」
 汚れた下着は、軽く水洗いするけれど、汚れ物として出される下着がそうされていたら、丸分かりだろう。
『どうやってやっているんだ?おかずとか、扱き方とか』
 真面目な顔で、空也が心配そうに言う。
「おかず?食べ物?」
『あのなあ・・・。扱く時に、何かネタを考えながら、やるんだよ。好みの子の写真とか、写真はないか、この世界じゃ。絵とか。うん、侍女の好みの子の裸を思い浮かべてとか』
「僕の世話係、皆、高齢だよ。下に居る護衛の者なら中年男性ぐらいは居るけど」
『ああ・・・。じゃあ、トウリールで見た、綺麗な女とか』
「綺麗な・・・」
 僕にとって、綺麗な人間は・・・。
「試してみる」
『ああ、そうだ、カードしないか?強くなったか、みてやる』
 空也の世界にもカードゲームはあるそうで、1人の僕が何故と不思議がられながらも手に入れたそれで、遊ぶのだ。
 色々話して、遊んで、空也が消えた日の夜。
 僕は自慰をした。
 空也の顔を思い浮かべてのそれは、快感と罪悪感で僕を苦しめた。

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