[携帯モード] [URL送信]

短編
ある娼婦の告白
 あたしが、娼館に勤めていたのは、子供の為だった。連れ合いを亡くして、姉夫婦に子供を引き取ってもらっての出稼ぎ。子供は賢いから、きちんとした教育を受けさせてやりたくて、けど、馬鹿なあたしにできる仕事なんか、限られていた。
 娼婦になって、女にしてはごつい、というより、男にしても立派な体躯のあたしだけれど、奇特な客は結構いて、それなりの稼ぎを得ていた。
 そんなあたしに、王の第4夫人からの召喚状が届いて、びくびくしながら訪れた王宮で、お上品な夫人は大きく目を見開いて、ついで、頭を下げた。高貴なお方に頭を下げられて、マジビビったあたしに、夫人は教えてくれた。
 王には、愛する相手がいた。男性の騎士が・・・。騎士も王を愛していたが、お互いすれ違いで想いを告げられずにいた。
 2年前、王が暗殺されかけ、それを庇った騎士は重症を負った。毒矢に倒れたのだ。傷は治れど、厄介な毒は解毒されず、ゆっくりと騎士は死に向かった。
 ここで初めて、騎士は王に告白した。騎士に愛されていたと知った王は、歓喜し、けれど、騎士が死んでしまう恐怖に半狂乱になった。
『申し訳ありません。けれど王よ・・・。この国の民の為に、善政を・・・。そして、死を選ばないで下さい』
 騎士の願いに、王は泣き叫んだ。
 けれど、最愛の騎士の最後の願いに、王はこの国を守り生きる事を決意したという。
 夫人は、せめてもの王の慰めに、王の騎士によく似たあたしを後宮に呼んだそうだ。
 いや、騎士に似てるぐらいでかくてごついのかって、突っ込みはなしだよ。うん、あたしは・・・でかいしごついよ。
 まあ、ともかく、あたしは後宮勤めになって、王様はあたしの事を気に入ってくれたみたいだった。
 閨で、背中から着衣のままやられて、騎士の名前を呼ばれるのは、まあ、どうってことないよ。服脱いだら、小ぶりとはいえ、乳があるからねえ。
 王様は、すまないって言ってくれるけど、あたしはお金貰えて、子供が育てられるなら構わないよ。それに、騎士の名を呼ぶ王様の声は切なくて、今だに死んだ旦那に惚れているあたしでさえ、ぐっときちまうんだから。
 4年後、王様はニコニコしてあたしに言った。
『身体に悪いできものができた。余命は3カ月だそうだ』
 ニコニコして言う事じゃあないだろうって、突っ込みはなしだよ。王様は、騎士の為だけに生きていて、今だって騎士だけを愛しているんだからねえ。やっと、騎士の側に行けるんだもの。
 王様は、あたしにかなりのお礼金をくれた。もう仕事をしなくても、子供を育てて、老後まで暮らせるだけのお金だ。夫人も、こんなあたしに感謝の言葉をくれた。本当に、生粋の王族の癖に、腰の低い人だよ。
 で、あたしは今、喪に服している。
 王様のお金で故郷に家を買って、子供は寮のある学園だから、猫をいっぱい飼って、野良仕事しながら暮らしていた。王様の死の報を聞いて、ちょっと泣いちまったけれどね。
 次の王は、第2夫人の子供、宰相には、第3夫人の子供。あ、そう言えば、第2夫人と第3夫人が共謀しての王様暗殺未遂で、騎士は死んだんだよ。その後の調べで、2人の夫人は罰せられたけれど、子供に罪はないとされ王位の継承権もそのままだったんだって。これには、裏があって、騎士が王たる資質に富んだ2人の王子の事を庇ったからなんだって。自分を殺した女達の子供なのに、何ともできたお人だねえ。さすがあたしに似てるだけあるよ。
 さて、子供に、冬の服を仕立ててやらにゃあ。今年の冬も寒そうだからねえ。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!