武装天使 その理由4 幹人の結婚は、失敗だった。 18の時、出来婚した相手は33歳。 愛していなかったが遊びで寝て、妊娠を告げられた時は臨月になっていた。 出産後、結婚式をしたいと言いだし、了承はしたが驚いた。 場所がテーマパークのホテル。 金は、幹人の親がかり。 高校を出て大学に通う脛齧りの幹人に求められたそれに、親は当然拒否をした。しかし妻は認知症も進んで身体も良く壊すようになっていた祖母に話を持っていき、金を巻き上げた。可愛い孫の結婚式の為にと、にこにこ笑って告げる祖母に驚愕し、妻を問い詰めるももう金銭は払い込み済みで、契約者が妻である以上幹人にキャンセルはできなかった。 おまけに、日取りが問題だった。 12月24日。 幹人の両親は、ホテルの経営者だった。超一流ではないが、一流弱のホテルを都内近県に3つ持っていて、実直な経営で利益を上げていた。つまりはクリスマスイブなど満室で掻き入れ時で、ネコの手も借りたい状況だという事だ。 それを知った上での行い。おまけに、行けないといえばヒステリーを起こした。 テーマパークのホテルは人気で、かなり前からでないと予約できないというのも分かり、尋ねれば二年前に抑えたという。幹人とそうなる前に決めた、というより、結婚式の日を決めて年下の男を騙したとしか思えなかった。 幹人には、姉夫婦と兄がいた。姉夫婦は料理人で、ホテルの料理長とその部下という間柄だった。兄は独身だが別のホテルの支配人をしており、ゆくゆくは全ての系列ホテルの総支配人として両親の跡を継ぐ事になっていた。当然、双方ともイブに休むなどできない。 「嫁虐めよ!」 叫ぶ妻をなだめ、キャンセルさせようとするも勝手に上司に招待の打診をされており、引くに引けなくなった。幹人は夢があり、その為ホテル業には携わっておらず、クリスマスイブの挙式には出られる。他にも親戚や友人関係、恩師にまで連絡されていて、ずるずると式をする事に決まってしまっていた。兄と姉は無理だが、祖母と両親はかなり無理をして式に出てくれる事になった。 式当日・・・。 新婦側友人席に空席が目立った。ドタキャンされ不機嫌になる妻に怯えつつ始まった式。 妻の希望どうり・・・。 妻の望むように・・・。 なのに・・・幹人の親戚の子供がテーマパークのキャラクターが式場に入ってくるサービスで握手をしてもらってるのを見て、その子供に向かって妻はシャンパンを引っかけた。 「あんたみたいなガキの為に、呼んだんじゃない!私のよ!」 そのキャラクターのファンの妻は、叫びながらもう一度その子にテーブルの上のビールを浴びせかけた・・・。 [*前へ][次へ#] [戻る] |