白騎士?黒騎士?
黒騎士レシュ3
与えられた部屋を整え、もう用はないのかもしれないが身体を鍛錬する。むしろ業務がない分時間が余ってしまい、レシュは困惑する。幼少より、暇があれば孤児院の業務を手伝っていたレシュにとって、暇の潰し方などある訳もなかった。
女王は、そんなレシュの有り様を分かっていた。
「本当に良いのかね」
獣王宮に仕える文官の青年クロ―が、実はと声を掛けてきた。少し落ち着いたら、仕事を与えてやってほしい。武骨な男だからできれば身体を使う方が良いと、女王から正式に依頼が来ていたと告げられた。
「もちろんだ、身体が腐る」
暇を潰す術もなく、考えるのは憂鬱でしかない来るべき伽の事ばかり。ならば身体を使った方が良い。
「では、頼むよ」
文官とはいえ獣人のクロ―は、本当に人間の体力で使えるのかと疑問に思うが、背に腹は代えられない。
「仕事は、危険生物の飼育。洗ったり餌をやったりでも重労働だし、あまり周囲に貢献が見えない職種だけれど」
「構わない」
王宮に付随した研究塔で行われる、危険生物の生態調査や変異生物の調査に、人手がいる。武勲を立てたり一朝一夕で結果の出る研究でもないので、予算も少なく研究の傍ら、雑用もすべてこなすのは大変だったのだ。
「じゃあ、頼むね」
そう告げられ、レシュは頷いた。
数日が過ぎた。
レシュは最初こそ戸惑ったものの、仕事に慣れて行った。
アハマドは生物変異が起こりやすい条件が重なり、それらが持ち込まれる。飼育し生態を研究し、危険度が高いと同じようなものが獣人に危害を加えぬよう、早めに通達をする。その為にも一定期間の飼育が必要であり、地味ではあるが必要な仕事である。そして、生態が不明なのだから一切気が抜けないので、疲労する。
が、レシュにとってはむしろ有り難かった。
と、ことりと音がした。
「デイデイア様・・・」
レシュは音の主を察して、溜め息を付いた。
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