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白騎士?黒騎士?
黒騎士レシュ1
 黒騎士レシュ・イル・ハイドが、輿入れしたのは、獣人の国アハマドだった。

「レシュ・イル・ハイド」
 むっつりと名乗るレシュを王城で迎えたのは、獣王ザイルと四人の妻たちであった。
「仕方がねえ」
 レシュに勝るとも劣らぬ不快な様子のザイルに、漣の様な忍び笑いが応える。
「まあ、そう言われますな、王よ」
 虎の獣人で白髪、黒眼の第一夫人シルルが、妊娠している為大きくなった腹部を庇いながら立ち上がり、ザイルの腕を撫でる。
「本当だ。我らの代わりをよろしくな」
 茶髪茶目のライオンの獣人で第三夫人のペリエは言いながら、大きく笑う。彼女も妊娠しているが、初期の為に腹は目立たない。
「よろしくお願いいたします、レシュ殿」
 丁寧に頭を垂れる狼の獣人、灰色の髪に水色の瞳の第二夫人のメイアは、すでにザイルの子を生んでいる。
「ほほほ・・・」
 意味ありげに笑い扇で半ば顔を隠すのは、大蛇の獣人で、黒い肌黒髪金目の、第四夫人デイデイア。ザイルとの子は一番年がいっており、二つになった。

 アハマドは、獣人の国である。
 形成するのは、五種族。豹、狼、虎、蛇、ライオン。獣人は通常は人型を保つが、人間より身体能力に優れ、また、獣に変異する事もできる。
 獣人達は、戦ともなれば驚異的強さを誇るが、いかんせん繁殖力が低い。昔他国と戦争していた時、戦力には勝るものの暗殺部隊による市街地での毒物投与により子供が狙われ、種族としての危機に瀕した事もある。産めよ増やせよはできず、それ故好戦的性質なれどほぼ鎖国の様な状態で国を維持している。
 さて、この国を治めし獣王。
 今の王は豹族のザイルである。
 妻は他の四種族から一人ずつ選ばれる。
 獣人の場合、女側の種族特製のみ子は引き継ぐ。よって、その時の獣王以外の四種族が夫人を提供し、次代の王は現在の王と異なる種族になる。どの種族の子になるかは、そもそも繁殖力が弱い為、全員が子を成すこと自体が稀である。今回の事は、奇跡と言っても過言ではない。
 そして、それ故にレシュが求められたのである。

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あきゅろす。
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