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白騎士?黒騎士?
黒騎士レシュ7
 その日まで、レシュは頻繁に訪れるデイデイアとクロ―以外の獣人とは、ほとんど接点なく過ごしていた。
 が、仕事を終わらせ帰った部屋で、数人の獣人が待ち構えていた時、吐き気を堪えるのがやっとだった。
 獣王ザイルの発情期が来たのである。
 レシュは、何も覚えていたくないし、知りたくもなかった。そう望み、差し出された杯を飲み干す。程なくして、身体が痺れ、意識がなくなった。
 何も感じず、次に目覚めたのは、日も高くなってからだった。
 動けない。
 痛みに身体が竦み上がる。
 清潔な寝具の上、身仕舞までされてはいた。
 でも・・・レシュは声もなく泣いた。
 痛い・・・。
 何か所か残った獣の爪痕。尻穴に残るひどい痛みと違和感。腰が重く、動く事もできない。
 もう何も考えたくなかった・・・。

「有り得ない」
 シルルはザイルに向かって、断言した。
「何が、だ?」
「有り得ませんわよ、王よ。初夜でしょう。何故、今ここに王がおいでかとお聞きしてましてよ」
「・・・初夜・・・。何が言いたい?」
 シルルは幼馴染の気安さもあって、ザイルには話しやすい相手である。しかし、常は王であるザイルに敬意を払っているのに、今は虫けらでも見るような眼をしている。
「私は、子を成したのですもの。宿下がりしますわ。獣王の毒物耐性があるのが私だという事は、ほんとーに嫌でしたけれども、耐えましたわ!」
「おい・・・そんなに俺が嫌だったのか?」
「嫌に決まってますわよ。幼馴染、ですわよ。兄弟みたいに思っています。もう、交わる度に嫌で嫌で。私、身内と交わる背徳感に萌える特性を持っておりません!デイデイアもそうですわよ!」
 シルルはザイルを愛しているが、それは身内のモノで男女の営みには嫌悪しか抱けなかった。それは、デイデイアも同様で、肝心のザイルだとて内心は嫌嫌だったのでどっちもどっちだろう。
「で、何が言いたい」
「初夜ですわよ!男色でもないのに蹂躙した新妻を、朝の光のもと抱きしめて、愛を囁かないで、それでも獣王ですの!」
 シルルの叫びに、ザイルは呆けてしまった。


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あきゅろす。
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