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白騎士?黒騎士?
黒騎士レシュ6
 獣王は、アハマドに必要。それは、レシュも理解した。
 が・・・。
「これは、機密では?」
 デイデイアは、気難しい顔のレシュを見やって噴き出した。
「機密?何故?人の国には関係無きこと故、知らせなんだし、そちらとて知っても何をしようぞ?『狂い』が増えれば、人の国にも漏れい出て、困るのは人であろう?獣人が対するより人が対した方が、被害は大きいぞよ。王玉をどうこうするかえ?獣王相手にかえ?王玉に手出しすれば、我々は人の国へ増えた『狂い』を放つだけじゃ。今はの、獣化にしくじり『狂い』になった者の始末は己の国の役目と思っているがの。ほんに、人の国にはなってしまえばこれほど気楽な事もない。獣神だとて、国の諍いはともかく、王玉狙いで獣王を害した者に何をしようと咎めはすまい。神は・・・己が作りし物を壊されし事を厭う」
 デイデイアの瞳孔が、縦に延びる。
 レシュは己が心底竦み上がったのを感じた。
「ほほほ・・・すまぬすまぬ。脅かすつもりはないぞ。ただの、知っておる方が良いぞよ。これからそなたは様々な目に遭うであろう。知らぬは罪よ。しかも・・・ザイルは独りにしとうない」
「独り?」
 デイデイアはまた扇を開くと、口元を覆う。
「わらわはの。ザイルを愛おしく思うておる。思うのみよ。想ってはいない」
 レシュには、デイデイアの言いたい事が分からない。
「ザイルは時が良くない。何故、わらわの友のザイルが獣王の時なのじゃろう・・・。いや、ザイルがそうであるが故、わらわの子は助かるのじゃ。けれどの、誰が悪い訳でもないがの。『狂い』が・・・神でも抑え切れぬのじゃよ」
 デイデイアの言葉遊びの様な物言いに、レシュは首を傾げた。
「分からぬよの。分からぬでも構わぬ。けれど、500のうちわずかに2よ。それがザイルの・・・とはの、大概に運のない男よ。しかも・・・なんじゃあれは。朴念仁め。昔からあれはそうじゃった。鈍くて鈍くて・・・どうしようもない。このまま餓鬼のまま大きゅうなって、何も知らぬままわらわ達も居なくなって・・・馬鹿すぎでの。ほんに、ここまで馬鹿とは思わなんだ。けれど、馬鹿故に愛しいのじゃよ。与えてやりたい。それ故に・・・逃さん」
 意味の不明な言葉を吐きつつ凄むデイデイアに、レシュは竦み上がった。
 蛇に睨まれた蛙の心境が、良く分かったレシュであった。

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