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申し訳ない
番外編5 新入生の驚愕その1
「新入生の皆さん。このたびは入学おめでとうございます。私たち在校生一同は、皆さんの入学を心から歓迎しています」
「王道とちがーう」
 入学式の生徒会長の挨拶を聞きながら、となりで幼馴染がしみじみと泣いている。俺は、呆れて溜め息をついた。
「生徒会、みんな美形じゃん。あ、一人は平凡か。けど、王道だろ」
 幼馴染は腐男子だそうだ。この学園を選んだ理由が生BLを見るんだ、とかで、そんなことで大事な高校選ぶなよ、と思う。俺は、偏差値と全寮制ということで決めた。親が海外転勤することが決まっていたので、ここは都合が良かった。
「俺様発言とか、黄色い悲鳴がなーい。楽しみにしていたのにー」
「・・・。するなよ」
 俺は、幼馴染の頭を一発殴っておいた。
 
 そんな感じの俺と幼馴染が書記の常盤先輩に呼び出されたのは、入学式から一週間たった頃だった。常盤先輩は、生徒会の中で唯一平凡な容姿の人で、幼馴染は平凡総受けとか、たまに叫んでいた。
「呼び出してすまないね。ここには慣れた?」
 穏やかな話し方は、好感が持てる。
「はい、少し戸惑うこともありますが」
 親衛隊とか、ランキングで選ばれる生徒会とか、バイやゲイの多さとか。入学式でへこんでいた幼馴染が、復活して嬉々として、生BL鑑賞に勤しんでいたっけ。
「あの、書記様は、会長様の親衛隊副隊長だったんですよね!会長様と、仲がおよろしいって」
 鼻息荒く聞く、幼馴染。へーそうなんだ。
「様はいらないよ。親衛隊は生徒会の準補佐やってた関係で、ね。事務仕事得意だし、去年の書記の葛城様が自分の親衛隊の票を操作して、俺を書記にしたんだよ。出来レースね。会長の恭介とは、友人だけど。それより、外部生なのにくわしいね」
「友人ですか・・・」
 疑わしそうな幼馴染の足を踏む。何でもかんでも妄想のネタにするんじゃない。
「あ、で、今回呼び出したのは、忠告っていうのかな。耳に痛いかもしれないけど」
「忠告?」
「うん。まず、宗谷君。君ね、覗きは駄目だよ。風紀や教師にクレームがきてる。このままだと、何らかの処罰があるよ。それに、親衛隊も、制裁に乗り出すよ。入学したばかりだから、大目に見てたけど、そろそろまずい。親衛隊持ちの周囲嗅ぎまわるのやめなさい。色々知っているみたいだし、親衛隊とか制裁とかもわかるよね」
 俺は、幼馴染の宗谷を冷たい目で見た。
「俺、制裁されるんですか?」
 腐男子のこいつに聞いているから、俺も制裁とかの意味がわかってしまう。馬鹿なこいつは、自分が制裁の対象になるなどとは、思ってもみなかったようだ。
「うん。このままだとね。まあ、恭介の処の親衛隊がうずうずしてて、やり過ぎないようには止めるけど、俺、もう親衛隊じゃないし、ね」
 人が制裁されるのは見たいけれど、自分はいやなんて腐ったこと言っているから、目を付けられるんだ。全く、自業自得だ。
「あと、十文字君」
 常盤先輩は、俺をじっと見た。
「君の方はね、このままいくと親衛隊ができると思う」
「へ?」
 なんだって?
「顔は良いし、家柄はまあまあ。運動もできて、目立つ。すでに中等部からの持ち上がり組で、そんな動きがあるらしい。外部生だから、親衛隊の意味わかってないと気の毒かなーと」
「いえ、わかっています」
 十文字は俺の姓だ。
「でも、俺はノンケです」
「そう。まあ、会計の本間君も、前年度書記の葛城様もノンケだけど親衛隊あるから。むしろ、親衛隊を作らせて、しっかり管理すれば君に好意を持つ輩の統制が取りやすいよ」
 


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