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申し訳ない
生徒会長のメル友
「だーかーらー、俺はノンケですー!」
 常盤かのんは自分にキスしようとした男の口を押さえて、叫んだ。
「いや、礼をだな」
 かのんを空き教室に引きずり込んだ、中等部生徒会長にして、超絶美形の皇恭介は、苦笑いをした。
「礼?何の!真面目に勘弁してくださいよ。婚約者もいるんですよ、俺。会長なら、可愛い子がいっぱい寄ってくるでしょう。俺の同室者も可愛いし、私設ファンクラブの会長ですよ」
 かのんの同室者は、山田良太という。熱心な恭介のシンパで、高等部に行ったら親衛隊を発足させると息巻いている。さすがに、中等部では親衛隊まではできず、ファンクラブ程度しかない。
「その同室者のやつが吐いたんだ。書類を作っているのは、常盤かのんだと」
 話は二カ月前に遡る。生徒会書記と会計、両方が、入院したのである。忙しい時期だったこともあり、当然業務はパンク状態。恭介ファンたちは、少しでもいい印象を持たれたいと、率先して手伝いをかってでた。良太も、簡単な事務仕事を持ち帰って来たが、それをやっている姿を見て、かのんは呆れた。めちゃくちゃすぎて却って邪魔だろうという出来栄えに、かのんは手を貸した。ノンケのかのんは、別に恭介に好いてもらいたいわけでもないが、純粋に生徒会の忙しさに同情し、手伝ってあげたいと思ったのだ。
 書類の出来栄えには、満足してもらえたらしく、その後もちょくちょく仕事を頼まれることとなり、良太はご機嫌で学食を奢ってくれたりした。自分のやった仕事が良太の手柄になっていることにも、かのんは何の不満も持ってはいなかった。
「生徒会室では無能なのに、持ち帰り仕事だけはきっちりしたものだったら、気がつくだろう。下請けがいるのに」
「ごもっともですが、それで何で俺を押し倒すんでしょうか?」
 かのんの腕には、見事な鳥肌がたっていた。アップに耐える美貌だろうが、ノンケのかのんには今の状況はつらい。
「俺様のファンだから、手伝っているのかと思ってな。そうなら、キスして抱き締められたら嬉しいだろう」
 恭介は、かのんを解放して笑った。
「会長はかっこいいですけれど、手伝いは純粋にたいへんそうだったからです。持ち帰り仕事もして、毎日居残って。ああいうちまちました作業、嫌いじゃないですし」
 やっているのは、学校関連の仕事なのだから、同じ学園生として、手伝えるならと思ったのだ。
「おまえ、面白いな。それに使える」
「ありがとうございます」
 恭介は、ポケットから携帯を出した。
「とりあえず、メアドと携帯番号、な」
「何で!」
 恭介と親しくしたりなぞしたら、嫉妬に狂ったファンに、何をされるかわからない。
「もう少し込み入った業務頼むこともあるかもしれないから。それとも何か、クラスに行ってここはこうしてくれとか相談されたいか」
「どうぞ、お願いします」
 かのんは携帯を差しだした。
「お手伝いなしは」
 赤外線でデーターのやり取りをする恭介にかのんが尋ねると、鼻で笑われた。
「ねえよ。そのうち、別の形で礼はするから、きりきり働け。俺様と接触したくないみたいだから今までどうり、同室の奴を介して頼むけどな。携帯以外で連絡は取らないし、このことは秘密だ」
 ぽいっと返された携帯には恭とだけ登録されていた。
 常盤かのん、中学三年生。
 俺様な美形とメル友になりました。

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