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申し訳ない
まりもの気持ち
「かのん、ヅラずれたー!」 
 室内に突き飛ばされたまりもこと、編入生、昴はワタワタと慌てた。
「取れ!きもい!」
「かのん、目がいつもの3倍開いてる。怖い」
 昴は仁王立ちのかのんの目の前で、まりものような鬘と眼鏡を取った。
 肩に少しかかる程度の金髪と、緑色の瞳。国籍こそ日本だが、その実日本人の血は8分の1しか入っていない。ネコ科の動物を思わせる獰猛な美形が、かのんの目の前に現れた。制服をやや大きめにしているため分からないが、体も筋肉質で、今の姿なら抱かれたいランクの上位入賞は確実であろう。
 では、何故、こんな珍妙な変装をしているかというと。
「あー!恭介の写真じゃん!うわ、鎖骨、うまそう!やばい!」
 テーブル上の写真を手にとって、興奮する元まりもの股間の形が膨らんできているのを見た、かのんは、引きっつった。
「便所に行って来い、変態」
 昴は、それじゃあとばかりに変な姿勢でトイレの方へ向かう。もちろん生徒会長である恭介の写真は持っている。そのままトイレの中で聞こえる物音を聞きたくないかのんは、部屋にあるキッチンでお茶を入れた。
 10分後トイレから出てきた昴を、汚いものを見る目でかのんは見た。
「いやー、きりないわ。最近遊んでないからな。しかも、恭介、今日も抱きついてキスしてくるんだもんな。そのまま、押し倒して、アンアン言わせてー!」
 お茶を飲みつつ言う昴に、かのんは青くなった。恭介はバリタチで、ネコの経験はないはずである。アンアン言わされたいとは、露とも思っていないはずだ。自分が必死に口説いている昴が、実はバイのバリタチで、恭介に惚れて、彼を絶対抱くと決めてこの学園に編入してきたことを知っているのは、昴の姉でかのんの婚約者であるすももと、昴の一つ年上の幼馴染のかのんの二人だけである。
「おまえ、わかっていると思うけど、強姦は」
「わかってるって、かのんと姉ちゃんとの、無理心中コース」
 以前、恭介は覚えていないが、夜の街で倒れた恭介を強姦しかけた弟を死に物狂いで止めたすももは、その時宣言した。昴が本気で恭介に惚れているのも、ノンケの筈が男に惚れて苦しいのもわかる。だから、少しぐらい爛れた行為で気を紛らわそうとするのも、止めはしない。けれど、強姦だけは許せない。もしおまえがそれをするなら、自分と心中することになるだろう、と。すももは、それをできる女で、かのんはそうなった後、自分も後を追うと昴に言った。なにせ、接点のなかった二人が出会ったのはかのんが、原因だったから。



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