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申し訳ない
番外編1 平凡書記の誕生その1
 高校2年生の7月。発表になった抱かれたい抱きたいランキングを見た常盤かのんは、呆然とした。
 抱きたいランキング1位 常盤かのん
 そんなかのんの後ろで爆笑するのは、山田良太。
「いやー、まさか1位になるとはねー」
「たくらんだな、良太・・・」
「僕だあけじゃないもうん。主犯は葛城様だもん。言いだしっぺは、僕だけどーーー」
 この時かのんは、殺人に走る人間の心理を理解した。

「補佐なんてえ、面倒なことしないでえ、役員にしちゃえばあ」
 恭介が来季も生徒会長になった暁には、かのんを補佐にすると書類を届けに来た良太に言うと、そう返答された。
 ランキングは年二回開催され、前期のランキングで生徒会の面子が決まる。後期はただのお祭りで、何の影響もない。投票は、一人一票で、その為票にばらつきが出る。去年は抱かれたいの方に票が集まり、抱きたいの1位より5位の抱かれたいの方が、票数は多かった。ただ、1位2位は票数に関わらず、生徒会入り、3位以下は総票数で決まる。両方のランキングに入っていると合計で争われる為、下の方の者が生徒会入りすることもありえた。ただし、風紀やそれぞれの委員会の長、部活の部長、特待生には拒否権がある。また、3年生には投票権はあるが、投票される権利はない。
 去年は抱かれたいランキング1位の恭介、2位の連、抱きたいは2人とも風紀。総合は、1位恭介、2位連、3位南、4位特待生、5位バスケ部部長、6位が抱きたいの1位、7位8位が木村兄弟だった。
「このままあいくとう―、抱きたいの2位か3位にい、僕入りそうなんでえ――」
 今年も抱かれたいの方に票は流れるだろうし、総合では上位には来ない。しかし、2位になられた日には、良太が生徒会入り・・・。皆できれば避けたいところである。
「出来レースをしろということか・・・」
 連が呟いた。
「はいいー。葛城様のう、親衛隊の票が来ればあ、僕より票が上はあ、確実?もう一人はあ、演劇部のかわいこちゃんですけどう、あの子は、部長ですしい、拒否権ありますう」
「おまえ・・・・、そんだけ頭が回って、何で勉強や仕事ができないんだ」
 呆れたように言う、恭介。
「ひどいですうーー」
 くねくねする良太を無視して、考え込む連。木村兄弟は事件後、途中休学そのまま転校して行ってしまった。任期も残り少ないとのことで、そのまま過ごしたが、しんどかった。もう自分は引退だが、できるなら来期の面子は、きちんと勤めあげてほしい。
「良い案だ。恭介、任せろ・・・」
 決心した連は、自分の親衛隊長に電話した。

「で、こうなったわけですか・・・」
 珍しく書類を自分で持って来たかのんは、悪びれもせずに説明する恭介に溜め息をついた。
「俺様じゃないしな。連の置き土産だ」
 皆の前では書記と呼んでいるが、生徒会室では呼び捨てである。かのんは将来二人が義兄弟になる事を知っているので、不思議にも思わないが、その実片親繋がりの兄弟であることまでは知らない。そのうち打ち明けるかもしれないが、今はまだ秘密だった。
「まさか、2位とあそこまで差が付くとはね。いや、親衛隊の子に、サービスしなきゃな」
 ここまで饒舌な連も珍しいが、かのんは嬉しくもなんともない。何で、平凡そのものの自分が、抱きたいランキング1位、総合4位に入らなきゃならないのか。
「そりゃあ、葛城様が入れろと言えば、真面目に入れてくれるでしょうよ」
「そういうがな、かのん。4位の良太と3位の差は4票だぞ。連の隊の者に知り合いの多い良太だ。放っておけば2位だったろう。おまえが票を取ったから、良太が生徒会入りにならなかったんだ。おまえは、良太に生徒会業務が務まると思うのか?」
 弱いところを突っ込む恭介。かのんとて、自分が恭介の立場だったとしたら、企んだろう。




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あきゅろす。
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