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申し訳ない
誘惑の家庭教師
 玄関を開けると、とんでもない男前がいた。
「本当に来たんですか?」
 きゃいきゃいはしゃぐ母親を横目に、かのんは私服のせいで今まで以上にエロかっこいい皇恭介を家に招き入れた。恭介は、サングラスを外すと、にこやかに会釈した。
「お言葉だな。休日返上で、家庭教師をやりに来たのに」
 かのんは一週間入院した。その間に授業は進み、担任は責任を感じたようで面会ぎりぎりではあったが、隔日で教科ごとのプリントやクラスの委員長のノートのコピーを持って来てくれた。かのんは自分なりに頑張ったし、学園に戻ったら放課後質問に来なさいという担任の言葉ももらった。でも、名門高校の授業レベルは高い。努力で成績を保っているかのんにとって、授業に出れなかったのは死活問題である。そんなことを恭介についついメールで答えたら、押し掛け家庭教師が退院した次の日にやって来た。
「安心しろ。ここまではタクシーで来た。俺様がここに来たことは、ばれっこない」
 それなりに気は使ってくれたらしい。ここに来たのも屋上にかのんを行かせた責任を感じているかららしい。
 かのんは恭介を自室に案内した。早速、教科書内でわからなかった所を質問する。恭介は1年生の首席である。もちろん毎回ということはないが、3位以下に落ちたことはない。教え方も上手く勉強はスイスイ進んだ。
「時に、かのん」
「何でしょう?」
「今年のランキングの抱かれたい部門のトップはおそらく、俺様だろう」
 受験がある為、生徒会の引退は9月1日付となる。ランキングの集計は7月に行われ、1学期の終業式に次期生徒会の面子が発表される。ちなみに、3年生はランキングから外される。
「ということは、生徒会長か副会長ですか?1年で」
「生徒会長だろうな。なぜなら、下馬評での抱きたいの1位2位は、2年生だが風紀の幹部だ」
 ランキングに入っても、風紀にいれば生徒会には入れないことになっている。
「どうも、新制生徒会は現在書記の葛城連以外1年生が占めることになりそうだ。俺様、北条、木村兄弟だろう」
「あー、納得しました。とりあえず、大変そうですね」
 ということは、連動して親衛隊の人数も増えるのだろうと、かのんはげんなりした。
「葛城連は、そのまま書記をやってもらうことになるだろう。副会長のタイプではないし、慣れた業務をこなして他のフォローもしてもらわなければいけない。なにせ、補佐にできる者が、たぶんいない」
 生徒会の役員だけでは、仕事が回らない。よって補佐を着けるのが常だが、これも選出が難しい。憧れの役員と共にいられることで、下手な者が着くと嫌がらせを受けるのだ。
「だから、準補佐を、何人か用意しようと思う」
 かのんは、慄いた。
 準補佐は、能力があり、けれど嫌がらせを受けるような地味めの生徒を生徒会の戦力とする為の制度である。生徒会室ではなく、自分のペースで処理した仕事を持っていくのは、他の生徒で良く、恒例として親衛隊に所属しそこの別隊員が交代で生徒会室に赴くことになる。中等部でかのんがやっていたことと同じだが、公式のものだけに、ご褒美もある。生徒会の役員が持つ特権と同じものを、3項目まで選んで享受できるのだ。また、準補佐はその親衛隊が責任を持って保護することとなっていって、傷つける者は問答無用の制裁対象になるのだ。
「俺様が、生徒会長になった暁には、準補佐指名するからな」
「・・・・」
「やってくれるな」
「・・・」
「おまえが良いんだ。手伝ってくれ、頼む」
 恭介は頭を下げた。天上天下唯我独尊の、俺様何様皇様の恭介が、平凡の平生徒に頭を下げているのだ。
「わかりました。でも、やっていけそうもなかったら、辞めさせて下さいね」
 まだ未定の未来ではあるが、まず間違えはないだろうと、かのんは覚悟した。
 いくら恭介とはいえ、1年で会長はしんどかろうし、真摯に乞われて突き放せないのが、かのんである。暇な生活は、高等部でも得られそうもないようだ。
 

 
 
 



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