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宝箱(小説)
炬なつき様より





「馬鹿な発言にはイライラさせられる」
「サイテー!」
「変わってしまいましたのね」
「失望させないでくれ」
「少しはいいところもあると思ってたのに…見損なったわ」



馬鹿らしい、と思った。
勝手に期待したあげく、勝手に見直されて、最後には捨てられた。
ルークの傍にはもう、ミュウしかいない。



「…くっだらねぇ…」



もうウンザリだ。
何もかも、どうでもいい。


夕焼け色の、長い髪をかきあげたルークは億劫な溜息をついた。
唯一自分の傍に残ったミュウを抱き上げて、肩に乗せる。
ベンチから立ち上がったルークに、ミュウは小首を傾げた。



「みゅ? ご主人様、どこへ行くですの?」
「師匠のところー」
「みゅ、…ぼくあの人嫌いですの。ご主人様を捨てたですの」
「俺も嫌いだけどさ、…あいつらより、マシじゃねぇ?」




ルークの言葉が”誰”を指しているのか理解したミュウは、ムゥッと眉根を寄せた。



「ぼくには大してどっちも変わらないですの」



ミュウもなかなか言うものだ。
ニィっと笑ったルークは「ちがいねぇな」と答えて、タルタロスがユリアシティに着くのと同時にその姿を消した。






***






アクゼリュスが魔界の海に崩落した後、ルークは一切の消息を絶った。
それをアニスを始めとした女性陣は逃げたのだと口汚く罵倒し、ジェイドはレプリカだから乖離した可能性も捨てきれないと推測し、ガイはルークの傍を何故離れてしまったのかと打ちひしがれていた。
そんな一行の目の前にルークが再び現れたのは、マルクトへ向かう手前のテオルの森でのことだった。


背を丸め急に苦しみ始めたガイを、ナタリアとティアが慌てて駆け寄った。
ガイの額には玉のような汗がいくつも浮かび、辛そうに顔を歪めている。その苦しみようと言ったら尋常ではなかった。
二人が回復譜術をかけるが、一向に効果は見えない。
苦痛に呻くガイを心配して、ナタリア達も心配そうに顔を歪めた。



「大佐がいないこんなときに…いったいガイに何が起こったって言うの…?」
「もしかして何か病気にかかってしまわれたのかも知れませんわね。一刻も早く医者に診せませんと…」
「大佐待ってる間、動けないのが辛いよね〜」
「仕方ありませんよ。僕たちは死んだことにされてるんですから…」



イオンの苦笑交じりの言葉に、アニスは頬を膨らませ「そうですけどぉ」と不満げな声をあげた。
魔界に落ちて、タルタロスで外殻大地に戻ってきたとき、どうやら”親善大使一行”は全員死亡したことになったらしい。
一行がそのことを知ったのはジェイドの故郷、ケテルブルクでのことだった。
市長であり死霊使いの妹、ネフリーが教えてくれなければ、一行は気づかぬままヴァンの動向を調べるため奔走していただろう。
アニスは荷物の中を漁り、アップルグミを出す。
回復譜術が効かなくても、これなら体の中から効果を齎してくれるのではと期待して。
イオンがガイを見つめ何かを考え込むように顔を俯かせる。
アニスがガイの口元にグミを運んだそのとき、気さくな声が聞こえた。



「よ! 残念ながら元気みてぇだな、つまんねー。あ、ガイは現在進行形で苦しんでるか」



揶揄じみた笑い声に、一行は声の主を探す。
苦しんでいたガイですら弾かれたように顔をあげて、声の主を探した。
そうして見つけたのは大きな木の上、太い枝
に腰をおろしたルークと、その隣に佇むシンクの姿だった。



「ルー、ク!」



ガイが嬉しそうな声で名を呼ぶ。
しかし、ガイ以外の一行の顔は厳しく、特にアニスなどは般若のような険しい表情だった。



「…レプリカルーク、あんたのせいでバレたじゃないか」
「遅かれ早かれバレるだろ。ラルゴがあんなんじゃ」



ルークが楽しそうにニヤリと笑みを見せる。
何のことだとガイを除く一行が顔を顰めた次の瞬間、ナタリアが何かに気づいたようにその場から飛び退いた。
ガリっと、ナタリアが飛び退いた地面が抉れる。
ナタリアが慌てて弓をつかみ、弓の矢じりを敵に向ける。そこにはラルゴがいた。


武器を向け合う二人を見下ろしながら、愉快で堪らないとでも言うかのように、爆弾を落とした。



「親子対決ってか?」



シンクが呆れてルークを見下ろす。
この状況絶対に楽しんでいるだろ、とでも言うように。
ラルゴから顔を逸らさずナタリアは警戒した声で「なにを仰ってますの」と問う。



(自分で考えろよって言いてぇけどー…ナタリアには素直に教えた方がダメージ食らいそうだな)



瞬時に判断したルークは、軽快な口調で応えた。



「そのまんま。親子対決だろ? なんせナタリアは本当のお姫様なんかじゃなくて、ラルゴの実の娘なんだからさ」
「っ…!!」



ルークの言葉に衝撃を受け、一行が固まった。
ナタリアは頭を振り、嘘だと震えた唇で叫んだ。



「嘘ですわ! わたくしはインゴベルト陛下の実の娘ですわ! 黒獅子のラルゴの実の娘などと…わたくしを侮辱するつもりですの!?」
「やっべぇ! ラルゴ! お前の実の娘だと侮辱なんだってさ! 実の娘に否定されちまったな、あははは!」
「わ、わたくしはラルゴの娘ではありませんわ!! 誉れ高き蒼き血をひく、キムラスカ王女ですわよ!」
「ぶ…っははははははは! やっべぇ笑いが止まらねぇ!!!」




腹を押さえ、笑い苦しむルークにナタリアの顔が醜く歪められてゆく。
憤怒と屈辱で入り混じった表情は、王女が浮かべる表情として相応しくなかった。
笑い転げるルークにいい加減苛立ちつつあったシンクが足を振り上げる。



「笑いが止まらないなら僕が止めてあげようか」
「止まった止まった。だから俺を蹴り飛ばすなよ」



ピタリと笑いを止めるルークにシンクは舌打ちを一つ落とす。
笑い止まらなければ、ルークは木から蹴り落とされていただろう。
おっかねーなー、と肩を竦めたルークは動揺してどうしたらいいのか分からず惑う一行に笑顔で言った。



「ま、ナタリアの偽姫問題なんかどうでもいいからさ。とりあえず、お前ら消えてくんねぇ?」




――俺たちの邪魔だからさ。




その一言で、アニス達はルークを敵だと判断し武器を手に取った。
木の上からひらりと身軽に降り立つルークは、アッシュが身に纏う服と酷似した様相をしていた。
唯一違うのは、その、色。
アッシュが高貴な黒を基調とした服であれば、ルークは汚れやすい白を基調にした服だった。
外を歩けば、敵と戦えば、すぐに土埃や、血で汚れてしまいそうな白。
だけど、その服はルークの夕焼け色の長髪によく映えていた。



「何よその格好! 六神将気取り!? バッカじゃ、」
「だって俺、六神将だもーん。アッシュの代わりに先日 六神将になりました。これからは暁光のルークとでも呼んでくれよ。だっせー二つ名だけど」
「うわ、すごいムカつく言い方。二つ名がダサいことは認めるけど」
「ヴァンせんせーのネーミングセンスって崩壊してるよな」
「それは同意だね」


アニス達を馬鹿にしているとしか思えない会話をルークとシンクは交わす。
力いっぱい睨みつけても、二人は涼しい顔で受け流してしまう。
ふつふつと湧き上がる苛立ちのまま、アニスは怒りをぶつけた。


「なに仲良く話してんのよ! アンタあたしたち裏切ったってことじゃん! アクゼリュス崩壊させて、今度は世界滅亡でも企む気!?」
「えー? 俺 世界なんてどうでもいいし。俺は俺が楽しければそれでいいんだよ。世界滅亡なんてそんな夢見がちなこと企むわけねーだろ。どこのガキだよ。んなことはせんせーに任せて、俺は甘い汁だけ吸う」
「ねぇ。ヴァンはともかく、世界滅亡を企んでいる僕も、アンタの中で夢見がちなガキに入るわけ?」
「え? 気づいてなかったのか?」


マジで?
と目を瞬くルークにシンクは硬直した。


今まで夢見がちなガキとしてシンクはルークに見られていたらしい。
そんな屈辱的なことに今まで気づかなかった自分が憎い。



「……世界滅亡から、人類滅亡にシフトチェンジしたら、夢見がちなガキの分類から外される?」
「人類なんて滅んじまえーって思うくらいならな。行動に移したらマジで頭が可哀想な奴だから」
「……なんか、僕 世界なんてどうでもよくなってきた。僕も好き勝手に生きようかな…」
「それがいいって。諸行無常、生あるものはいずれ死ぬって思えば世界も人類も滅亡させる意味なんてねーし」
「ああ…それもそうだね。あんた、良いこと言ったよ」



どうやらルークはシンクの価値観を変えることに成功したようだ。
意図してやったわけではないのだが、シンクも色んな意味でネジが吹っ飛んだ…もとい吹っ切れたようなので良いことにしておこう。
遊んでいるとしか思えぬ二人の会話に、アニス達は怒りで肩を震わせた。



「なんなのよ…! なに二人で漫才してんの!? バカ!? いい加減にしなさいよ!!」
「っアニスの言うとおりですわ、レプリカルークに烈風のシンク、それに黒獅子のラルゴ!! わたくしたちの目の前に立ちはだかると仰るなら容赦は致しませんわ!!」
「兄さんと同じことを考えているなら、私たちは貴方達を倒すわ」



女性陣の力強い言葉に、ルークは肩を竦めてみせる。おちょくっているとしか思えない。

口元に緩く笑みを刻んだルークは、剣に手を添えた。
それを見て、一行は警戒を強める。



「お前らの言葉ってさ、俺たちを止められなきゃただの誇大妄想だよな」



馬鹿とか、容赦しないとか、倒すとか。
――上から目線で、ご立派なことを言ってくれちゃってるわけだけど。



後衛でしか動けない神託の盾騎士団の軍人と、上司一人まともに守れない導師守護役。
それにしゃしゃり出てきた王女様に、護衛剣土のくせに仕えている主人一人守れない使用人。
そいつらを守りながら、今まで前衛で敵を討ち取りながら後衛を守ってきた自分に。



――敵うとでも、思っているのだろうか?



「遊んでやるよ」



精々後悔すりゃいい。
ルークから向けられた嘲笑に、一行はいきり立つ。
ルークなんかに絶対負けたりしない――高をくくっていた一行を敵になったルークは容赦なく叩きのめした。












「どうして…っ!」



土の味を舐めさせられたティアは、起き上がれないほどに打ちのめされた事実に悔しさを感じて歯軋りした。
仲間たちが自分と同じように地面に転がっている。
自分たちをこんな目に合わせた”敵”を、渾身の力で睨みつけた。


まるで軽い運動をこなした、とでも言うかの如くルークは少し息を弾ませただけで、それほど疲れた様子はない。
シンクとラルゴすら参戦することなく、一行を倒したルークの実力にティアは恐怖を感じてしまった。


ルークはこんなに強かっただろうか。
それとも六神将になってから、こんなに強くなったのだろうか。
不調を訴えるガイを抜きにしても、ルークの強さは尋常ではない。
ルークは、自分たちが次にどういう行動に移すのか理解していて、戦闘中いくつも先手を打った。


素早さはガイに劣る。
力では被験者のアッシュに劣る。
だが、それを抜きにしてもルークの剣土としての実力は今や馬鹿にできないほどのものだった。


もはや、ティア達が動けないのは一目瞭然だ。
剣を鞘に戻すルークに、ティアは言いようのない屈辱を感じた。


敵を前にして、相手に武器を収められる。
――これほど馬鹿にされた話は無い!


悔しくて悔しくて、軍人としての矜持がボロボロにされる。
薄い唇を噛んで、睨みつけるティアに気づいたルークは実に滑稽だと嗤った。



「そういやお前、言ってたっけ。”調子にのらないで”って」



ティア達、後衛を守りながら前衛で戦うルークは常にTPを消費させて特技から奥義へと連携を繋げた。
敵を撃破させて、なお且つ、後衛に敵が向かわないようにTPを消費したルークの戦いを”仲間たち”は笑った。


TPを無駄に消費させているように見えたルークを。
ルークはまだまだ剣土として未熟だと、嘲笑って。
前衛に出てこないティアは、前衛で切り傷をつくって戦うルークを叱った。
調子にのならないで。――自分たちのせいで、打撃を稼ぐルークの気持ちに一向に気づかずに。



「調子にのってんのは、お前らだろ」



ルークが前衛で戦っていたその価値を、まともに評価せず、後衛で威張り散らしていた軍人たち。
彼らを守るため、仲間から「詠唱中は守って!」と言われないようになるため、彼らの戦闘中の癖を、敵と戦いながら観察し続けたルークの真価を一行は思い知る羽目になった。
奇しくも、敵として立ちはだかるルークによって。


言い返す言葉さえ出てこなくなった一行に、ルークはアッサリと背を向けた。
シンクが不満げな表情でルークに視線を送ってくる。



「そいつら、殺さないわけ?」
「ん? 殺す価値もねぇだろ。俺の目の前に現れるたびに、叩きのめしてやりゃいいだけの話だし」
「大した自信だね。足元掬われなければ良いけど」
「こいつらがこいつらである限り、俺の足元が掬われることなんてねぇよ」



ルークを過小評価し続けるのであれば。
一行の中でルークは、価値が低く、自分より劣るものだという目で見られている。
その意識を改革するのは、馬鹿にしていたルークを自分たちより勝れたものだとして認めなければならないと言うことだ。
一行にそれが出来るかと言えば――到底無理だろう。
初対面の時から、ルークを馬鹿にしていたのだから。



ルークの言葉の意味が理解できない一行は、ルークに馬鹿にされた事実に憤怒の表情を見せる。
それを意に介すことはなく、マルクト兵の足音を聞きつけたルークたちはサッサとその場を後にした。
ジェイドが戻ってくるまで一行は地面に倒れたまま、敵の背中を見送ることしかできず、奥歯が欠けそうなほど歯を噛み締めた。



「ただいまー俺、お帰り俺!」
「あんた馬鹿?」
「馬鹿じゃない。ただ酔狂なだけだってーの」
「酔狂っていうより風変りだろ」



軽快な口調でぽんぽんと会話を交わすシンクとルークに、イスに座っていたヴァンは視線を向けた。
ドアを開けて室内に入ってきた二人の後ろから、ゆっくりとラルゴが姿を現す。
どことなく疲れた様子でラルゴは肩を落としていた。
体格がいいラルゴが肩を落としている姿はまるで、ザレッホ火山に生息するラーヴァゴレムを連想させた。



「…戻ってきたか。奴らはどうだった」
「イスに座って踏ん反りがえってんじゃねーぞ年齢詐称髭」
「……」
「……くっ…」



シンクが口を慌てて手で押えた。
笑いを堪えようとしているようだが、大して意味はなく口から笑い声が漏れてしまっている。
ヴァンはシンクを一瞥し、けろりとした面持ちで毒を吐いたルークに鋭い目で射ぬいた。



「…レプリカルーク?」
「すいません、俺の口が素直で。あいつらは相変わらず弱っちかったです。特にティアなんて譜歌謳っている最中動けないんですぐに地面と仲良く出来ました。軍人なのに開始二秒で地面と仲良く出来るなんてさすがせんせーの妹ですよね!」
「ルーク!!」
「はい。そんなに怒鳴らなくても聞こえてます」
「貴様は私をおちょくっているのか?」
「まさか…」



生ぬるい笑みを浮かべるルークに、ヴァンの額に青筋が浮かぶ。
ぴりぴりとした緊張感に、思わず背筋を正したのはラルゴ一人。
ルークもシンクも平然としていた。
ヴァンの藍色の瞳に不穏な色が浮かぶ。
重苦しい口調で、残酷な言葉を紡いだ。



「……役に立たぬのであれば、もう一度、貴様を捨てても良いのだぞ」




アクゼリュスでお前を捨てたように。




「もう一度捨てられたくないだろう? ルーク」



ルークを捨てる前のように。
優しい師匠だった頃の仮面をかぶり、微笑む。
シンクが嫌悪の表情を浮かべ、ラルゴが険しい面持ちに変わる。
ルークは――平然としていた。
気だるげな表情で、ヴァンを見やった彼は、頭を掻いて、わずかな沈黙の後、口を開いた。



「せんせー、勘違いしてねぇ?」




緊張感に欠けた口調が、空恐ろしいまでに静寂に包まれた室内に落ちる。




「せんせーが俺を利用しているように、俺もせんせーを利用してる。共犯であっても、俺はせんせーの部下じゃねぇよ」




イスに座ったヴァンの胸倉をつかみ、顔を覗き込む。
鼻先がくっついてしまいそうなほど、間近にあるルークの表情は気だるげなまま。
しかし、翡翠色の瞳は抜き身の刀のように――鋭い。




「そこんとこ、その脳みそにしっかり刻んでおけよ」




死んだ魚のように、ルークの瞳には光が見えなかった。
死の淵を覗き込んだ人間のごとく、悟りきった瞳がそこにあった。
背筋を冷や汗が這う。呑まれてしまいそうな、恐怖を感じた。
自身が利用して、一度は思い通りに捨てたレプリカに、身も凍るような恐怖を感じたことなど認めたくない。
ヴァンはルークの手を振り払い、余裕を演じて見せた。



「ふん…では、精々役に立ってもらおうではないか」



上擦った声は緊張の表れだった。
ヴァンとは違い、演じることもない余裕の態度でルークは頷く。



「せんせーも俺の役に立ってくれよ? 暇つぶしくらいには役に立ってくれねーと、こっちにいる意味はねーしさ」
「……貴様は、どうしてこちら側についている。預言を憎んでいるからか? それとも世界を憎んでいるからか?」
「そんな大層な理由はねぇよ。敢えて言うなら何となく、こっちについたほうが面白いと思って」



惑星を滅亡させて、レプリカにすり替えるなんて大層な理由で動いているヴァン達とは違う。
ヴァンの計画が叶おうと、最終的には潰えようと自分にはどちらでも構わない。


ただの暇つぶしなのだから。



ルークの答えに納得がいかず、ヴァンは顔を顰めた。



「貴様…」
「おっと、レプリカ計画のご高説はもう勘弁して下さいよ。飽き飽きですから」
「………」
「それじゃ、俺は部屋に居ますんで。なんか用ができたら言ってください」



馬鹿にしたような一礼を見せて、ルークが部屋を出てゆく。
その背を見送るヴァンの表情は、警戒と不信、そして一抹の恐怖が浮かんでいた。



カツコツと小さな靴音が、廊下に落ちる。
居心地が悪くなるような静けさの中、ルークは楽しそうに歩いていた。



(さて、これからどうすっかな)



今はまだヴァンと行動を共にしても問題ないだろう。
しかしいずれ、ヴァンはどこかで計画倒れするはずだ。
レプリカ計画はあまりにも無謀で壮大すぎる。
転覆すると解り切っている船に乗りかかるほど、愚かではない。
それではこれからどうするか。



(アッシュでも掌で転がしてみっか)



レプリカである自分を憎んではいるようだが、あれは単純だ。
上手くルークが動けば、容易に手懐けられるだろう。



「超振動で、パッセージリング全部崩壊させちまおうかな」




そうしたら世界は、魔界の海に沈む。
それも、良いかも知れない。
ぼそりと呟いた言葉は、意外と良案のような気がして、ルークは楽しそうな笑みを深めた。










END
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炬なつきさんに六神将ルクをリクエストさせて頂きました!
PMにちゃんと見て貰えないルークが可愛そうでした…
しかしシンクの価値観変えちゃうなんてさすがルークwww(ぇ)

素敵な小説をありがとうございました!



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