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宝箱(小説)
紅ルウナ様より 相互記念


エルドラント、最深部。
其所でルークはかつての師と対峙していた。
誘いの言葉を拒絶し。
ルークはそっと憐憫と嗤笑を浮かべた。








白い建造物に反射し煌く陽光。
その煌めきの中に、鮮やかな赤が混じった。
一目で致命傷と分かる流血をしながらも、ヴァンは一瞬で自分を刺した人物を凝視する。
驚き声も出ないのか一歩下がった。


「師匠…どうですか?今まで散々馬鹿にしていたレプリカに殺されるのは?」

「っ…ぐぁっ!!」


返り血を浴びる青年___ルークは、刺したままの剣を半回転させると一気に引き抜く。
それと同時にヴァンは大量に吐血した。


「ぅ…ぐ、レプリカ、ふぜ…いが」

「そのレプリカ風情に負けかけてるのは、師匠ですよ?」


くすくすと笑いながら、腕に付着した血を舐める。
今さっきまで弱々しくヴァンと対峙していたのが信じられない程、ルークは酷薄な声色で言葉を紡いだ。
その声には何の躊躇も戸惑いも無い。

立っていられないのかヴァンは口を抑え膝を着く。
ルークはそんなヴァンを見下すと、不釣り合いなぐらい穏やかな笑みを浮かた。
それはいつもの、優しげで何処か儚げな笑み。
一瞬でニヤリと歪んだ嗤みに変え、血濡れの剣を握り直す。


「あまり馬鹿にしてると、たかがレプリカ風情に殺られますよ?例えば…」


光を反射する剣を構え、すっと目を細める。
ヴァンは避けようにも避けられず、唯それを見上げ悔しそうに呻く。
そうしてその時は訪れた。


「俺とか」


短い言葉と共に剣が振りおろされる。
ザシュッ、と鋭い剣音が響いた。
血飛沫が舞い、既に夥しい量の血の海に更なる流血が混じる。
その血溜まりにヴァンの体がゆっくりと沈み込んだ。
もう絶命してる様だ。


「フン」


床に這い蹲り短く呻き声を上げるヴァンに興味も失せたのか、鼻を鳴らして踵を返す。
かつかつとルークの靴音だけが静まり返ったそこに響く。

他の者達の横を通り過ぎようとした時、やっと我に戻ったのかジェイドがその腕を掴んだ。
振り返ったルークの顔には先程までの嗤みさえ見つからず、ただ静謐なまでの無表情。
その瞳には今まで宿っていた、純粋に煌く光は何処にも見えない。
その代り、憎悪や諦めといったものが色濃く宿っていた。
ジェイドはそんな子供の初めて見る姿に、僅かながら動揺する(初めて?いや、あの時から既に___)

考えに浸ろうとした瞬間、掴んでいた腕が思いっ切り引っ張られ断念せざるおえなかった。


「離せ」

「嫌です、あなたにはローレライ解放という仕事が残っているのですよ」


ジェイドの言葉に、ルークは眉間に皺を寄せた。
無気力だった瞳が、ぎらりとジェイドを睨みつける。
一瞬緩んだ手を振り払うと、距離を取る様に下がったがジェイドは追いかけてはこない。
ルークが、自分達を敵と見てることに気が付いた様だ。
ルークがゆっくりと剣を抜いた。

そして、はっきりと憎悪を込めて言いきった。


「俺には関係ない」

「っルーク!?」


やっと他の仲間達も金縛りの解けた様に一歩前に出た。
その中でも今声を上げた少女___ティアが、兄を気にしながらも更に一歩歩み寄る。
切なそうに眉を寄せるティアとは正反対に、ルークはまるで近付くなと言わんばかりに睨みつけた。
そんな姿に怯え後ざすりそうになったが、ここで言葉をかけなければ彼は行ってしまうだろう。
縋る様に目を向ける。


「あんなにっ…あんなに世界を救おうと一緒に頑張ってきたじゃない!!どうしてそんなこと言うの!?」

「世界を、一緒に救う?俺はそんなこと望んでいない!!」


叫び、ルークはさも楽しげに嗤うと、未だ血の滴る剣の切っ先を同行者に殺意を込めて向けた。
困惑している仲間、いや___仲間と思い込んでいた者達はショックを受けた様に黙り込む。
そんな彼等に、苛立った様にルークは視線を向けた。


「確かに、俺は世界を救おうとしていた」

「なら…!!」


希望を見た様にアニスが声を上げる。
しかしそんな声を遮るようにルークが声を荒げた。


「必死に頑張って頑張って!!なのに、世界の為にレプリカ達は死んだっ。イオンやアッシュも死んでしまった!!」

「俺がこの世界で、唯一綺麗だと思えた存在だったのに、もう居ない!!…っこんな犠牲の上に成り立つ世界なんてっ」


――――全て、滅びてしまえ

そう叫んだ彼は、余韻だけが響く場所に一秒たりとも居たくないかのように歩き出す。
次邪魔したら殺すから、と言い残し彼は絶句する自分達を置いて行った。


「ルー…ク」


誰が囁いたか分からない、自分かもしれないその名前を呟き、やっと己達の傲慢さを自覚した。

『ルーク』を当り前の様に犠牲に差し出そうとした自分達。
『レプリカ』をさも当然の様に殺して生き残る被験者。
既に一人、聖なる焔だった灰と呼ばれる青年は死に、そして今も聖なる焔を殺して成り立とうとした世界。
そんな世界に絶望した彼の、ルークの苦しみはきっと深淵よりも深いだろう。

置いてかれて当たり前だ、と自嘲する笑みを浮かべ、空を見上げる。
犠牲の上に成り立つ蒼く澄み渡る空は、憎たらしい程綺麗だった。





君が愛した世界はどこまでも残酷だった
(きっとそれは愛想が尽きる程)




―――――

ルウナさんから相互記念を頂きました!
世界に愛想尽かした黒ルク様ですv
ルークに見限られてPM達はやっと自分たちの愚かさに気づくんですね!
でも既に後の祭りというwww
これから公開し続けて生きていけばいいです!←

素敵な小説をありがとう御座いました!!





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あきゅろす。
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