記念作品 5 そんな瑠衣に視線を戻した三人。 藍はクスッと笑い、睦月と寧々はニヤッと笑って、瑠衣の肩を叩いた。 睦月:「誰もとったりしないわよ」 寧々:「そうそう。自分の男が一番だと思ってるから。ね、藍?」 藍 :「うぅん。一番…かなぁ?」 そこは自信を持って言って欲しかった三人。 藍は夾を見つめ、真剣に考えている。 辰実:「姫が呼んでいるぞ」 斎 :「あっ、本当だ」 視線が夾に向いている事から、呼んでいるのだと勘違いしている二人。 しかし、夾と相沢は苦笑いを浮かべる。 相沢:「違うと思います。藍様のあの行動は、何か考え事をしている時ですよ。恐らく、夾様の事で」 夾 :「だろうな。大方、藍にとって俺が一番かどうかと悩んでいるのだろう」 聞いていたのか、と思うほど正確な事を言う夾。 相沢は同じ意見だと大きく頷き、辰実と斎はあぁと言って納得したのだ。 それから数時間経ち、散々遊んだ女性陣が戻ってきた。 その間、男性は誰ひとりとして動いてない。 藍 :「夾は遊ばないの?」 夾 :「遊んでほしいのか?これはまた大胆な事を言う」 藍 :「違う!もっと普通の…」 言いながら辺りを見回した藍は、あるモノに気付いた。 そして楽しそうな表情を浮かべて、夾に提案する。 藍 :「ビーチバレーしよう!あそこにネットがあるよ」 睦月:「あっ!本当だ」 夾 :「年寄りに何て酷な事を言うんだろうねぇ」 睦月:「あれ?夾はビーチバレーも出来ないの?やっぱりお歳だねぇ」 嫌味を込めて言った睦月に、辰実は口を塞ぐタイミングを逃した。 夾の顔を見て、額に手を当て、長い溜め息を吐く。 その間に、皆は一斉に避難した。 睦月だけが夾を見ていなかった為に、逃げ遅れたのは言うまでもないだろう。 夾 :「言ってくれる。辰実、お前の教育不足だ。どうなっても責任はとらないぞ」 辰実:「構わん。一度痛い目に遭った方が勉強になるだろう」 その会話の意味が分からない睦月は、首を傾げて辰実を見る。 瞳から伝わる事は、余計な事をしたなと言っていた。 それから周囲に視線を向ければ、かなり遠い場所へ避難しているのだ。 ここで初めて、夾を本気にさせてしまった事に気付いた。 だが、後の祭り。 再び振り返ろうとした時、夾が後ろから首を掴んだ。 睦月:「夾!何すんのよ!」 夾 :「決まっているだろ。倒れるまで相手をしてやる。楽しませてくれよ」 今までの流れを聞いていなければ、妖しい事を言っていると勘違いする言葉。 しかし、誰一人として助ける者はいない。 保身の為だ。 夾 :「少しは走れ。主治医が居るのだから、倒れても構わんだろ?」 睦月:「はぁっ、も…死ぬ・・」 息を切らせている睦月に、容赦なく球を打ち込む夾。 主治医である辰実は、救急セットを準備していた。 それを見守る周囲は、倒れないようにと祈りながら睦月を応援している。 現在、ビーチのコートの端に居る面々。 強引に引っ張られた睦月は、一人で夾の放つ球を受けている。 しかも初めてだと言うのに、夾は鬼のようにスパルタだ。 夾 :「無理だと言うのなら、頭を下げて謝罪すればいい」 さすがに睦月の躰を考えたのか、これ以上は無理だと判断した。 そして睦月にとって、最高に屈辱的な事を要求する。 その睦月だが、どうしても言いたくはない。 しかし、自分の躰は限界だと言っている。 辰実を見れば、早く言えと言う表情だ。 仕方ないと諦めた睦月。 辰実以外に、初めて深々と謝罪した。 睦月:「どうも、すみませ…」 夾 :「聞こえないぞ」 睦月:「言葉遣いが悪くて、ごめんなさい!」 やり直しを受け、大きな声で謝罪した睦月。 勿論、しっかりと頭を下げて。 その言葉で夾は合格点を出し、睦月を解放した。 フラついている睦月を抱えた辰実は、診断を始める。 辰実:「馬鹿が。俺は言ったはずだ。夾に余計な事を言うなと」 睦月:「今日で身に染みた。姫以外には超が付くほど厳しいって」 辰実:「まぁ、姫もそれなりに大変だとは思うが…まだマシだろうな」 辰実は、睦月の躰を冷やしながら、日陰へと移動する。 さすが夾だ… ギリギリで止めたな。 睦月の躰を理解しているのか、倒れる一歩前で止めている。 勿論、命に関わらない程度だ。 相変わらず恐ろしいと思いながら、振り返った。 その瞬間、夾が打った球が斎の顔面にHITしたのだ。 やはり虐められる運命なのだろう。 藍 :「夾!可哀相でしょ」 夾 :「藍が相手をするか?」 藍 :「遠慮します」 夾 :「賢明だな。相沢!」 相沢:「仕方ありません。少しだけですよ」 意外と乗り気の相沢は、夾と楽しそうに遊んでいる。 顔面に食らった斎は、辰実に処置をしてもらう事に。 結局、男達もそれなりに楽しんだと言う事だ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |