記念作品
2
睦月:「これって当たり?」
藍 :「睦月ちゃん、ずるい!私なんかこれだよ…」
瑠衣:「藍様。それで文句は言わないで下さい」
泣きそうに言った瑠衣の水着は、かなり大胆なビキニだった。
色は白で紐はなく、固定する場所が後ろのフックだけ。
可哀想と思う三人は、思わず助手席に座っている相沢に視線を向けた。
その相沢は俯いて、仕事をしている。
藍 :「怒ると思うなぁ…」
瑠衣:「私もそう思いますが、他にないので仕方ないかと」
藍 :「だよねぇ。大丈夫!瑠衣さんはスタイルがいいから」
そう言って、自分の水着を見つめた藍。
ビキニなのは変わらないが、瑠衣よりはまだ良かった。
黒地に白の水玉模様で、首の後ろで結ぶ、ホルターネック。
しかしそれでも抵抗はある。
ビキニなど、生まれて初めて着るのだから。
藍 :「やだなぁ…お腹が出るのって」
睦月:「私はラッキーかも。キャミタイプだからお腹が隠れるもん」
心から嬉しそうにする睦月は、ホッとしていた。
それは斎のお陰で、一応出産していると伝えていたのだ。
さすがにビキニはと思ったのか、なるべく隠れるモノを選んでくれている。
藍 :「寧々さんは?」
寧々:「私はもう着てるよ!勿論、ビキニ。でも、パレオがついてた」
喜んでいるのは睦月と寧々だけで、藍と瑠衣は大きな溜め息を吐いた。
どうしてここまで差があるのか、と言いたい二人。
しかしもう既に、どうにもならない状況だ。
そんな空気とは違う二列目。
この五月蝿い中、夾と辰実は熟睡している。
よく寝れると思う斎と相沢だが、そこは軽く触れるだけに留めた。
相沢:「羨ましい限りです」
斎 :「左に同じく」
相沢:「一泊二日でしたよね?ホテルは何処ですか?」
斎 :「九条の系列の○○○ホテル。夾に言って、部屋はとってもらってる」
相沢:「そうですか。ついでに視察でもしましょう」
休日なのに、仕事をするのかと思う斎。
しかし、ここは突っ込まない方がいいと判断した。
二時間ほど車に揺られ、斎の運転する車は目的地に到着。
すっかり寝ていた夾と辰実は、藍と睦月から起こされ、仕方なさそうに腰を上げた。
藍 :「うわぁ!綺麗!」
睦月:「でも、人は多いね。姫、迷子にならないでよ」
睦月の言葉に深く頷く一同。
この中で一番のトラブルメーカーは、何と言っても藍で、次いで睦月だ。
それぞれの相手は、疲れなければいいがと小さな溜め息を零す。
斎 :「ホテルに行ってもいいけど…面倒だし車で着替える?」
女性:「はぁ〜い」
別に見えなければ何処でもいいと思っている四人は、さっさと行動に移った。
着替え終わり、男性陣と交代して、皆が水着姿へと変わる。
斎 :「じゃぁ、行きますか」
斎の言葉で動き出した一同。
楽しそうにする女性陣を、後ろから見つめている男性陣。
夾 :「問題が起きなければいいがな」
辰実:「頭が痛くなる様な事は言うな。来て早々に疲れる」
自分の女が何も問題を起こさない様にと願う二人。
相沢は巻き込まれない様にと祈り、斎は陽気にしている。
砂浜に陣取り、パラソルと椅子を設置。
勿論動いているのは男性陣で、女性陣は既に海へと向かっている。
夾 :「藍!ちょっと来なさい」
海へ入ろうとした時、呼び戻された藍。
急いで夾の元へと向かった。
藍 :「何?」
夾 :「後ろを向け」
藍は首を傾げながら、夾に背中を向けた。
そして、首にぶら下がったモノを手に取る。
藍 :「可愛いね」
夾 :「迷子にならない様に。一応言うが、外れないぞ」
藍 :「だと思った。でもネックレスみたいだね」
夾 :「お前、日焼け止めは塗ったのか?」
成り立ってない会話に聞こえる周囲。
藍が言った“ネックレス”に、夾は全く触れていない。
しかし、二人にとってはごく普通の会話だ。
夾にとって、ネックレスの話題は既に終わっている。
勿論、藍も考えは同じ。
睦月:「あれで会話が成立してるの?」
辰実:「本人達が終わりと思えば終わりだ」
睦月:「そうだね」
この時初めて、夾と藍が続いている理由を理解した。
大して重要ではない場合、お互いに深く追求しないのだろう。
それが長く続いている秘訣なのかもしれない。
そんな事を思っている周囲を余所に、妖しい雰囲気になっている二人。
藍 :「いい!自分でするから」
夾 :「後ろは?俺は黒い女は好みではない」
藍 :「それは夾の好みでしょ?私は焼けてもいいの」
ゆっくり後退している藍に、ジリジリと詰め寄っていく夾。
右手には勿論、日焼け止めクリームを持っている。
これは夾が持って来たモノではなく、裕子がプレゼントした袋に入っていたのだ。
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