記念作品 3 前席と後部座席の雰囲気の違い。 微妙な空気の中、目的地に到着した。 やっと仕事を片付けた二人は、各々溜め息をする。 辰実:「で、あいつは居るのか?」 夾 :「あぁ。相沢、気をつけろよ」 相沢:「は?」 理解できないのか、相沢は首を傾げる。 この頃は、まだその人物との面識はなかった。 相沢以外の三人は、誰一人として説明しない。 口で教える事が出来ないほどの性格だからだ。 綺麗な顔の男が四人も揃えば、注目を集めてしまうのは必然。 周囲はその迫力に道を譲る。 この場に夾が居なければ、必ず近付いてきただろう。 しかし、それをさせないのが夾。 三人は楽だと思いながら歩いていた。 ある店の前で足を止めた一行。 分かっていない相沢は、徐に口を開く。 相沢:「この注目されている中、入るのですか?」 夾 :「それが今日の目的だ。裸体を見る訳ではない」 辰実:「見せてくれるならそれはそれで構わないがな」 サラッと言い放った辰実に、相沢は目を見開いた。 夾と斎は慣れているのか、全く気にしていない。 颯爽と店内へ入る三人の後を追う相沢。 その眉間には、シワが寄っている。 どう考えても、男だけで入る店ではないのだ。 夾はサクサクと歩き、一人の女性を連れてきた。 そう、あの裕子だ。 裕子:「うわぁ!相変わらず綺麗な顔」 夾 :「残念な事に、それぞれ相手が居るぞ」 裕子:「これだから嫌なのよね。イイ男は既に他人のモノだから」 辰実:「お前も婚約者が居るだろ」 呆れた顔で口にした辰実。 次の瞬間、裕子の目つきが変わった。 心底面倒そうな顔をしている。 裕子:「辰実。余計な事は口にしないことを進めるわ」 その言葉に、今度は辰実の顔色が変わった。 過去を思い出したのだろう。 夾と斎は苦笑いを浮かべている。 相沢に至っては、全く理解出来ていない。 夾 :「昔話はその辺で終われ」 斎 :「だねぇ。注目浴びてるし」 女性客しかいない店内。 この場所だけが浮かんでいる。 誰しも、“何で男が四人も?”と思っているだろう。 しかし、目の保養の為か視線は熱い。 裕子:「藍ちゃんを怒らせたの?凄い長文のメールだったけど」 夾 :「少し余計な事を言ってしまった」 裕子:「でしょうねぇ。馬鹿な男」 夾にここまで言えるのは、裕子だけかもしれない。 後ろに立っていた相沢。 今日は驚くばかりだ。 裕子は相沢の表情に気付き、笑みを浮かべた。 そして長い足で、相沢に近付いていく。 裕子:「夾!私これが欲しい」 夾 :「本人に言ってくれ」 夾は既に投げやりになっている。 理由は、下着を選んでいるからだ。 堂々と見ている夾と辰実。 その後ろを斎が歩いている。 相沢はと言うと、どう対応するか悩んでいた。 自分には瑠衣が居る。 裏切る事は出来ないし、そのつもりもない。 相沢:「私はモノではありません」 裕子:「どっちでもいいわよ。一晩だけでも付き合って」 相沢:「ご遠慮します。どうしてもと言うのであれば、店の方へお越し下さい。徹底的に相手をしましょう」 裕子:「まさか…」 相沢:「思っている通りだと思いますよ。夾様ほどではありませんが手加減は致しません」 ニッコリと微笑み、営業スマイルをする相沢。 その表情に、裕子は諦めた。 夾と同類だと思ったのだろう。 下手に手を出せば、痛い目に遭うに違いない。 これは夾の時に学んだ事だ。 裕子:「やっぱり要らない。可愛くない男」 相沢:「光栄です」 やっと自由になった相沢だが、店の外へと向かった。 はっきり言って、これ以上は御免だと思ったのだろう。 ベンチに座り、携帯を開く。 ここでも仕事をしている相沢。 少しくらい休むべきではないだろうか。 そんな相沢の存在を忘れている三人プラス裕子。 下着の説明をしながら、お勧め商品を手渡していた。 夾 :「これは何が入っている?」 裕子:「ジェル。藍ちゃんにはもってこいの商品よ」 辰実:「詐欺だな」 夾 :「あぁ。女の裏舞台は知りたくないモノだ」 大きく夢が崩れていく二人。 裕子の説明だと、ほとんどの人が大きくみせているだけだと言う。 二人の後ろに居た斎は、クスクスと笑っていた。 寧々はある方なので、その心配がないからだろう。 興味はないが、二人の会話が面白い為、付き合っているのだ。 そうでなければ、既に外で待っている。 夾 :「藍も気にしなければいいモノを」 辰実:「人間一つや二つ、悩みはあるだろう?」 裕子:「女の子は気になるモノよ。今後は余計な事は言わないことね」 裕子のアドバイスを受け、夾は苦笑いを浮かべた。 買い物を終えた一向は、昼食をとる事に。 こうして四人で過ごす事がなかった為、不思議な気分だ。 夾 :「昔を思い出すな」 辰実:「あぁ」 斎 :「懐かしいねぇ」 相沢:「男四人での食事は気が進みません」 水をさす様な言い方をする相沢。 出きるなら、早く帰りたいと思っている。 日頃からまともな休暇がない為、瑠衣に構いたいのだ。 夾 :「瑠衣が気になるか?」 相沢:「勿論です」 本音を口にし、注文した物を食べる。 その様子に、斎と辰実は小さく笑った。 斎 :「気にしてもらえるだけマシだよ」 相沢:「どう言う意味でしょうか?」 辰実:「夾に付き合えば、大抵夜まで逃げられない。例え女が待っていようと」 首を傾げる相沢に、二人は昔話を始めた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |