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記念作品

前席と後部座席の雰囲気の違い。
微妙な空気の中、目的地に到着した。
やっと仕事を片付けた二人は、各々溜め息をする。



辰実:「で、あいつは居るのか?」

夾 :「あぁ。相沢、気をつけろよ」

相沢:「は?」



理解できないのか、相沢は首を傾げる。
この頃は、まだその人物との面識はなかった。

相沢以外の三人は、誰一人として説明しない。
口で教える事が出来ないほどの性格だからだ。


綺麗な顔の男が四人も揃えば、注目を集めてしまうのは必然。
周囲はその迫力に道を譲る。
この場に夾が居なければ、必ず近付いてきただろう。
しかし、それをさせないのが夾。
三人は楽だと思いながら歩いていた。


ある店の前で足を止めた一行。
分かっていない相沢は、徐に口を開く。



相沢:「この注目されている中、入るのですか?」

夾 :「それが今日の目的だ。裸体を見る訳ではない」

辰実:「見せてくれるならそれはそれで構わないがな」



サラッと言い放った辰実に、相沢は目を見開いた。
夾と斎は慣れているのか、全く気にしていない。

颯爽と店内へ入る三人の後を追う相沢。
その眉間には、シワが寄っている。
どう考えても、男だけで入る店ではないのだ。


夾はサクサクと歩き、一人の女性を連れてきた。
そう、あの裕子だ。



裕子:「うわぁ!相変わらず綺麗な顔」

夾 :「残念な事に、それぞれ相手が居るぞ」

裕子:「これだから嫌なのよね。イイ男は既に他人のモノだから」

辰実:「お前も婚約者が居るだろ」



呆れた顔で口にした辰実。
次の瞬間、裕子の目つきが変わった。
心底面倒そうな顔をしている。



裕子:「辰実。余計な事は口にしないことを進めるわ」



その言葉に、今度は辰実の顔色が変わった。
過去を思い出したのだろう。
夾と斎は苦笑いを浮かべている。
相沢に至っては、全く理解出来ていない。



夾 :「昔話はその辺で終われ」

斎 :「だねぇ。注目浴びてるし」



女性客しかいない店内。
この場所だけが浮かんでいる。
誰しも、“何で男が四人も?”と思っているだろう。
しかし、目の保養の為か視線は熱い。



裕子:「藍ちゃんを怒らせたの?凄い長文のメールだったけど」

夾 :「少し余計な事を言ってしまった」

裕子:「でしょうねぇ。馬鹿な男」



夾にここまで言えるのは、裕子だけかもしれない。
後ろに立っていた相沢。
今日は驚くばかりだ。


裕子は相沢の表情に気付き、笑みを浮かべた。
そして長い足で、相沢に近付いていく。



裕子:「夾!私これが欲しい」

夾 :「本人に言ってくれ」



夾は既に投げやりになっている。
理由は、下着を選んでいるからだ。
堂々と見ている夾と辰実。
その後ろを斎が歩いている。

相沢はと言うと、どう対応するか悩んでいた。
自分には瑠衣が居る。
裏切る事は出来ないし、そのつもりもない。



相沢:「私はモノではありません」

裕子:「どっちでもいいわよ。一晩だけでも付き合って」

相沢:「ご遠慮します。どうしてもと言うのであれば、店の方へお越し下さい。徹底的に相手をしましょう」

裕子:「まさか…」

相沢:「思っている通りだと思いますよ。夾様ほどではありませんが手加減は致しません」



ニッコリと微笑み、営業スマイルをする相沢。
その表情に、裕子は諦めた。
夾と同類だと思ったのだろう。
下手に手を出せば、痛い目に遭うに違いない。
これは夾の時に学んだ事だ。



裕子:「やっぱり要らない。可愛くない男」

相沢:「光栄です」



やっと自由になった相沢だが、店の外へと向かった。
はっきり言って、これ以上は御免だと思ったのだろう。
ベンチに座り、携帯を開く。
ここでも仕事をしている相沢。
少しくらい休むべきではないだろうか。


そんな相沢の存在を忘れている三人プラス裕子。
下着の説明をしながら、お勧め商品を手渡していた。



夾 :「これは何が入っている?」

裕子:「ジェル。藍ちゃんにはもってこいの商品よ」

辰実:「詐欺だな」

夾 :「あぁ。女の裏舞台は知りたくないモノだ」



大きく夢が崩れていく二人。
裕子の説明だと、ほとんどの人が大きくみせているだけだと言う。

二人の後ろに居た斎は、クスクスと笑っていた。
寧々はある方なので、その心配がないからだろう。
興味はないが、二人の会話が面白い為、付き合っているのだ。
そうでなければ、既に外で待っている。



夾 :「藍も気にしなければいいモノを」

辰実:「人間一つや二つ、悩みはあるだろう?」

裕子:「女の子は気になるモノよ。今後は余計な事は言わないことね」



裕子のアドバイスを受け、夾は苦笑いを浮かべた。

買い物を終えた一向は、昼食をとる事に。
こうして四人で過ごす事がなかった為、不思議な気分だ。



夾 :「昔を思い出すな」

辰実:「あぁ」

斎 :「懐かしいねぇ」

相沢:「男四人での食事は気が進みません」



水をさす様な言い方をする相沢。
出きるなら、早く帰りたいと思っている。
日頃からまともな休暇がない為、瑠衣に構いたいのだ。



夾 :「瑠衣が気になるか?」

相沢:「勿論です」



本音を口にし、注文した物を食べる。
その様子に、斎と辰実は小さく笑った。



斎 :「気にしてもらえるだけマシだよ」

相沢:「どう言う意味でしょうか?」

辰実:「夾に付き合えば、大抵夜まで逃げられない。例え女が待っていようと」



首を傾げる相沢に、二人は昔話を始めた。






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