記念作品
6(斎&寧々)
「念願の夾とはどうだった?」
「う〜ん…微妙」
「あらま。それはまた」
斎はクスクスと笑い、寧々を見つめる。
独占欲が強くないのか、口調は軽めだ。
斎は私が誰と居てもいいのか…
心なしか寧々は沈む。
寧々が斎を落としたのだから、それほど好かれてはないのかもしれないと思ったのだ。
「一つ言っておくけど」
「ん?」
「他の男と二人きりは許さないよ」
にっこりと笑い、忠告した斎。
今回は、相手が夾だから何も言わなかったのだ。
勿論、辰実や相沢でも。
理解出来ない寧々は、首を傾げる。
他の男と言うのは、夾も含まれるのではと考えた。
「言ってる事が滅茶苦茶じゃない?」
「分かってないね…」
斎は溜め息を吐き、説明をする。
このメンバーは、ただの遊びで相手を入れ替えただけ。
そして、心は絶対に渡さない。
しかし、全くの他人なら話は別だ。
自分はその気がなくても、二人きりになれば男は勘違いをする。
そうなれば、手を出してくるだろうと。
「それって…嫉妬?」
「かもね。もし俺の言う事を聞かずに、他の男に抱かれたら…」
「抱かれたら?」
「二人とも海に沈めてあげるからね。勿論、生きたまま」
穏やかな顔をして、恐ろしい事を言い放った斎。
その瞬間。
寧々の躰は硬直する。
意外と怖い性格だったんだ…
さすが夾の友。
ここにきて初めて、夾と連んでいるのかを理解した。
類は友を呼ぶ。
古の言葉は、当たっている。
メンバーの中では一番まともな考えの持ち主。
しかし、世間的にみれば腹黒い部類なのだろう。
「穏やかな顔をしても、性格は歪んでる…このメンバーは悪の塊だね」
「そう?俺は一般論を言ったまでだよ」
「一応、嫉妬心はあるんだ」
「そりゃぁ、人間なら誰しも持ってるものじゃない?」
「まぁ…そうだけど」
尤もな事を言われ、寧々は濁った返事。
生きていれば、当たり前の事。
嫉妬にも種類がある。
何も恋人に対するものだけではない。
斎ってよく分かんないなぁ…
寧々はジッと、斎を観察していた。
「何か言いたそうだね」
「愛してる?」
突然の言葉に、斎は珈琲を吹き出しそうになった。
まさか、寧々から問われるとは思っていなかったのだろう。
俺の言った事を聞いていたのかなぁ?
苦笑いを浮かべ、逆に質問をする。
「愛してるの反対って何だと思う?」
「“嫌い”じゃない?」
「少し違うかな」
寧々は腕を組み、真剣に考え出した。
違う?
嫌いの反対は…
好き?
頭の使う問題は嫌いな為、考えがまとまらない。
隣で唸る寧々を見ながら、斎は笑みを浮かべる。
「無関心だな」
「どう言う事?」
「嫌いならまだ相手を見ているだろ?でも関心がないなら、相手にもしない」
「それで?」
「だから…俺が口を出すって事は愛していると同じことなの」
そう言い切った斎。
うっかりしていたら、サラッと流してしまいそうな言葉。
愛してるって事?
目で問えば、斎は笑みを深めて頷いた。
「やっと分かったみたいだね」
「うん…斎は・・・」
その先が言えないのか、寧々は顔を染めて俯いた。
斎はクスクス笑いながら、寧々の頭を撫でる。
そして耳元で囁いた。
“愛してる”と。
「私も…」
「まぁ、ここで言わなくてもいいよ。ベッドの中で聞くから」
「そう」
恥ずかしい為、斎を見ない寧々。
帰ってからも、言えるかは分からない。
しかし、心は穏やかだった。
斎から大切な言葉を貰ったから―――
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