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記念作品

後日。
招待状を持ってホテルに到着した夾と藍。
ロビーを歩きながら、周囲を見た藍が感想を口にした。


藍 :「凄い人だね〜」


隣でキョロキョロしている藍を見下ろす夾は、大丈夫だろうかと心配でたまらない。
いい歳の人間を心配するのもどうかと思うが、何せ相手は藍だ。
見た目より若く見える上に、陸也を産んでから更に妖艶さが増している。
目を離すとどうなるのか分かっているので、今日は特に疲れそうだと思いながら、藍の腰に腕を回してエスコートする。


藍 :「さっきから気になってるんだけど…夾って何処に居ても目立つよね」

夾 :「引っかかる物言いだな」

藍 :「だって・・・本当のことだとっ」

夾 :「縛るぞ」


耳元で囁かれた悪魔の言葉に、藍の躰がビクッと跳ねた。
そっと隣に視線を向けると、口角を上げて笑う魔王の顔。


藍 :「今のはなかったことで…」

夾 :「何だ。可愛がられる為のスパイスで言ったのかと思ったのだがな」


ククっと笑いながら本音を零した男に、藍は苦笑いしか出来なかった。

招待状を受付に渡して会場に入ると、直ぐに蓮と千鶴が近付いて来る。



蓮 :「ちゃんと来たな」

夾 :「出席すると言ったのですから、来るのは当然だと思いますが?」

蓮 :「まぁ、そうだな」


互いに笑いながら隣に目を向けると、やはり女同士、盛り上がっている。


千鶴:「藍ちゃん!可愛いわ〜!」

藍 :「ちゃんと着れてますか?」

千鶴:「バッチリよ!さすが私!いいモデルだから製作意欲が増すわ〜」


服を褒めているのか、着こなしている自分が褒められているのか…さっぱり分からない。
チラッと夾に視線を向けると、クスクスと小さく笑っているではないか。


ムカつく〜!
どうせ私じゃなくて服の事ですよ!


周りにバレないよう、ヒールで夾の足を踏んだ藍。
痛いはずなのに、さすがは夾だ。
何事もなかったかのような顔をしている。
しかし、夾がこのまま流す男ではないのも事実。
顎を掴まれ、反論する暇も与えられず、唇を奪われてしまった。


藍 :「ん”〜ん”ん”ーーー」


一分は続いただろうか。
会場の入口付近での熱々な接吻に、周囲の視線を集めてしまった。
なかなか終わらないキスに、痺れを切らしたのは蓮だ。
軽い咳払いをして、夾に注意する。


蓮 :「夾。いい加減にしろ。ここを何処だと思っている?」


助けの言葉でやっと唇が離れ、藍はゼイゼイと荒い息を繰り返す。
蓮はそんな藍を見て、よくこの男について行けるなと思いながら、夾に視線を戻した。


夾 :「やれやれ。人の恋路を邪魔すると、馬に蹴られますよ」

蓮 :「お前の冗談は通じない」

夾 :「冗談?心外ですね。本気で言っているのですが?」


クッと喉で笑う夾に、蓮はやれやれと肩を竦めた。


蓮 :「問題を起こさない範囲で楽しんでくれ」

夾 :「仕方ないですね」


釘を差した蓮は、千鶴を連れて挨拶周りに向かった。
息を整えた藍は、夾を睨み付けて言う。


藍 :「視線を集めたじゃない!夾の馬鹿!」

夾 :「それは好都合。お前が俺のモノだと周囲も理解しただろうからな」

藍 :「そうじゃなくてっ」

夾 :「これ以上何か言えば、今ここで抱くぞ」


最高の脅しに、結局口を閉じるしかなくなった藍は、唇を噛んで俯いた。
有言実行の夾に恐れたのもあるが、周囲の視線が痛すぎて、顔を上げる事が出来ないからだ。


周りなど気にもしていない夾は、ボーイから受け取ったグラスを藍に持たせた。


夾 :「シャンパンだ」

藍 :「飲んでいいの?」

夾 :「一杯だけならな」


飲める嬉しさに顔を上げた藍は、満面の笑みを浮かべた。
その顔を見て、心の中で溜め息を吐いた夾。


この顔がなぁ…
飲ませるのは失敗だったか?


そう思うが、今更後には引けない雰囲気。
目を離さなければいいことだと自分に言い聞かせ、食べ物が並んでいる所に向かった。


早苗:「これウマっ!」


毎度お馴染み、ここにも周囲の視線を気にもしない人間が居る。
ガツガツと食べている早苗を、微笑ましく見ていた匠は、視界の隅に夾と藍の姿を捉えた。
それは夾も同じで、食事が並ぶテーブルに藍を置いて、壁際に居る匠の元へ足を運ぶ。


匠 :「ちゃんと来たのですね」

夾 :「お前も蓮さんも…いったい、俺をどんな人間だと思っている?」

匠 :「それは言えませんよ。座りますか?」

夾 :「あぁ」


今日は立食パーティーだが、会場の壁際に数カ所、椅子が置かれている。
その一角の椅子に座っている匠の隣に腰を下ろした夾は、藍と早苗に視線を向けた。


夾 :「よく食べる子だな」

匠 :「それしか楽しみはないでしょうからね。藍さんは…少食のようですね」


一応皿を持っている藍だが、まだ何も乗っていない。
反対に早苗の皿には、色々な物が乗っている。


夾 :「対照的だな」

匠 :「ですね」


クスクスと笑った匠は、周囲を見渡し、思った事を口にする。


匠 :「貴方が来るのも珍しいですが…藍さんはもっとですね。男達が目を離せずにいる」

夾 :「まるで珍獣のようだな」

匠 :「貴方が普段隠している宝が、公の場に居るのだから、気にならないと言うのは難しいと思いますよ」

夾 :「それはお前も同じだ」


互いに苦笑いしか出来ない内容だった。






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あきゅろす。
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