記念作品 4 僅かな隙間に気付いたのか、中の夾と目が合った二人は、あまり目にしない鋭い目付きにゾッとする。 睦月:「あれ、私の知ってる夾じゃない」 寧々:「私も…」 逃げようにも躰が動かない睦月と寧々は、冷や汗を流しながら固まっていた。 すると内側からドアが開き、夾と対峙することに… しかし先程とは違い、怠そうな表情の夾に、“自分達は夢でも見たのか?”と思ったと同時に、何故か女の自分達よりも色っぽいと頬を赤く染めた。 何より疑問なのは、点滴が外れていることだ。 辰実はあれから動いていないはずだが…あまり深入りしないでおこうと考えるのを止めた二人。 そんな二人に、夾が怠そうに聞く。 夾 :「…何か用か?」 寧々:「・・・あの」 睦月:「ハメ撮りした動画ってある?」 夾 :「何故それを知っている!藍には写真しかバレていないはずだが…」 目を見開いて驚いている夾だが、誰も“藍の”とは言っていない。 そもそも、自分の妻のハメ撮りをする旦那が何処に居るだろうか。 二人の反応を見た夾は、余計な事を喋ってしまったと後悔して舌打ちをした。 夾 :「今の話は聞かなかった事にしろ。いいな?」 二人:「はい!」 夾 :「で、誰の話だ?」 睦月:「昔の遊び相手。撮ったんでしょ?」 夾 :「あるにはあるが…何だ?店で働きたいのか?」 ニヤニヤ笑いながら部屋から出てきた夾は、二人に付いて来いと言って廊下を歩き出した。 その後をちゃんとついて行く睦月と寧々。 程なくして書斎に着き、夾ご自慢のコレクション棚の前に立った。 指紋センサーでロックを解除し、中から一枚のDVDを取り出した夾。 それを睦月に渡し、頭を押さえながら壁に寄り掛かる。 夾 :「リビングのテレビなら5.1chだ。後は勝手にしてくれ」 余程辛いのか、それだけを言って無言になった夾を残し、二人は走ってリビングに戻ったのだった。 一方、藍を追いかけた相沢はと言うと… 庭に座って空を見上げている藍に、謝罪の言葉を口にした。 相沢:「率直に言い過ぎたようですね。申し訳ありません」 謝罪に聞こえない藍は、膨れた顔をして相沢を睨み付けた。 相沢はもう面倒になり、言葉を包まずに言う。 相沢:「自分の世話も出来ない人間に、人の世話をするのは無理と言うモノでした」 藍 :「そんな事ない!私は…夾が居なくても生きていける!」 立ち上がって言い放った藍だが、相沢の奥に立つ人物を見て顔色を変えた。 藍の表情で、自分の背後に立つ人物が誰なのか気付いた相沢。 余計な事を言ってしまったと思ったが、所詮は他人事。 そ知らぬ顔をして振り返り、一礼してそそくさとこの場を離れた相沢は賢い人間だ。 《夾&藍》 相沢が消えると、更に空気が重くなったと感じた藍の考えは間違いではない。 腕を組んで立つ夾の目付きが、いつも以上に冷たいのだ。 いくらここが外でも、それくらいは屋敷内から漏れる明かりで分かる。 一歩後退った藍だが、夾の声音で動けなくなった。 「俺が居なくても生きていけると豪語していたようだが?」 「それはっ」 近付きながら言った夾は藍の目の前で足を止め、怯えて震えている頬に手を添えた。 日頃はとても冷たいと言うのに、その手の熱さに驚いた藍。 「夾…熱がっ」 「汗を流せば下がる。手伝ってもらおうか」 「ここは嫌!」 抱かれる事は拒絶しなかった藍に、ククっと笑った夾。 頬に添えている手を細い腕に伸ばして掴み、何も言わずに歩き出した。 今から何をされるのか分かっている藍だが、自分が夾を怒らせたと分かっているだけに素直に従う。 行き着いた先は寝室。 視線だけで藍をベッドに上がらせた夾は、まさに王者。 藍にとっては絶対的な存在だ。 潤む瞳で夾を見つめていると、何故かと言うかやはりと言うか…その手には縄が握られていた。 「縛る…の?」 「自由を奪われて犯されるのが好きだろ?」 「いえ…」 完全に否定出来ないのが何とも悲しい。 普通に抱かれるより、自由を奪われて犯されるように抱かれる方が燃える。 ただし相手は夾に限るが。 心を読まなくても顔に出ている藍に、苦笑いしか出来ない夾。 縛られて喜ぶ女に育てたつもりはないが、結果としてはこうなってしまった。 勿論、夾も嫌いではなくむしろ好きなので構わないが、お仕置きにならなくなるのが難点だ。 「困るな。そう悦ばれてはお仕置きにならないだろ?さて…どうしたモノか」 「お仕置きする夾は…悪魔だよ!」 「悪魔?」 「だって…意識がなくなるまでするし、翌日は歩くのも辛くなるまで激しく…攻めるから・・」 「あぁ、お仕置きとしては成立しているのか。では今まで通りでいいな」 「でも…」 「まだ不満があるのか?」 ニヤニヤ笑いながらベッドに上がった夾の顔は、何もかも分かっていると言っている。 ここで口にしたら負けたような気がする藍は、口を閉じて顔を横に向けた。 なるほどな… 本当に素直な女だ。 細い躰を組みしき、壁の一点を見つめている藍の耳に口を寄せ、熱い息を耳に吹き込む。 そして少しは戻ってきたが、それでも渇れた声で質問した。 「イキ続けるか、我慢し続けるか…どちらがいい?藍に選ばせてやる」 耳から口を離し、顎を掴んで視線を交える。 潤む瞳はどちらでも良さそうなモノだ。 勿論これは、夾から見た場合で、藍は全く違う事を思っている。 何が選ばせてやるよ! どっちも選べないから! どちらにしても地獄。 それが分かっているのだから、選びたくなくて当然だろう。 口をつぐんだままの藍を見下ろしている夾は小さく笑い、顎を掴んでいる熱い手を頬に添えた。 「無言か…ということは、どちらも選んだと解釈しよう」 「そんなっ」 「言ってろ。最後には泣いて喜ぶ」 そう言い放った次の時には唇を手で塞がれ、反論は許されなかった。 普段なら口付けの所なのにと、視線で訴えると、苦笑いをされる。 「今の俺とキスはしない方がいい。まぁ、この状況ではさして変わらないだろうがな」 そう思うなら止めて欲しいのだが、夾はそんな優しい性格ではない。 やると言ったら絶対にする。 抵抗を諦めた藍は、好きにしてくれと身を差し出した。 あっと言う間に縛られた躰は、既に快楽で赤く色づき始めている。 胸の上下に回っている縄の所為と言うかお陰と言うか、大きく見えるのは正直嬉しい。 ただ、背中にある腕は体重で痛むので辛い所。 だが、そう感じるのも最初だけ。 本格的に行為が始まれば、痛みは快楽へと変わっていく。 「んっ…」 胸に咲いていく華は妖艶で、それをつけている本人が欲情してしまう。 恍惚な表情の夾を見て、安堵する藍。 自分は、夾を惹き付けるだけのモノを持っているのだと。 躰中を愛撫する夾だが、肝心な部分は少しも触ってくれない。 太股の内側、秘部のギリギリの所で焦らすのだ。 イキたくて疼く躰。 甘い声を吐き続け、やっと中に長い指が入ってきた。 2本の指でかき混ぜられ、イキそうだと思った瞬間に動きが止まる。 それが何度も何度も続き、藍は涙を流しながら懇願した。 「もう…許して・・」 「ん?何を許せばいいのだ?」 分かっているくせに、そ知らぬ顔顔をする悪魔。 言葉を欲しがっているのは分かる。 が、恥ずかしくて求めている言葉は言いたくない。 「夾が居ないと…困る」 「どう困るのだ?」 「生きていけないことはないの。でも…心に穴が開いて・・」 「息をしているだけと言うことか?」 「ぅん…」 「その件に関しては分かった。これ以上の追求はしないと約束する。で、今からはどうする?」 やはりそちらの方の言葉が欲しかったのかと、ガッカリした藍。 最初から分かっていたが、素直に欲しいとは口に出来ない。 苦肉の策として、首を横に振り続けたのだ。 「やれやれ。俺の猫は恥ずかしがり屋だな。だが…お仕置きとしては成功しているようだ」 「・・熱があるくせにっ!あぁぁ―――」 夾の言い草につい憎まれ口を叩くと、愛撫され続けてビチョビチョに濡れた秘部に、熱くて固いモノが一気に突き進んできた。 「おや?挿れただけでイったのか?これまた…淫乱な躰の持ち主だ」 「あぁ!ダメっ…まだ、動かなっ・・」 「自分に都合のいいことを言うのではない。ほら、これが欲しかったのだろっ」 最奥を突き上げられ、次は抜けるギリギリまで腰を引く大きな動き。 直ぐに二度目の絶頂に達したのは、言わなくても分かるだろう。 それからはもう、何をされてもイキっぱなし。 最高潮の所を停滞している状態が続いている。 「はぁ、はぁ…あぁぁ――んっ、あぁぁぁ――――」 「あっさりイクから辛くなると言うのに。本当に我慢が足りない子だな」 激しく動いているのに、何とも落ち着いた物言いだ。 それでも、いつもよりは息が上がっていて、汗も凄い。 邪魔くさそうに頭を振り、汗を落とす夾はとても色っぽく、同性でもクラっとするだろう。 「頭がスッキリしてきた。藍のお蔭…あぁ、もう聞いていないな」 焦点が合っていない藍を見下ろし、夾は苦笑いを浮かべる。 今の藍には、夾の美声は届いていない。 ただ感じるがままに、自らも腰を振っているだけだ。 縛り方を変え、体位を変え、何度も藍を追い詰めた夾。 意識をなくし、グッタリしている藍にシーツを掛け、頬にキスをしたのだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |