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記念作品

僅かな隙間に気付いたのか、中の夾と目が合った二人は、あまり目にしない鋭い目付きにゾッとする。



睦月:「あれ、私の知ってる夾じゃない」

寧々:「私も…」



逃げようにも躰が動かない睦月と寧々は、冷や汗を流しながら固まっていた。
すると内側からドアが開き、夾と対峙することに…
しかし先程とは違い、怠そうな表情の夾に、“自分達は夢でも見たのか?”と思ったと同時に、何故か女の自分達よりも色っぽいと頬を赤く染めた。
何より疑問なのは、点滴が外れていることだ。
辰実はあれから動いていないはずだが…あまり深入りしないでおこうと考えるのを止めた二人。

そんな二人に、夾が怠そうに聞く。



夾 :「…何か用か?」

寧々:「・・・あの」

睦月:「ハメ撮りした動画ってある?」

夾 :「何故それを知っている!藍には写真しかバレていないはずだが…」



目を見開いて驚いている夾だが、誰も“藍の”とは言っていない。
そもそも、自分の妻のハメ撮りをする旦那が何処に居るだろうか。

二人の反応を見た夾は、余計な事を喋ってしまったと後悔して舌打ちをした。



夾 :「今の話は聞かなかった事にしろ。いいな?」

二人:「はい!」

夾  :「で、誰の話だ?」

睦月:「昔の遊び相手。撮ったんでしょ?」

夾 :「あるにはあるが…何だ?店で働きたいのか?」



ニヤニヤ笑いながら部屋から出てきた夾は、二人に付いて来いと言って廊下を歩き出した。
その後をちゃんとついて行く睦月と寧々。

程なくして書斎に着き、夾ご自慢のコレクション棚の前に立った。
指紋センサーでロックを解除し、中から一枚のDVDを取り出した夾。
それを睦月に渡し、頭を押さえながら壁に寄り掛かる。



夾 :「リビングのテレビなら5.1chだ。後は勝手にしてくれ」



余程辛いのか、それだけを言って無言になった夾を残し、二人は走ってリビングに戻ったのだった。


一方、藍を追いかけた相沢はと言うと…
庭に座って空を見上げている藍に、謝罪の言葉を口にした。



相沢:「率直に言い過ぎたようですね。申し訳ありません」



謝罪に聞こえない藍は、膨れた顔をして相沢を睨み付けた。
相沢はもう面倒になり、言葉を包まずに言う。



相沢:「自分の世話も出来ない人間に、人の世話をするのは無理と言うモノでした」

藍 :「そんな事ない!私は…夾が居なくても生きていける!」



立ち上がって言い放った藍だが、相沢の奥に立つ人物を見て顔色を変えた。

藍の表情で、自分の背後に立つ人物が誰なのか気付いた相沢。
余計な事を言ってしまったと思ったが、所詮は他人事。
そ知らぬ顔をして振り返り、一礼してそそくさとこの場を離れた相沢は賢い人間だ。



《夾&藍》

相沢が消えると、更に空気が重くなったと感じた藍の考えは間違いではない。
腕を組んで立つ夾の目付きが、いつも以上に冷たいのだ。
いくらここが外でも、それくらいは屋敷内から漏れる明かりで分かる。

一歩後退った藍だが、夾の声音で動けなくなった。



「俺が居なくても生きていけると豪語していたようだが?」

「それはっ」



近付きながら言った夾は藍の目の前で足を止め、怯えて震えている頬に手を添えた。
日頃はとても冷たいと言うのに、その手の熱さに驚いた藍。


「夾…熱がっ」

「汗を流せば下がる。手伝ってもらおうか」

「ここは嫌!」


抱かれる事は拒絶しなかった藍に、ククっと笑った夾。
頬に添えている手を細い腕に伸ばして掴み、何も言わずに歩き出した。
今から何をされるのか分かっている藍だが、自分が夾を怒らせたと分かっているだけに素直に従う。

行き着いた先は寝室。
視線だけで藍をベッドに上がらせた夾は、まさに王者。
藍にとっては絶対的な存在だ。
潤む瞳で夾を見つめていると、何故かと言うかやはりと言うか…その手には縄が握られていた。


「縛る…の?」

「自由を奪われて犯されるのが好きだろ?」

「いえ…」


完全に否定出来ないのが何とも悲しい。
普通に抱かれるより、自由を奪われて犯されるように抱かれる方が燃える。
ただし相手は夾に限るが。

心を読まなくても顔に出ている藍に、苦笑いしか出来ない夾。
縛られて喜ぶ女に育てたつもりはないが、結果としてはこうなってしまった。
勿論、夾も嫌いではなくむしろ好きなので構わないが、お仕置きにならなくなるのが難点だ。


「困るな。そう悦ばれてはお仕置きにならないだろ?さて…どうしたモノか」

「お仕置きする夾は…悪魔だよ!」

「悪魔?」

「だって…意識がなくなるまでするし、翌日は歩くのも辛くなるまで激しく…攻めるから・・」

「あぁ、お仕置きとしては成立しているのか。では今まで通りでいいな」

「でも…」

「まだ不満があるのか?」


ニヤニヤ笑いながらベッドに上がった夾の顔は、何もかも分かっていると言っている。
ここで口にしたら負けたような気がする藍は、口を閉じて顔を横に向けた。


なるほどな…
本当に素直な女だ。


細い躰を組みしき、壁の一点を見つめている藍の耳に口を寄せ、熱い息を耳に吹き込む。
そして少しは戻ってきたが、それでも渇れた声で質問した。


「イキ続けるか、我慢し続けるか…どちらがいい?藍に選ばせてやる」


耳から口を離し、顎を掴んで視線を交える。
潤む瞳はどちらでも良さそうなモノだ。
勿論これは、夾から見た場合で、藍は全く違う事を思っている。


何が選ばせてやるよ!
どっちも選べないから!


どちらにしても地獄。
それが分かっているのだから、選びたくなくて当然だろう。

口をつぐんだままの藍を見下ろしている夾は小さく笑い、顎を掴んでいる熱い手を頬に添えた。


「無言か…ということは、どちらも選んだと解釈しよう」

「そんなっ」

「言ってろ。最後には泣いて喜ぶ」


そう言い放った次の時には唇を手で塞がれ、反論は許されなかった。
普段なら口付けの所なのにと、視線で訴えると、苦笑いをされる。


「今の俺とキスはしない方がいい。まぁ、この状況ではさして変わらないだろうがな」


そう思うなら止めて欲しいのだが、夾はそんな優しい性格ではない。
やると言ったら絶対にする。
抵抗を諦めた藍は、好きにしてくれと身を差し出した。

あっと言う間に縛られた躰は、既に快楽で赤く色づき始めている。
胸の上下に回っている縄の所為と言うかお陰と言うか、大きく見えるのは正直嬉しい。
ただ、背中にある腕は体重で痛むので辛い所。
だが、そう感じるのも最初だけ。
本格的に行為が始まれば、痛みは快楽へと変わっていく。


「んっ…」


胸に咲いていく華は妖艶で、それをつけている本人が欲情してしまう。
恍惚な表情の夾を見て、安堵する藍。
自分は、夾を惹き付けるだけのモノを持っているのだと。

躰中を愛撫する夾だが、肝心な部分は少しも触ってくれない。
太股の内側、秘部のギリギリの所で焦らすのだ。
イキたくて疼く躰。

甘い声を吐き続け、やっと中に長い指が入ってきた。
2本の指でかき混ぜられ、イキそうだと思った瞬間に動きが止まる。
それが何度も何度も続き、藍は涙を流しながら懇願した。


「もう…許して・・」

「ん?何を許せばいいのだ?」


分かっているくせに、そ知らぬ顔顔をする悪魔。
言葉を欲しがっているのは分かる。
が、恥ずかしくて求めている言葉は言いたくない。


「夾が居ないと…困る」

「どう困るのだ?」

「生きていけないことはないの。でも…心に穴が開いて・・」

「息をしているだけと言うことか?」

「ぅん…」

「その件に関しては分かった。これ以上の追求はしないと約束する。で、今からはどうする?」


やはりそちらの方の言葉が欲しかったのかと、ガッカリした藍。
最初から分かっていたが、素直に欲しいとは口に出来ない。
苦肉の策として、首を横に振り続けたのだ。


「やれやれ。俺の猫は恥ずかしがり屋だな。だが…お仕置きとしては成功しているようだ」

「・・熱があるくせにっ!あぁぁ―――」


夾の言い草につい憎まれ口を叩くと、愛撫され続けてビチョビチョに濡れた秘部に、熱くて固いモノが一気に突き進んできた。


「おや?挿れただけでイったのか?これまた…淫乱な躰の持ち主だ」

「あぁ!ダメっ…まだ、動かなっ・・」

「自分に都合のいいことを言うのではない。ほら、これが欲しかったのだろっ」


最奥を突き上げられ、次は抜けるギリギリまで腰を引く大きな動き。
直ぐに二度目の絶頂に達したのは、言わなくても分かるだろう。
それからはもう、何をされてもイキっぱなし。
最高潮の所を停滞している状態が続いている。


「はぁ、はぁ…あぁぁ――んっ、あぁぁぁ――――」

「あっさりイクから辛くなると言うのに。本当に我慢が足りない子だな」


激しく動いているのに、何とも落ち着いた物言いだ。
それでも、いつもよりは息が上がっていて、汗も凄い。
邪魔くさそうに頭を振り、汗を落とす夾はとても色っぽく、同性でもクラっとするだろう。


「頭がスッキリしてきた。藍のお蔭…あぁ、もう聞いていないな」


焦点が合っていない藍を見下ろし、夾は苦笑いを浮かべる。
今の藍には、夾の美声は届いていない。
ただ感じるがままに、自らも腰を振っているだけだ。

縛り方を変え、体位を変え、何度も藍を追い詰めた夾。
意識をなくし、グッタリしている藍にシーツを掛け、頬にキスをしたのだった。






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あきゅろす。
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