[通常モード] [URL送信]

記念作品

夾と藍が戻って来たのは、1ゲームが終わってからだった。



斎 :「遅いぞって…凄い荷物だな」

夾 :「つい遊んでしまった。睦月達、少し引き取ってくれ」

睦月:「マジ?ヤッター!夾が持ってる袋の中に、欲しいキャラがあるんだよね」

寧々:「あ!私も!」

瑠衣:「私もあります!そのフライパンが…」



景品に飛び付いた3人を見て、それぞれの相手は苦笑いを浮かべる。
疲れたと言う風に椅子に座った夾は、大きなクマの人形を抱えている藍を呼ぶ。



夾 :「藍。早く来なさい」

藍 :「待って。前がよく見えないから…」



大きな人形の所為で、視界を遮られている藍は、慎重に足を運んでいる。



斎 :「可愛いねぇ。で、結局どうなったのさ」

夾 :「勿論勝ったに決まっているだろ。ここの代金を置いて行った。あいつらが藍に渡した人形は突き返したしな」

辰実:「で、膨れた姫の機嫌をとる為に、あんなバカデガイ人形を取ったのか?」

夾 :「あんなのがUFOキャッチャーでとれるはずがないだろ」

相沢:「くじ、ですか?」

夾 :「あぁ。機械の中にある紙を掴むだけだったが…あれが出るまで何度もさせられた」



本気の疲れた表情で、盛大な溜め息を吐いた夾に、男性陣は苦笑いを浮かべる。
甘やかしている上に、いいように使われているなとは、決して口には出さなかった。


景品の配分が終わると、すぐに二回戦が始まった。
ルールは、最初に女が投げて、次に男が投げると言うモノ。



藍 :「ねぇ、夾。あの人達っていつまで居るの?」

夾 :「飽きたら帰るだろう。気にするな」



“え?追い払わないの?”と思ったメンバー達は、夾に任せたのは間違いだったと肩を落とす。
まぁ飽きれば帰るだろうと開き直り、ゲームに集中した。
夾と藍以外が投げ終わり、それぞれが二人に視線を向ける。



斎 :「次は藍だね。って、出来るのか?」

藍 :「斎さん、失礼だよ!」

斎 :「いや、ごめんごめん」



柔らかく笑った斎に、両目を瞑って舌を出した藍。
そんな顔を夾以外に向けないで欲しいモノだと、メンバー達は冷や汗を流す。

しかし今回、夾は何も言わずに、携帯を扱っていた。
最近買い換えたようで、使い方をマスターしているのだ。

そんな夾を放って、選んできたボールを持った藍が位置つく。
構えて投げた瞬間、“おぉ!”と言いたくなるほどの綺麗なフォームだ。
だが…肝心の球はフラフラ蛇行している。



辰実:「何と言うか・・凄いな。一応、進んでいるが」

斎 :「しかしまぁ…かなりフラフラしてるな」

相沢:「あれが車でしたら、確実に捕まっていますね」



男性陣が感想を述べていると、藍の放った球はどう言う訳かど真ん中に進み、ドミノ方式で全てのピンが倒れていった。
飛び跳ねて喜ぶ藍を見て、誰もが開いた口が塞がらない状況だ。



睦月:「何であれでストライクなの?納得出来ないんですけど!」

寧々:「私はガーターに落ちると思ってたけど…」

瑠衣:「そう言えば藍様って…球技が得意でした」



思い出したように言う瑠衣に、睦月と寧々は“マジで?”と目を見開いた。
卓球の件は勿論、その他の球技もそれなりに出来ると話した瑠衣。



寧々:「運動音痴だと思ってたけど、そうじゃないのかしら?」

瑠衣:「走るのは苦手と仰っしゃっていましたので…あまり動かない球技に限るのかもしれません」

睦月:「それ、あんまないし!」



藍の隠れた才能を聞いた者達は、驚きを顕にしながら夾に視線を向けた。

いつもは藍から視線を絶対に外さない夾だが、今日はどうした事か。
藍を見ずに、黙々と携帯を扱っている。

そんな夾を気にせずに、隣に腰を下ろして報告する藍。



藍 :「見てくれた?ストライクだったんだよ!」

夾 :「あぁ。で、これはどうだ?」

藍 :「ん?・・・嫌!どんなプレイよ!」

夾 :「もう一度、藍と言う猫を飼いたいと思ってな。いいじゃないか。猫耳に猫の手、尻尾を付けるくらい」



夾の発言を聞いて、どうして携帯ばかりを見ているのかを察したメンバー達。



辰実:「あれの事か?」

夾 :「ほら、写真をこれに移してな。可愛くてつい何時間も見てしまう」



ほらと言って携帯を見せられた辰実は、呆れたように溜息を吐いた。
好奇心が勝った睦月が、急いでその写真を見た瞬間、目が点になる。
それを見た他の者達も、睦月同様だ。

画面には、藍の可愛らしい姿が映っていた。
寝ているのはまだいいとして、猫の格好はどう言う事なのか。
考えたくもないので聞く者はいないが、写真自体ははっきり言って物凄く可愛い。



睦月:「夾!」

夾 :「何だ?」

睦月:「これ頂戴!待ち受けにする」

藍 :「駄目!恥ずかしい!」

睦月:「大丈夫。誰も姫だって分かんないって。ねぇ夾。お願い」

夾 :「構わないが…ネットには載せるなよ。面倒になるからな」

睦月:「分かってるって!」



交渉が成立し、赤外線通信をしている二人に、藍は大きな溜め息を吐いて素知らぬ顔をした。
視線を移した先には、まだ居る数人の追っかけを目にする。
先ほどよりも人数は減り、何故か男ばかりが残っているのだ。

女は見切りをつけるのは早いが、男は違うのかもしれない。
そう考えた藍は、何となく腰を上げて男達に近づいて行った。



藍 :「ねぇ、いつまで居るの?」

男1:「帰りたいけど…あの人がいいって言わないから・・」

藍 :「あの人?」

男2:「携帯を扱っている人」



夾の事だと分かった藍は、急いでここまで連れてきた張本人の元に戻った。
そして思い切り頭を叩き、大きな声で言う。






[*前へ][次へ#]

7/12ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!