記念作品 6 夾と藍が戻って来たのは、1ゲームが終わってからだった。 斎 :「遅いぞって…凄い荷物だな」 夾 :「つい遊んでしまった。睦月達、少し引き取ってくれ」 睦月:「マジ?ヤッター!夾が持ってる袋の中に、欲しいキャラがあるんだよね」 寧々:「あ!私も!」 瑠衣:「私もあります!そのフライパンが…」 景品に飛び付いた3人を見て、それぞれの相手は苦笑いを浮かべる。 疲れたと言う風に椅子に座った夾は、大きなクマの人形を抱えている藍を呼ぶ。 夾 :「藍。早く来なさい」 藍 :「待って。前がよく見えないから…」 大きな人形の所為で、視界を遮られている藍は、慎重に足を運んでいる。 斎 :「可愛いねぇ。で、結局どうなったのさ」 夾 :「勿論勝ったに決まっているだろ。ここの代金を置いて行った。あいつらが藍に渡した人形は突き返したしな」 辰実:「で、膨れた姫の機嫌をとる為に、あんなバカデガイ人形を取ったのか?」 夾 :「あんなのがUFOキャッチャーでとれるはずがないだろ」 相沢:「くじ、ですか?」 夾 :「あぁ。機械の中にある紙を掴むだけだったが…あれが出るまで何度もさせられた」 本気の疲れた表情で、盛大な溜め息を吐いた夾に、男性陣は苦笑いを浮かべる。 甘やかしている上に、いいように使われているなとは、決して口には出さなかった。 景品の配分が終わると、すぐに二回戦が始まった。 ルールは、最初に女が投げて、次に男が投げると言うモノ。 藍 :「ねぇ、夾。あの人達っていつまで居るの?」 夾 :「飽きたら帰るだろう。気にするな」 “え?追い払わないの?”と思ったメンバー達は、夾に任せたのは間違いだったと肩を落とす。 まぁ飽きれば帰るだろうと開き直り、ゲームに集中した。 夾と藍以外が投げ終わり、それぞれが二人に視線を向ける。 斎 :「次は藍だね。って、出来るのか?」 藍 :「斎さん、失礼だよ!」 斎 :「いや、ごめんごめん」 柔らかく笑った斎に、両目を瞑って舌を出した藍。 そんな顔を夾以外に向けないで欲しいモノだと、メンバー達は冷や汗を流す。 しかし今回、夾は何も言わずに、携帯を扱っていた。 最近買い換えたようで、使い方をマスターしているのだ。 そんな夾を放って、選んできたボールを持った藍が位置つく。 構えて投げた瞬間、“おぉ!”と言いたくなるほどの綺麗なフォームだ。 だが…肝心の球はフラフラ蛇行している。 辰実:「何と言うか・・凄いな。一応、進んでいるが」 斎 :「しかしまぁ…かなりフラフラしてるな」 相沢:「あれが車でしたら、確実に捕まっていますね」 男性陣が感想を述べていると、藍の放った球はどう言う訳かど真ん中に進み、ドミノ方式で全てのピンが倒れていった。 飛び跳ねて喜ぶ藍を見て、誰もが開いた口が塞がらない状況だ。 睦月:「何であれでストライクなの?納得出来ないんですけど!」 寧々:「私はガーターに落ちると思ってたけど…」 瑠衣:「そう言えば藍様って…球技が得意でした」 思い出したように言う瑠衣に、睦月と寧々は“マジで?”と目を見開いた。 卓球の件は勿論、その他の球技もそれなりに出来ると話した瑠衣。 寧々:「運動音痴だと思ってたけど、そうじゃないのかしら?」 瑠衣:「走るのは苦手と仰っしゃっていましたので…あまり動かない球技に限るのかもしれません」 睦月:「それ、あんまないし!」 藍の隠れた才能を聞いた者達は、驚きを顕にしながら夾に視線を向けた。 いつもは藍から視線を絶対に外さない夾だが、今日はどうした事か。 藍を見ずに、黙々と携帯を扱っている。 そんな夾を気にせずに、隣に腰を下ろして報告する藍。 藍 :「見てくれた?ストライクだったんだよ!」 夾 :「あぁ。で、これはどうだ?」 藍 :「ん?・・・嫌!どんなプレイよ!」 夾 :「もう一度、藍と言う猫を飼いたいと思ってな。いいじゃないか。猫耳に猫の手、尻尾を付けるくらい」 夾の発言を聞いて、どうして携帯ばかりを見ているのかを察したメンバー達。 辰実:「あれの事か?」 夾 :「ほら、写真をこれに移してな。可愛くてつい何時間も見てしまう」 ほらと言って携帯を見せられた辰実は、呆れたように溜息を吐いた。 好奇心が勝った睦月が、急いでその写真を見た瞬間、目が点になる。 それを見た他の者達も、睦月同様だ。 画面には、藍の可愛らしい姿が映っていた。 寝ているのはまだいいとして、猫の格好はどう言う事なのか。 考えたくもないので聞く者はいないが、写真自体ははっきり言って物凄く可愛い。 睦月:「夾!」 夾 :「何だ?」 睦月:「これ頂戴!待ち受けにする」 藍 :「駄目!恥ずかしい!」 睦月:「大丈夫。誰も姫だって分かんないって。ねぇ夾。お願い」 夾 :「構わないが…ネットには載せるなよ。面倒になるからな」 睦月:「分かってるって!」 交渉が成立し、赤外線通信をしている二人に、藍は大きな溜め息を吐いて素知らぬ顔をした。 視線を移した先には、まだ居る数人の追っかけを目にする。 先ほどよりも人数は減り、何故か男ばかりが残っているのだ。 女は見切りをつけるのは早いが、男は違うのかもしれない。 そう考えた藍は、何となく腰を上げて男達に近づいて行った。 藍 :「ねぇ、いつまで居るの?」 男1:「帰りたいけど…あの人がいいって言わないから・・」 藍 :「あの人?」 男2:「携帯を扱っている人」 夾の事だと分かった藍は、急いでここまで連れてきた張本人の元に戻った。 そして思い切り頭を叩き、大きな声で言う。 [*前へ][次へ#] [戻る] |