記念作品 X'mas(斎&寧々) 一緒に暮らしている訳ではない二人。 仕事を終えた寧々は、食材を手に斎のマンションへ向かった。 合い鍵を使い、食事の準備をする。 手際良くこなすところは、年齢の所為だろう。 食事の準備を終え、時計を見る。 時刻は6時過ぎ。 斎が帰って来る時間は、7時を過ぎる時が多い。 それでも早い方だ。 夜中を回る時もあるのだから。 寧々はテレビを見ながら、斎の帰りを待っていた。 夜8時。 斎が帰宅する。 明かりが漏れるリビングに、足音を立てずに入った。 「悪い事をしたな…」 テーブルに並ぶ、美味しそうな料理。 寧々が準備をした事はすぐに分かった。 その張本人は、テレビを見ながら寝てしまったのだろう。 ソファーで横になり、リモコンを握っている。 「寧々、風邪をひくよ」 「…あっ、ごめん。寝てたね」 優しく揺さぶられ、寧々は目を擦りながら躰を起こす。 時計を見て、かなり寝ていた事に気付いた。 斎は着替えを済ませ、テーブルの前に座る。 それはもう、嬉しそうな顔で。 「これは寧々からのプレゼント?」 「一応…物の方が良かった?」 「いや、俺的にはこっちの方がいいから」 正直な気持ちを口にした斎。 物よりも、手作りの方が嬉しいのだ。 勿論、寧々が作るものだけに限る。 寧々は急に恥ずかしくなり、立ち上がる。 何をするのかと首を傾げている斎に向かって、口を開いた。 「冷めてるから、温めるね」 「いいよ。猫舌だし」 斎は冗談ぽく、ウインクを送る。 さすがに対応できない寧々。 皿を一つ取り、キッチンへ向かった。 ビックリする… 絶対に天然だ。 恥ずかしい事を軽く言う斎に、免疫が出来ない。 その為、逃げ場としてキッチンを選んだのだ。 しかし、これが間違いだったのかもしれない。 「いいって言ったのに。逃げたね」 「逃げてはないけど…」 「じゃぁ、それが終わったら来てくれる?」 背後から腰に腕を回し、耳元で囁く斎。 逃げ場がない上に、拒否できない言葉遣い。 寧々は、小さく頷いた。 耳元まで赤くなっている寧々を見て、斎は含み笑いをする。 そしてタイミングよく、レンジの音が響いた。 中身を手に取り、寧々の腕を掴む。 「行くよ」 「うん…」 クスクスと笑いながら、寧々の手を引く斎。 それを聞きながら、寧々は足を進めた。 苛められている訳ではないのに、その様な気分になるのは何故だろう。 多分、斎の言葉かもしれない。 ソファーに座り、寧々の料理を堪能する斎。 一方の寧々は、食べる所の話ではなかった。 強引に口に運ばれ、呑み込むのに必死。 口の周りについた物を、斎の舌で舐めとられたのだ。 「もっ…自分で食べれる・・」 「そう?この方がいいと思うけど?」 結局、最後まで食べさせて貰った寧々。 シャンパンを飲みながら、部屋から見える夜景を眺めた。 背後に座っていた斎は、寧々の首にそっと口付ける。 そして、冷たい物をつけた。 「何?」 「プレゼント」 首にある物に手を伸ばした寧々。 シルバーのネックレスだった。 今まで貢ぐ方だったので、貰った事がない。 驚きと、戸惑いの表情を浮かべる。 「気持ちだから。それに俺はプレゼントはあまりしないよ」 「貰ってもいいの?」 「どうぞ」 クスっと笑い、寧々の頭を撫でる。 寧々は涙を流しながら、“ありがとう”と口にした。 そして、斎に抱きつく。 「う〜ん…寝室の方がいいかなぁ」 「少しだけ…」 「冗談でしょ?やる時はやるよ」 そう言って、斎は寧々を抱え上げた。 目的地は、勿論寝室。 ベッドに寝かせ、優しく抱いたのだった。 情事後。 「一緒に住む?」 「えっ?」 「ここに帰っておいで」 「…うん!」 こうして、二人の新たな道が始まった。 この先、どうなるかは分からない。 しかし、分からないからこそ人生は楽しいのだろう。 二人は幸せな道を辿るのだろうか―――― [*前へ][次へ#] [戻る] |