記念作品 5 ここに来るまでの間に、どれだけの女を引き連れてきたのか。 その中に男も居るのは、この際スルーしておく。 誰が男を引き寄せたかなど、考えなくても分かる為。 睦月:「うわぁお。大名行列ってこんな感じだったのかな?」 寧々:「あの時代、平民は跪いてたし、今は時代が違うでしょ。まぁ…そこら辺を考えなければ同じようなモノかもね」 瑠衣:「いえ、あの…そのような話をしている場合ではないと思いますが」 藍 :「キャァ〜!!凄い凄い!上手!」 藍の歓声に、パッと振り返った3人。 腕に抱いている人形は既に3体に増えている。 一体いつGETしたのだろうか… それを抱えている藍は、ピョンピョン跳ねながら、言葉巧みに男達を持ち上げている。 勿論本人は、これっぽちも持ち上げているとは思っておらず、心のままを口にしているだけだ。 藍 :「お兄さん達上手!こっちは?」 違うUFOキャッチャーの前に2人を連れて行った藍を、止めれる者など居ない。 どうするべきかと悩みながら、夾の鋭い視線にビクビクするしかない睦月達。 自分達の所為ではないが、何故か悪い事をしている気分になる。 そうこうしていると、御一行様がこちらに向かって来た。 周囲の痛い視線もあるので、取りあえずこの場から逃げようと思った睦月と寧々と瑠衣だが、そんな考えなど当然読まれている。 辰実:「姫から目を離すな。早く連れて来い」 睦月:「何で私?寧々でもいいじゃん」 斎 :「寧々は夾が怖くて、とてもじゃないが藍に厳しく言えないんだよ」 寧々:「絶対に嫌!あんな場所で吊るされたら死んじゃうわ」 相沢:「あぁ、店での件ですね。あの時は大変だったようで。御愁傷様です」 瑠衣:「店って…あの、ですよね?」 相沢:「えぇ。あの、ですよ」 この会話の内容を理解していないのは、睦月ただ一人だけ。 運がいいのか悪いのか、夾が経営している店を知らないのだ。 辰実から口止めされているのもあるが、わざわざ言う事でもない。 瑠衣はともかく、寧々も馬鹿な真似さえしなければ、一生知らずにいたはずだった。 睦月:「あの、って何?」 辰実:「気にするな。夾の趣味の話をしているだけだ」 この二人の会話を聞いて、寧々と瑠衣は初めて睦月が知らないと悟った。 それならその方がいいだろうと、急いで話を切り替える。 瑠衣:「夾様はどちらに?」 全員:「えっ?」 悪魔の姿が見えなくなり、急に不安になってきたメンバー達。 藍が居た場所に視線を移すが、目的の人物達の姿は既にない。 “マズイ事になる”と思いながら、手分けして探すことにした。 やっと見つける事が出来たその場所は、何と両替機の前。 その光景の怪しさと言ったら… 斎 :「おぉ〜い!犯罪だけは犯すなよ」 夾 :「失敬な。大きいのしかないから、コマメていただけだろ。人を悪人みたいに言わないでもらいたい」 斎 :「いやいや。怯えてるんですけど…その子ら」 確かに斎の言った通り、2人の男は夾の背後で固まっている。 まるで、かつあげしたお金を夾が使っているようだ。 辰実:「で、ボーリングじゃなかったのか?」 夾 :「その前にここで少し遊ぶ。おい、これであれをとって来い」 男達:「えっ?」 夾から500円ずつ受け取った男達は、常識がありそうな辰実に視線を向けた。 しかし顎で行けと言われ、震える足でとって来いと言われたモノが入っている機械の前に行く。 藍 :「夾がとれば早いと思うけど?」 夾 :「お前が上手と言うからには、かなりの腕前なのだろう。しっかり拝んでおかなくてはな」 藍 :「意味がよく分かんない…」 夾 :「気にするな」 首を傾げる藍の頭を撫でた夾の顔を、少し遠くから見ていた睦月達。 睦月:「あれ、絶対に怒ってるよね?」 寧々:「だね。藍に人形を与えただけなのに…あの男達可哀相」 瑠衣:「下心あっての事ですので、自業自得ではないでしょうか?」 クールな言葉に、睦月と寧々は苦笑いを浮かべた。 どうやら自分達が探していた間に、夾は男達と賭けをしていたらしい。 与えた500円で、指定したモノをGETできれば男達の勝ち。 その場合、藍の為に使った倍の金額を返すそうだ。 反対の場合は、返金なしの上に、今から自分達がするボーリング代を払えと言うこと。 つき先ほどまで、藍の為に縫いぐるみを取っていた男達は、大丈夫だろうと思いながらこの賭けに乗った。 これが大きな間違いだったのは言うまでもない。 結局、GETする事は出来なかったのだ。 しかしこれで引くのは嫌だと、逆に夾に挑戦状を叩き付けた。 夾が取れなかった場合は、5倍にしろと。 斎 :「あいつらも馬鹿だねぇ」 相沢:「結果は見えていますので、私と瑠衣は先にボーリング場に行っています」 睦月:「じゃぁ私も〜」 見なくても分かるメンバー達は、夾と藍を置いて先に行く事にした。 ゾロゾロと歩いていると、何故かここまでついてきた者達もついて来る。 睦月:「あれ、どうにかならないの?」 辰実:「夾が追い払うだろう。気にするな」 全員が“気になる!”と思ったが、自分から追い返す者はいなかった。 誰もが面倒臭いと思っているから。 [*前へ][次へ#] [戻る] |