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「泉様!」
食堂に広がった、不自然な程に張り詰めた空気。
その意味を知らない小柄な女子生徒は、首を傾げた。
眼鏡をかけた長身の生徒が、問題の生徒に低い声で問い掛ける。
周りはニヤニヤしながら、その場を見つめていた。
「クラスと名前を言いなさい」
「一年二組。澤田美海です」
素直に返答した美海。
転入して間もない為、現状が全く理解出来ないのだ。
周囲は“次はあの子だな”と、笑っている。
この学校は、女子生徒がいない。
入学しても、数ヶ月で退学する者が多い為、今は美海だけなのだ。
今の状況になった訳は、美海が一人の男子生徒にぶつかってしまった。
それだけならまだ良かっただろう。
美海が持っていた物で、相手を汚してしまったのだ。
不安になった美海は、小さな声を漏らす。
「あの…」
「生徒会室に連れて来て下さい」
泉と呼ばれた人物は、美海に問い掛けた男に命令した。
そして、食堂から姿を消す。
恭しく頭を下げた男は、指を鳴らし、数名の男が美海を拘束した。
意味が分からない上、男の力に敵うはずもなく、従うしかない美海。
泣きそうになりながら、美海は生徒会室へ押し込まれた。
それでも苛立ちは募ってくる。
美海は、強い口調で言い放った。
「何?お腹が空いてるんだけど」
「貴様!泉様に向かって…」
「喜井、良い。転入生だ」
「はい」
またも、深々と頭を下げる男。
更に意味が分からない美海は、会長の椅子に座っている人物を睨み付けた。
「ここは少し変わった学校でね」
「泉様。私から説明致します」
「どうぞ」
泉の許可を貰った喜井は、忌ま忌ましい表情で美海を見下ろす。
その内容を聞いた美海は、開いた口が塞がらなかった。
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