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契約 【完】(★★★☆☆)
11
理解出来るようになると、勝手に涙が溢れてきた。
入れられたまま叩かれていたと言うのに、自分は呑気に寝ていたのだ。
否…実際は意識を失っていたのだが。
反対に顔を向ければ、自分の厭らしい躰が鏡に写り込んでいる。


こんな私…
知らない・・・


ついマジマジと見ていたら、目敏く気付いた相馬がベッドに括りつけていた方の手錠を外した。
方と言う事は、杏奈の手に嵌められている手錠はそのままだ。

相馬は杏奈を抱え上げ、ベッドの端に座り、鏡の前で細い両足を大きく開かせた。



「ほら、これで見やすいだろ?」



“何を余計な事をしてくれてんだ!”と鏡越しに睨み付けると、口角を上げて笑う相馬と目が合う。



「不服そうだな。だが見てみろ。こんなに太いモノを易々と飲み込んでいるではないか」

「離し…てっ」

「逸らすな」



横に向けた顔を戻され、嫌でも鏡を見る事になった。
涙を流しながらも、何処か嬉しそうな自分の顔。
秘部は相馬の言う通り、厭らしくも大きく広げて飲み込んでいるのだ。



「分かったか?お前のここは、俺を咥えこんでこんなにも喜んでいる。今後一切…俺以外を咥えるなよ。もし裏切った時は…楽しみにしておけ」

「殺されるって意味?」

「そんな優しい事はしない。生かさず殺さず、心を壊した方が面白いだろ?」



笑いながら言った相馬の、真の恐ろしさを垣間見た瞬間だった。
恐ろしすぎて、無意識に腰を上げて逃げてしまった杏奈。
それが悪かったのは言うまでもない。
力強く腰を掴まれ、引き戻された。
そしてすぐに下から突き上げられ、悲鳴をあげる事になる。



「馬鹿な事をした罰だ…」

「クっ…動かな、で・・壊れる!」

「壊れてもいいだろ?お前一人くらい、一生面倒をみてやれる金はあるからな」



背後でクスクスと笑いながら、
相馬は突き上げの速度を速めた。

もう頭が真っ白で、自分でも何を言っているのか分からない。
ただ意識が遠退きかけた時、相馬の優しい声が聞こえた気がした。
“やっと名前を呼んだな”と。
それともうひとつ。
“愛してる”の言葉。


意識を失った杏奈をベッドに寝かせた相馬は、甲斐甲斐しく濡れたタオルで躰を綺麗に拭う。
そして左の薬指に印をつけ、その指に優しく口付けた。



「おやすみ。杏奈」



翌朝目が覚めた杏奈は、一人だけのベッドに寂しさを覚えた。
広いベッドだから、尚更そう思うのかもしれない。
ぼぉ〜っとしているとドアが開き、緒方が顔を出した。



「おはようございます、杏奈様。朝食はパンとご飯、どちらが宜しいですか?」

「…米」

「畏まりました。お着替えはお一人で大丈夫ですか?」

「出来る」



杏奈の返答を聞いて、頭を下げて出て行った緒方。
パタンとドアが閉まり、ホっと息を吐く。


相変わらずサバサバした人だな…
昨日の事なんて気にもしてないんだから・・・


まぁその方がいいと思い、痛む腰を庇いながら時間をかけて着替えたのだった。


リビングで珈琲を飲みながら新聞を読んでいた相馬は、戻ってきた緒方にチラッと視線を向ける。
杏奈が起きたと理解すると、新聞を折り畳んで待つことにした。



「喜びすぎではありませんか?」

「気にするな」

「そのご様子ですと、少しは反省しているようですね」



図星なだけに、返す言葉が見付からない。
出来ることと言ったら、苦笑いをするのみだ。



「手に入れたいモノがやっと手に入ったんだ。少しは喜びに浸ってもいいのではないか?」

「他人の詮索を嫌うのでしたら、声を気にした方が宜しいと思います。防音はそれなりにあるようですがね」

「了解」



緒方の言わん事が分かった相馬は、素直に頷いた。

そんな話がちょうど終わった時、寝室のドアが開く。
出てきた杏奈を見て、相馬も緒方も目を見開いてしまった。



「何?どしたの?二人とも変な顔して」

「俺には、学校の体操服に見えるのだが」

「見えるも何も、体操服だけど?」

「クローゼットに用意していただろ?」

「汚れたら困る。これだったら気にならないし、何て言っても楽じゃん」



笑って席についた杏奈に、相馬は目頭を押さえ、緒方は溜め息を吐いた。
いくら家だからと言っても、体操服でウロウロしてほしくはない。
まるで、悪いことでもしているような気分になる。



「それ、洗ってあるのか?」

「…さあ?ずっと学校に置きっぱなしだったけど、担任が汚いから持って帰れって煩くてさぁ。仕方なくみんな持って帰ったわけ」



説明を聞いた瞬間、ガタンっ立ち上がった相馬。



「今すぐ脱げ!」

「ヤダ!着るモノないじゃん」

「大量にあるだろ!」

「あんな服嫌い!私の性格考えて買って来い!」

「杏奈!」

「じゃぁ、それ着る。早く脱いで」



杏奈が指差した先は、相馬が今着ているカーディガンだ。
本気なのか早く脱げと睨まれ、渋々カーディガンを脱ぐ相馬は既に尻に敷かれている。


何でこうなった?


脱ぎながら首を傾げる相馬を、少し離れた所で笑っている緒方。
あの相馬も、杏奈には勝てないのだ。
まぁ女が強い方が上手くいく、と言うのが世の中の理である。
これでいいのだろうと、緒方は黙って二人を見守るのだった。






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あきゅろす。
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