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バカとポケモンと召喚獣
第六問
雄二「さて皆、総合科目テストご苦労だった」

教壇に立った雄二が机に手を置いて皆の方を向いている。
今日も午前中がテストで、ついさっき全科目のテストが終わって昼食を取ったところだ。
Dクラス戦ではまったく出番がなかったが、補給のテストが多くてとてもきつかった。

雄二「午後はBクラスとの試召戦争に突入する予定だが、殺る気は充分か?」

F生徒『おおーっ!』

一向に下がらないモチベーション。俺達のクラスの唯一の武器と言ってもいい。

雄二「今回の戦闘は敵を教室に押し込むことが重要になる。その為、開戦直後の渡り廊下戦は絶対に負けるわけにはいかない」

F生徒『おおーっ!』

雄二「そこで、前線部隊は姫路瑞希に指揮を取ってもらう。野郎共、きっちり死んで来い!」
姫路「が、頑張ります」

男のノリについていけないのか、若干引き気味な姫路が一歩前に出る。

F生徒『うおおーっ!』

一緒に戦えるとあって、前線部隊の士気は最高潮に達しようとしていた。
とりあえず今回は廊下での戦闘で勝ちに行くようだ。ここで負けたら話にならないので、戦力もFクラス全五十一人中四十人を注ぎ込む。そこにはFクラスの双璧の一角(もう一人は俺な)を担い、かつ学年でも二位という強さを誇る姫路もいる。廊下での戦闘はまず取れるだろうな。

キーンコーンカーンコーン


昼休み終了、と同時にBクラス戦開始のベルだ。

雄二「よし、行ってこい!目指すはシステムデスクだ!」
F生徒『サー、イエッサー!』

敵を教室に押し込むのが目的なので、とにかく勢いが重要となる。ちなみに俺は今回も待機。本気で雄二は俺を対Aクラス戦まで温存するつもりのようだ。

少しして雄二も教室を出てから更に少し後、廊下から誰かの声が聞こえた。
?「ククク……さて、奴らの弱点を探すとするか」

今の声は、根本か?とりあえず俺は掃除用具入れに隠れた。

そしてしばらくの間根本は教室の中を荒らし回ってから出ていった。一つの封筒を上着のポケットに入れながら。その少し後に明久や秀吉が戻ってきた。

明久「……うわ、こりゃ酷い」
秀吉「まさかこうくるとはのう」
明久「卑怯、だね」

教室に戻ってきた明久達がそう呟いた。

明久「酷いね。これじゃ補給がままならない」
秀吉「うむ。地味じゃが、点数に影響の出る嫌がらせじゃな」

根本の奴、器が小さいにも程があるぞ。

雄二「あまり気にするな。修復に時間はかかるが、作戦に大きな支障はない」
明久「雄二がそう言うならいいけど」

何だか微妙に気になるな。

明久「それはそうと、どうして雄二や魁は教室がこんなになっているのに気づかなかったの?」

俺はともかく、雄二はどこに行っていたんだ?

魁「俺は根本に見つからないように隠れていた」

雄二「協定を結びたいという申し出があってな。調印の為に教室を空にしていた」
秀吉、魁「「協定、じゃ(だ)と?」」
雄二「ああ。四時までに決着がつかなかったら戦況をそのままにして続きは明日午前九時に持ち越し。その間は試召戦争に関わる一切の行為を禁止する。ってな」
魁「それ、承諾したのか?」
雄二「そうだ」
明久「でも、体力勝負に持ち込んだ方がウチとしては有利なんじゃないの?」
雄二、魁「「姫路以外は、な」」
明久「あ、そっか」
雄二「あいつ等を教室に押し込んだら今日の戦闘は終了になるだろう。そうすると、作戦の本番は明日ということになる」
明久「そうだね。この調子だと本丸は落とせそうにないね」
雄二「その時はクラス全体の戦闘力よりも姫路個人の戦闘力の方が重要になる」

明久「だから受けたの?姫路さんが万全の態勢で勝負できるように」
雄二「そういうことだ。この協定は俺達にとってかなり都合が良い」
魁「まあ、それならいいが」

だが、根本のことだ。先ほど持ち出した封筒が俺の中で引っ掛かる。

秀吉「皆、ワシらは前線に戻るぞい。向こうでも何かされているかもしれん」

そう言うと、秀吉は教室を駆け足で出て行った。

明久「ん。雄二、あとよろしく」
雄二「おう。シャープや消しゴムの手配をしておこう。魁も手伝ってくれ」
魁「わかった」
明久「雄二、魁、気をつけてね」
雄二、魁「「そっちもな」」
魁「と、その前に、明久」
明久「どうしたの?魁」

明久を呼び止め、その耳元で囁いた。

魁「姫路から目を離すなよ(小声)」
明久「え?何で?(小声)」
魁「いいから(小声)」
明久「わかった。んじゃ、行ってくる(小声)」

明久を見送って、俺は雄二と共に設備の修復を始めた。
そしてしばらくの後……。




    ☆




明久「……ここはどこ?」

お、明久が目を覚ました。

姫路「あ、気が付きましたか?」

近くから姫路の声が聞こえた。

姫路「心配しましたよ?吉井君ってば、まるで誰かに散々殴られた後に頭から廊下に叩きつけられたような怪我をして倒れているんですから」
秀吉「いくら試召『戦争』じゃからといって、本当に怪我をする必要はないんじゃぞ?」

……一体前線で何があったんだ?

明久「ちょっと色々あってね。それで試召戦争はどうなったの?」

明久が畳に横たわっていた身体を起こした。何か見てるだけで痛そうだ。

魁「今は協定通りに休戦中だ。続きは明日になる」
明久「戦況は?」
雄二「一応計画通り教室前に攻め込んだ。もっとも、こちらの被害も少なくないがな」

雄二がこっちの被害を書いたメモを読み上げる。まぁ、ここまではこちらの思い通りに進んではいるが、相手はあの根本だからな……油断はできんな。

明久「ハプニングはあったけど、今のところは順調ってわけだね」
雄二「まぁな」
魁「でも、相手はあの根本恭二だから、絶対にまだ何かを企んでいる筈だ。気をつけてろよ」
雄二「了解」
康太「…………(トントン)」
雄二「お、ムッツリーニか。何か変わったことはあったか?」

気付けば康太がそばに来ていた。
今日の康太は情報係で、戦闘には直接参加せずに周囲を警戒していた。相手の動きを逃さずチェックする為だ。

雄二「ん?Cクラスの様子が怪しいだと?」
康太「…………(コクリ)」

康太の話によると、どうやらCクラスが試召戦争の用意を始めているらしい。まさかAクラスに攻め込もうなんて考えているわけがないから――

魁「漁夫の利を狙っているのか?」
雄二「たぶんな。まったく、いやらしい連中だな」
魁「この戦争で勝った方に攻め込むのか?疲れている相手ならやりやすいだろうからな」
雄二「まぁ、俺がヤツらの立場ならそうするがな」
明久「雄二、どうするの?」
雄二「んー、そうだなー」

ちらっと時計を見る。午後の四時半。まだそんなに遅い時間じゃないな。

雄二「Cクラスと協定でも結ぶか。Dクラス使って攻め込ませるぞ、とか言って脅してやれば俺達に攻め込む気もなくなるだろ」
明久「それに、僕らが勝つなんて思ってもいないだろうしね」

Cクラスが俺達と協定を結ぶのはそう難しい話じゃなさそうだ。……根本恭二さえ絡んでいなければ。

雄二「よし。それじゃ今から行ってくるか」
明久「そうだね」

雄二「秀吉と魁は念の為にここに残ってくれ」
秀吉「ん?なんじゃ?ワシと魁は行かなくて良いのか?」
魁「その理由は?」
雄二「秀吉の顔を見せると、万が一の場合にやろうとしている作戦に支障があるんでな。魁は存在すらも知られたくはない」
秀吉「よくわからんが、雄二がそう言うのであれば従おう」
魁「俺も」

素直に引き下がる秀吉と俺。雄二が今言った念の為とは、協定締結が失敗したときを想定してのことか?俺にいたっては存在すらも知られたくはないということは、対Aクラスの秘密兵器か?

明久「じゃ、行こうか。ちょっと人数少なくて不安だけど」

秀吉と俺を残して明久、雄二、姫路、康太というメンバーでCクラスに向かう。

美波「吉井、アンタの帰り血こびりついて洗うの大変だったんだけど。どうしてくれんのよ」
須川「それって吉井が悪いのか?」

廊下に出たところで、ハンカチで手を拭ってる美波と鞄を肩に担いでる須川に会った。

明久「あ、島田さんに須川君。ちょうど良かった。Cクラスまで付き合ってよ」

まさか明久のヤツ、須川や美波を姫路の盾にするつもりだな。
まぁ、この二人が断るなんてないと思うけどな。

美波「んー、別にいいけど」
須川「ああ。俺も大丈夫だ」

仲間が増えたな。

秀吉「急がんとCクラスの代表が帰ってしまうぞい」
明久「うん。急ごう」

こうして更に美波と須川を加えた六人でCクラスに向かうことになった。




    ☆




先に雄二、康太、姫路が戻り、それから少しして殿の明久と美波も戻ってきた。須川がいない、ということは失敗か。大方根本が何かしたのだろうが。

明久「あー、疲れたー」
姫路「よ、吉井君!無事だったんですね!」

明久が戸を開けると、姫路が駆け寄った。

明久「うん。このくらいなんともいだぁっ!」
明久が爪先を踏み抜かれた。一体何があったんだ?

美波「ふんっ」
明久「し、島田さん。僕が何か悪いことでも」
美波「(キッ!)」
明久「あ、い、いや。美波」

明久が美波に射殺すような眼光で睨まれた。
いつの間に呼び方変えたんだ?

姫路「……随分二人とも仲良くなったみたいですね。」
明久「え?コレで?」

仲良しは足を踏みつかれたりはしない筈だが。

雄二「お。戻ったか。お疲れさん」
秀吉「無事じゃったようじゃな」
魁「お疲れ」
明久「ん。ただいま」

雄二と秀吉、それに俺も集まった。康太も明久を見て小さく頷いていた。あんまり心配はしていなかったみたいだが。

雄二「さて。お前ら」
明久「ん?」

雄二がその場にいる全員を見回して告げた。

雄二「こうなった以上、Cクラスも敵だ。同盟戦がない以上は連戦という形になるだろうが、正直Bクラス戦の直後にCクラス戦はきつい」

向こうもそれが狙いなのだから、俺達がBクラスに勝ったとしたら、間違いなくCクラスが息つく暇を与えずに攻め込んでくるだろうな。

明久「それならどうしようか?このままじゃ勝ってもCクラスの餌食だよ?」
秀吉「そうじゃな……」
魁「それで、雄二は何か考えはあるのか?」
雄二「ああ。それは明日の朝に実行する。目には目を、だ」

俺が尋ねると、雄二は活き活きとした顔でそう告げた。
この日はそれで解散となり、続きは翌日に持ち越されることになった。

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あきゅろす。
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