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風神と舞姫と漆黒の狼
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―新校舎三階―
明久「……なんだろうね、このばかデカい教室は」
風太「うん、デカいにも程があるでしょ。ねえ、雷華」
雷華「せやな、ここがAクラスってとこなんかな?」

高橋『皆さん進級おめでとうございます。私はこの二年A組の担任、高橋洋子です。よろしくお願いします』
転入手続きはすでに終わっていて、自分の教室に向かう途中、通常の五倍はあろうかという広さを持つ教室が目に留まり、思わず足を止めて大きめの窓から中を覗くと髪を後ろでお団子状にまとめ、眼鏡をかけてスーツをきっちり着こなした知的女性の代表のような教師らしき人がいた。高橋と名乗った教師が告げると黒板ではなく壁全体を覆うほどの大きさのプラズマディスプレイに担任教師の名前が表示された。こんなばかデカい教室、名皇には無かったなぁ……。
高橋『まず設備の確認をします。ノートパソコン、個人エアコン、冷蔵庫、リクライニングシートその他の設備に不備のある人はいますか?』
教室は五十人の生徒が普通に授業を受けるには広すぎるほどの広さと設備があり、冷蔵庫には当然のように各種飲料やお菓子を含めた様々な食料が、エアコンは教室どころか各自に一台、それぞれが好みの温度に調整できるようになっている。更に見渡してみると天井は総ガラス製でありながらスイッチ一つで開閉可能となっており、壁には他の人から見れば結構な値段がするだろうと思う絵画や観葉植物がさりげなく置かれていた。どこの高級ホテルのロビーだよ、とツッコミを入れたくなるような教室だ。こんな設備も名皇には無かったなぁ…。
高橋『参考書や教科書などの学習資料はもとより、冷蔵庫の中身に関しても全て学園が支給致します。他にも何か必要なものがあれば遠慮などすることなく何でも申し出てください』
あ、紅茶の香りがする。早速支給されている設備を使って紅茶をいれた生徒がいるのかな?
高橋『では、はじめにクラス代表の紹介します。霧島翔子さん。前に来て下さい』
霧島『……はい』
名前を呼ばれて席を立ったのは、黒髪を肩まで伸ばした日本人形みたいな女の子。物静かな雰囲気を持つ彼女はその整った容姿と相まって、穢れを近づけない神々しさを放っていた。クラス全員の視線が集まる。たぶんAクラスの一位がそのまま二年生の一位になるんだろうから注目されるのは当たり前か。
霧島『……霧島翔子です。よろしくお願いします』
そんな視線のど真ん中にありながら顔色一つ変えずに淡々と名前を告げる霧島と名乗った女の子。
高橋『Aクラスの皆さん。これから一年間、霧島さんを代表にして協力し合い、研鑽を重ねてください。これから始まる『戦争』で、どこにも負けないように』
担任教師の結びの言葉が告げられ、霧島さんが会釈をして席に戻る。
明久「っと、こうしてはいられない。僕達も自分のクラスに向かわないと」
妖魔「ちょっと急ごうか」
風太「うん、そうだね。急ごう」
雷華「あ、待ってえな三人とも!」
俺達は走り出さない程度に廊下を急いで進んで行った。

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