風神と舞姫と漆黒の狼 勝利への糸口 明久、風太「「雄二っ!」」 雄二「うん?どうした明久に風太。脱走か?チョキでシバくぞ」 教室に飛び込むと、雄二はノートに何かを書き込んでいた。近づいてみると、それが現在のFクラスとBクラスの戦力を記したものだってことがわかった。 明久「話があるんだ」 雄二「……とりあえず、聞こうか」 明久が自分の冗談に構ってる余裕が無いことを察すると、雄二は真面目な顔で俺らの方を向いた。だから俺らも真面目な顔で向き合う。 明久「根本君の着ている制服が欲しいんだ」 雄二「……お前に何があったんだ?」 明久、それだとただの変態だよ。 明久「ああ、いや、その。えーっと……」 ホントは制服の中にしまってある封筒が欲しいんだけど、その事情は話せないし。 雄二「まぁいいだろう。勝利の暁にはそれくらいなんとかしてやろう」 しかも受け入れられてるし。しかし雄二のリアクションはまるで『明久にそういう趣味があっても不思議はない』って顔してるし。 雄二「で、それだけか?」 呆れたように明久を見る雄二。もちろんそれだけじゃないけどね。 風太「いや、こっからが本題。姫路さんを今回の戦闘から外して欲しいんだけど」 雄二「理由は?」 明久「理由は言えない」 雄二「どうしても外さないとダメなのか?」 風太「うん。どうしても」 雄二が顎に手を当てて考え込む。 今俺らはかなりの無理を言ってる。 姫路さん抜きでBクラスを倒すなんて俺や雷華がいてもマジでキツイ。下手すりゃ負ける。もちろんそれは雄二の責任として問われる。 明久、風太「「頼む(お願い)、雄二!」」 俺らは雄二に深く頭を下げた。 身勝手な話だってことは自分でもわかってる。例え俺らの頼みでも自分に得のない頼みは受けたりしない。それが坂本雄二という男だ。 雄二「……条件がある」 明久、風太「「条件?」」 雄二「まず明久。姫路が担う予定だった役割をお前がやるんだ。どうやってもいい。必ず成功させろ。そして風太。お前は前線に戻って敵の主戦力を引き付けろ。俺も直ぐに行く」 明久「もちろんやってみせる!絶対に成功させるさ!」 風太「わかった。任せてよ」 雄二「良い返事だ」 ふっと口の端を上げる雄二。 明久「それで、僕は何をしたらいい?」 雄二「タイミングを見計らって根本に攻撃をしかけろ。科目は何でもいい」 明久「皆のフォローは?」 雄二「ない。しかもBクラス教室の出入り口は今の状態のままだ」 明久「……難しいことを言ってくれるね」 明久は厄介な役割を押し付けられたな。 今の戦闘はBクラス教室の前後の扉の二カ所で行われてて、場所の条件から常に一対一になってる。これは少しでも時間を稼ぐためと、雄二の作戦に必要な行動らしい。そんな中で教室の奥に陣取ってる根本君に近付くには圧倒的な個人の火力が要る。 例えばおれや姫路さんや雷華みたいな。明久にはその火力がない。 明久「もし、失敗したら?」 雄二「失敗するな。必ず成功させろ」 いつになく強い口調。どうやら『作戦失敗=敗北』と見て間違いはなさそうだね。 風太「で、俺は?」 雄二「お前は俺が合流した後、俺が合図を出したら直ぐに部隊を下がらせろ。こっちも必ず成功させるんだ」 風太「了解」 さてと、やってやろうじゃんか。 雄二「それじゃ、うまくやれよ」 考え込む明久と気合いを入れる俺を置いて、雄二が教室を出ようと立ち上がる。 明久「え?どこか行くの?」 雄二「Dクラスに指示を出してくる。例の件でな」 Dクラスと例の件、といえば室外機だな。 雄二「明久」 教室を出る直前、雄二はこっちを振り向かずにこう言った。 雄二「確かに点数は低いが、秀吉やムッツリーニ、それに風太や妖魔のように、お前にも秀でている部分がある。だから俺はお前を信頼している」 明久「……雄二」 雄二「うまくやれ。計画に変更はない」 そう言い残し、雄二は教室を後にした。 風太「じゃ、俺も前線に戻るから行くね。お互い、自分の役割をしっかりやろうね」 明久「うん。絶対に成功させようね」 そう言って俺は教室を後にし、前線へと戻って行った。 Bクラス戦の終結が刻一刻と迫る。 [*前へ][次へ#] [戻る] |