風神と舞姫と漆黒の狼 VS.Bクラス開戦 雄二「さて皆、総合科目テストご苦労だった」 教壇に立った雄二が机に手を置いて皆の方を向いている。 今日も午前中がテストで、ついさっき全科目のテストが終わって昼食を取ったところだ。 Dクラス戦ではほとんど出番がなかったけど、補給のテストが多くてめっちゃしんどかった。 雄二「午後はBクラスとの試召戦争に突入する予定だが、殺る気は充分か?」 F生徒『おおーっ!』 一向に下がらないモチベーション。俺らのクラスの唯一の武器と言ってもいいよ。 雄二「今回の戦闘は敵を教室に押し込むことが重要になる。その為、開戦直後の渡り廊下戦は絶対に負けるわけにはいかない」 F生徒『おおーっ!』 雄二「そこで、前線部隊は姫路瑞希に指揮を取ってもらう。野郎共、きっちり死んで来い!」 姫路「が、頑張ります」 男のノリについていけないのか、若干引き気味な姫路さんが一歩前に出る。 F生徒『うおおーっ!』 一緒に戦えるとあって、前線部隊の士気は最高潮に達しようとしていた。 とりあえず今回は廊下での戦闘で勝ちに行くみたい。ここで負けたら話になんないから、戦力もFクラス全五十三人中四十三人(俺、雷華、妖魔を含む)を注ぎ込む。そこには我が軍最強四天王の一角を担い、かつ学年でも二位という強さを誇る姫路さんもいる。廊下での戦闘はまず取れるだろうね。 キーンコーンカーンコーン 昼休み終了、と同時にBクラス戦開始のベルだ。 雄二「よし、行ってこい!目指すはシステムデスクだ!」 F生徒『サー、イエッサー!』 敵を教室に押し込むのが目的なので、とにかく勢いが重要となる。 風太「明久、俺らは姫路さんに合わせるから先に行ってて」 明久「うん、わかった」 姫路さんに合わせて走ったから少し遅れた。 姫路「お、遅れ、まし、た……。ごめ、んな、さい……」 風太「待たせたね、皆!」 雷華「ウチらが来たからには、もう安心やでぇーっ!」 妖魔「さあ、ここからだよ」 俺の隣では姫路さんが息を切らしていた。 B生徒「来たぞ!姫路瑞希だ!」 B生徒「竹中兄妹に闇崎妖魔もいるぞ!」 Bクラスの誰かが叫ぶ。下調べでもしてたのか、明らかに俺らを警戒してる。 明久「皆、来たばかりで悪いんだけど……」 姫路「は、はい。行って、きます」 風太「俺らも行くよ、雷華」 雷華「はいな、兄さん」 妖魔「さてと、僕も行くとしよう」 そのまま戦場に紛れ込む俺ら。 宇都宮(B)「山田先生、Bクラスの宇都宮綱紀、Fクラスの竹中風太と竹中雷華に英語W勝負を申し込みます」 早速勝負を挑まれた。向こうとしては早めに潰しておきたい相手なんだな。 大友(B)「綱紀、この大友麟道が助太刀しましょう」 宇都宮「ああ、頼む」 その後ろから、さらにもう一人Bクラスの男子が召喚を始めた。 立花(B)「では、この立花茂晴も助太刀を――」 大友「茂晴、お前は黙れ。そして手伝え」 立花「……わかった」 Bクラスの男子がもう一人。Bクラスは十八人しか来てないのに二対三なんてよっぽど警戒されてるなぁ。妖魔の一対五よりはましだけど。っていうか力関係は大友君>立花君、なんだなぁ。 『試獣召喚!』 喚声に応えて魔法陣が展開。おなじみの試験召喚獣が顔を出した。 敵の三体は宇都宮君は槍、大友君は刀、立花君は大刀をそれぞれ構え、俺は三節棍、そして雷華は、 風太「素手?」 雷華「よう見てみい。篭手を着けとるやろ」 風太「うん。しかもアクセサリーしてるし。俺のもだけど」 雷華「今回、英語はバッチリやったからね」 宇都宮「ということは……」 大友「僕達で勝てるわけがないじゃないか!茂晴、お前が何とかしろ!」 立花「無理!あんなの相手に勝てるわけがない!」 大友「この役立たず!」 立花「そこまでいうんならお前がやれよ、麟道!」 大友「だが断る!」 立花「断んな!」 宇都宮「喧嘩してる場合か!麟道に茂晴!三人掛かりで行くぞ!」 大友、立花「「……わかった」」 ぎゃあぎゃあと言い争う大友君と立花君を説き伏せる宇都宮君。大変そうだなぁ……。 風太「それじゃ行くよ」 俺が右足を一歩後ろに下げる。その動きに合わせて俺の召喚獣が右足に風を纏う。 立花「ちょっと待て!」 宇都宮「麟道に茂晴!とにかく避けるぞ!」 大げさなくらい横に跳ぶ敵三人の召喚獣。その直後、俺の召喚獣の腕輪が光を発した。 風太「鎌鼬壱式・飛龍旋刃波!」 ヒュン、スパン 立花、大友「「ぐあっ!」」 宇都宮「麟道!茂晴!」 回し蹴りの要領で足を払うと、風の刃が逃げ遅れた敵の二体の召喚獣を真っ二つにした。 『Fクラス 竹中風太&竹中雷華 VS Bクラス 宇都宮綱紀&大友麟道&立花茂晴 英語W 652点&542点 VS 187点&175点&169点』 そういえば腕輪をしている、ということは特殊能力を持っている、ってことだったな。確か400点以上を取れば、その人の召喚獣は特殊能力を使える腕輪を装備して出てくるってパンフレットの書いてあったな。どんな特殊能力が付くかは人によって違うらしいけど。 雷華「ほな、ウチも行くで。轟雷壱式・猛虎天雷!」 ゴロゴロ、ピシャン! 宇都宮「ぐああっ!」 雷華が天井に手を翳すと、その動きに合わせて雷華の召喚獣が天井に手を翳す。 雷華の召喚獣の腕輪が光を発し、敵の真上に小さな雷雲ができる。 その直後、雷華が翳した手を振り降ろすと、雷華の召喚獣も手を振り降ろして、さっきの雷雲から雷が敵の召喚獣に直撃。決着は一瞬でついた。 B生徒「い、岩下と菊入が戦死したぞ!」 B生徒「こっちは宇都宮達が一撃でやられた!」 B生徒「こっちは山岸達が一撃だ!」 B生徒「なんだと!?そんなバカな!」 B生徒「姫路瑞希に竹中兄妹に闇崎妖魔、噂以上に危険な相手だ!」 Bクラスの残り八人に驚愕の表情が浮かんでる。無理もないよ。俺らが強いだけだからね。 姫路「み、皆さん、頑張ってください!」 姫路さんの指揮官らしくない指示。でもこれはこれで効果絶大だよ。 F生徒「やったるでぇーっ!」 F生徒「姫路さんサイコーッ!」 ほら、信者がまた増えた。 明久「姫路さん、とりあえず下がって。風太達も」 姫路「あ、はい」 風太「りょうか〜い」 雷華「うん、了解や」 妖魔「わかった」 敵の士気を挫いたみたいだから、明久に言われて一旦下がる。ま、俺ら抜きでも何とかなるし。それに特殊能力は威力の分だけ消耗も激しいからね。 それに相手の前線部隊崩壊は時間の問題だろうし。 B生徒「中堅部隊と入れ替わりながら後退!戦死だけはするな!」 そんな相手の指示が聞こえる。とりあえず明久の狙いは成功したみたい。相手を徐々に下がらせて行って、目的のBクラス教室に釘付けにするくらいで今日の戦闘は終了するだろうね。明久の計算通りにうまくいくのも俺らの実力のおかげだよ。感謝してほしい。 秀吉「明久、風太、雷華、妖魔、ワシらは教室に戻るぞ」 明久「ん?なんで?」 戦況を眺めていた俺や明久のところに秀吉がやってきた。 戻る?本陣で何かあったのかな? 秀吉「Bクラスの代表じゃが……」 明久「うん」 秀吉「あの根本らしい」 明久「根本って、根本恭二?」 秀吉「うむ」 雷華「秀吉君、その根本っちゅう人はそんなに有名なん?」 秀吉「うむ。根本恭二という男はとにかく評判が悪くてのう、噂ではカンニングの常連だとか。目的の為には手段を選ばぬらしく、曰く、『球技大会で相手チームに一服盛った』とか『喧嘩に刃物な当然(デフォルト)装備』とかの。さすがにそこまで卑怯だとは思わぬが、用心に越したことはないからのう」 雷華「へ〜……、そうやったんか……」 明久「なるほど。戻っておいたほうが良さそうだね」 秀吉「雄二に何かがあるとは思えんが、念の為にの」 明久が姫路さんに一言報告して、俺らは明久や秀吉と一緒に何人かを連れて教室へと引き返した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |