風神と舞姫と漆黒の狼 7 福原「さて、それでは自己紹介の続きをお願いします」 壊れた教卓を替えて(それでもボロだけど)、気を取り直してHRが再開される。 須川「えー、須川亮です。趣味は――」 特に何も起こらずまた淡々とした自己紹介の時間が流れる。ん?俺の前の人が立ち上がったぞ?って妖魔君か。 妖魔「闇崎妖魔です。武器で何か困った人は気軽に来てね」 あはは…。さらりと物騒な事言ってるね。っと、次は俺の番か。 風太「俺の名前は竹中風太。趣味はサッカー、特技は笛吹とジークンドー、転入前は愛知県にある名皇学院という学校に通っていました」 ざわっ F生徒『名皇だと!?』 F生徒『聞いたことあるぞ。あの東海地区最強といわれる男子サッカー部と女子サッカー部を擁し、日本有数の名門校と言われるあの名皇か!?』 F生徒『ああ、間違いない。ヤツの名前も聞いたことあるぞ。その名皇男子サッカー部のエースストライカー、『東海の風神』こと竹中風太。まさかヤツがそうだというのか!?』 F生徒『確か妹の雷華は名皇女子サッカー部のエースストライカーで『雷の舞姫』って呼ばれてたな。あと可愛い』 はは。驚いてる驚いてる。ってか今さらりと雷華にラブコール送ったヤツ、今日が貴様の命日だ。 風太「――と、いうわけなので、今年一年間よろしく!(ニコッ)」 どうだ!この俺のスマイルは! F生徒『か、可愛い…///』 ええっ!?何でそこで皆して顔を赤くするの!?俺、男なんだけど!!吉井君に至っては、 明久『アイツも男、アイツも男…』 と木下君の自己紹介の時と同じように何か呟いてるし…。 美波「むぅ…、あの笑顔は反則よ…」 姫路「ズルいです。竹中君…」 美波、姫路「「けど、絶対負けない(ません)!!」」 なぜか女子からは対抗意識を持たれてるし。 雷華「次はウチやな」 そう言って雷華が立ち上がる。 雷華「ウチの名前は竹中雷華や。竹中風太と同じく名皇学院から転入して来ました。竹中風太とは双子の兄妹でウチが妹や。趣味はサッカー、特技はバイオリンと合気道や。よろしゅうな(ニコッ)」 F生徒『『よろしくお願いしまああーーーす!!!』』 雷華が自己紹介した途端にクラスメイトから上がった声。うちの妹に手を出したら絶対にぶちのめしてやる。 美波「うう…、兄妹揃ってズルいわよ…」 姫路「あの笑顔は反則です…」 またもや女子から目の敵にされてるなぁ…。 福原「坂本君、キミが自己紹介最後の一人ですよ」 雄二「了解」 先生に呼ばれて雄二君が席を立つ。ゆっくりと教壇に歩み寄るその姿にはさっきまでのふざけた雰囲気は見られず、クラスの代表として相応しい貫禄を身に纏っているように思えた。 福原「坂本君はFクラスのクラス代表でしたよね?」 福原先生に問われ、鷹揚にうなずく雄二君。 別にクラス代表といっても、学年で最低レベルの成績を修めた生徒や振り分け試験以降の転入生達が集められるFクラスの話。何の自慢にもならないどころか恥になりかねない。 それにも関わらず、雄二君は自信に満ちた表情で教壇に上がり、俺達の方に向き直った。 雄二「Fクラス代表の坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも、好きなように呼んでくれ」 クラスメイトから大して注目されるわけでもない。Fクラスというバカの集まりの中で比較的成績が良かったというだけの生徒。俺や他の人達から見れば五十歩百歩といった存在。 雄二「さて、皆に一つ聞きたい」 そんな生徒が、ゆっくりと、全員の目を見るように告げる。間の取り方が上手いせいか、全員の視線はすぐに雄二君に向けられるようになった。皆の様子を確認した後、雄二君の視線は教室内の各所に移りだす。 かび臭い教室。 古く汚れた座布団。 薄汚れた卓袱台。 つられて俺達も雄二君の視線を追い、それらの備品を順番に眺めていった。 雄二「Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが――」 一呼吸おいて、静かに告げる。 雄二「――不満はないか?」 F生徒『『『大ありじゃぁっ!!!』』』 ワオ、二年F組の生徒全員から魂の叫びが上がったよ。 雄二「だろう?俺だってこの現状には大いに不満だ。代表として問題意識を抱いている」 F生徒『そうだそうだ!』F生徒『いくら学費が安いからと言って、この設備はあんまりだ!改善を要求する!』 妖魔「そうだよ。情報を盗めないじゃないか」 F生徒『そもそもAクラスだって同じ学費だろ?あまりに差が大きすぎる!』 堰を切ったかのように次々とあがる不満の声。 雄二「みんなの意見はもっともだ。そこで」 級友たちの反応に満足したのか、自信に溢れた顔に不敵な笑みを浮かべて、 雄二「これは代表としての提案だが――」 これから戦友となる仲間たちに野生味満点の八重歯を見せ、 雄二「――FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う」 Fクラス代表、坂本雄二は戦争の引き金を引いた。 [*前へ] [戻る] |