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風神と舞姫と漆黒の狼
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雄二「んで、話って?」
HR中だけあって廊下に人影はない。ここなら安心して話ができそうだ。
明久「この教室についてなんだけど…」
この教室というのは言うまでもなくFクラスのことだ。
雄二「Fクラスか。想像以上に酷いもんだな」
風太「雄二君もそう思うよね?」
雄二「もちろんだ」
明久「Aクラスの設備は見た?」
雄二「ああ。凄かったな。あんな教室は他に見たことがない」
一方はチョークすらないひび割れた黒板でもう一方は値段もわからないほど立派なプラズマディスプレイ。これに不満のない人間はいないはず。
明久「そこで僕達からの提案。せっかく二年生になったんだし、『試召戦争』をやってみない?」
雄二「戦争、だと?」
明久「うん。しかもAクラス相手に」
雄二「……何が目的だ」
急に雄二君の目が細くなる。警戒されてるなぁ。
明久「いや、だってあまりにも酷い設備だから、ねえ竹中君」
風太「うん。あんな酷い設備、勘弁してほしいよ」
雄二「嘘をつくな。全く勉強に興味のないお前が今更勉強用の設備なんかの為に戦争を起こすなんて、そんなことはありえないだろうが。それと竹中風太、といったか?お前なら設備は名皇で十分だろ」
ぅぐっ。なんか妙に勘が良いな。ってか何で知ってんの!?
雄二「何故知ってるのか、って顔をしているな。テレビで観てたぞ。今年の元旦にやってた全国高校サッカー選手権、通称『インフィニティロード』決勝の名皇学院対帝国学園戦を。凄かったぞ。ハットトリックの2アシスト、更には帝国のディフェンスを惑わせるボール捌き、流石『東海の風神』と呼ばれるだけはあるな」
風太「いやあ、それほどでも…///」
雄二君も観てたのか、あの試合。ってかあんまり褒められると照れるなぁ…。
明久「そ、そんなことないよ。興味がなければこんな学校に来るわけが――」
雄二「お前がこの学校を選んだのは『試験校だからこその学費の安さ』が理由だろ?竹中の方は両親の仕事の都合か?」
やば、見抜かれた。ってか吉井君は雄二君にこの学校に来ている理由を話してたのかな?
明久、風太「「あー、えーっと、それは、その……」」
どうしよう。もっともらしい言い訳が思いつかない。
雄二「……姫路の為、か?」
ビクッ!
吉井君と二人、図星を突かれて思わず背筋が伸びる。
明久、風太「「ど、どうしてそれを!?」」
雄二「本当にお前らは単純だな。カマをかけるとすぐに引っかかる」
雄二君の目から警戒の色が消えて、代わりに楽しげな笑みが浮かぶ。くそっ!俺としたことが不覚にもハメられた!
明久、風太「「べ、別にそんな理由じゃ――」」
雄二「はいはい。今更言い訳は必要ないからな」
明久、風太「「だから、本当に違うってば!」」
ちぃっ!全然取り合ってくれない!
雄二「気にするな。お前らに言われるまでもなく、俺自身Aクラス相手に試召戦争をやろうと思っていたところだ」
明久「え?どうして?雄二だって全然勉強なんてしてないよね?」
だからこそ彼も吉井君と同じように設備になんて興味はない筈だけど。
雄二「世の中学力が全てじゃないって、そんな証明をしてみたくてな」
風太「へ〜、そうかぁ…」
明久「???」
雄二「それに、Aクラスに勝つ作戦も思いついたし――おっと、先生が戻ってきた。教室に入るぞ」
明久「あ、うん」
風太「あ、待ってよ二人共!」
雄二君に促されるまま、吉井君は教室に戻り、俺もその後についていった。

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