それから数日が経ち、何事もなく平穏な日々を過ごしていた真雪。
慎哉がどう処理したのか、真雪の叔父達が死んだと言うニュースはなく。
ただ、親子で失踪と新聞に小さく記事が載った。
「九条の仕事は信頼出来るんだが……な」
「そうですね」
凛と榊は、記事を見ながらため息に似た音で笑った。
その記事を横で覗き見ながら、真雪は榊に聞いてみる。
「榊さん、慎哉くんの仕事はどういった事を?」
「九条の仕事ですか?それは……、あまり綺麗な話ではないのですが」
榊は眉をひそめ困り顔で、話したがらない様子でいる。
なおも食い下がる真雪は頭を傾け、榊の顔を見ている。
「全ては話せませんが、少しだけですよ」
「はい」
「九条は仕事現場を徹底的に掃除してくれます。それは綺麗に、その部屋では何もなかったと思わせるくらいにです。後は……、これで許してください」
瞼を閉じ、しかめた表情の榊に、真雪は気持ちを引っ込めるしか出来なかった。
「無理やり聞いてごめんなさい」
「いえ、良いんですけどね。ただ、真雪に知らないで良い事もあるんです。私達の生きる、黒い世界は似合いませんから」
眉尻を下げる真雪は、お茶を入れてきますと言って席を立った。
榊達の会話を静かに聞いていた凛が呟く。
「しかし、真雪は度胸がある。下手な男よりずっと男前だ」
「なぜですか?」
小さく笑う榊はキッチンに居る真雪を横目で見た。
「真雪の叔父を殺った時、真雪は現場にいたんだ」
「本当ですか?どう言うことです、詳しく話してください」
凛は真雪に聞こえぬよう、小声で榊にあの時の事を語った。