ゆっくりとした動作で動く榊の手はエプロンの紐を引いた。身体を軽く締め付けていた布がだらしなく揺れたと思えば、使用目的を誤った使い方をされる。 真雪の両手は後ろに回され、今まで見につけていたモノによって腕だけが拘束された。 「別に……、凛さんにそんな事……。私は皆さんの事っ」 「今は……、真雪の口から凛の名前は聞きたくありません。ましてそんな上辺だけの言葉は欲しくありません」 榊は己の首元へ手をやりネクタイを緩め、皺のないシャツから離す。 緩く笑みを見せる榊はポケットからハンカチを取り出し、真雪の口へと押し込んだ。 舌で押し返そうとする間もなく榊は外したネクタイを口に噛ませた。 「苦しいかもしれませんが、少し私の言う事を聞いてもらいますね」 榊の背にあるダイニングテーブルへ真雪が誘われ、よろめくとそこへ押し倒された。 揺れる瞳は榊の突然の行いにいまだ戸惑う。 「どうしてでしょうね。うちの住人は皆真雪に惹かれています。それぞれが、それぞれに負けないほど」 テーブルに片手を付き、真雪を見下ろす榊はワイシャツのボタンを一つ二つと外す。 軽く肌蹴た胸元からは引き締まった男の身体を垣間見せた。 それを目の当たりにした真雪の顔は見る見るうちに赤く染まった。 真雪は一瞬でも見惚れてしまった事を覚られないよう、苦しい体勢に浮いていた足を竦めて熱くなる顔を隠すように横に向く。 「そこまで怖がらなくても良いんじゃないですか?……私だってそれなりに傷つきますよ」 「んん、ううんっ、ううっ」 榊の問い掛けに呻きながら首を横に振る。 違う、怖がってるのではないと。 しかし言葉にならない声は届く事はなく、榊は真雪の身体を正面へと向けた。 木製のテーブルに真雪の髪はしなやかに広がり、赤らむ顔を榊の目の前に晒す事となった。 「ああ、それでは腕が痛いですね」 縛られたネクタイからはみ出た唇の輪郭をなぞり、榊は笑みを見せた。 真雪の表情を窺いながら両の足首を持ち、テーブルの上へ開脚させて乗せる。 「腰を浮かせてみてください、少しは腕が楽になりますよ」 足に纏わりついていたチェックのロングスカートを肌から剥ぐように、榊の手が滑り込んだ。 榊の指が線を描くように内股を掠め、腰を掬うように手が回る。 自分の意思とは相反し浮き上がる腰は力が思うように入らず、真雪は露になった太股に感じる外気に身を震わせゆらゆらと揺れながらその姿を保った。 その様は自分を誘うようでいて榊は嬉しく思え、そして自然と口角が上がるのがわかった。 「いい子にはご褒美をあげなくてはいけませんね。真雪の中を、私で満たしてあげましょう」 耳元で囁かれる甘言に、快楽を求める疼きが背中を這い上がる。 「う……んんっ」 足を覆う布が肌を掠めるたび、真雪は浮かせた腰をビクビクと震わせた。 開いた両足の間には榊の身体が割り入っていて閉じる事は出来ず、自らが榊を迎い入れる恰好をする事に恥かしさを感じながらも、喘ぎに似た声を漏らした。 「あまり騒ぐと誰かが来ますよ。しかし……ハンカチで押し殺された声も、これはこれでそそられますね」 背中で身体を支える真雪は与えられる辱めを顔を横向く事で逃れようとする。 しかし好都合とばかりに榊の唇は食むように真雪の首筋を辿りながら指先で髪を梳いた。 触れられる場所全てが性感帯になったように、触れられる髪すらも痺れを伴う。 太股から這い登る指は下着に守られた秘部へと到達する。 すでに湿気を帯びていた布に、榊はほくそ笑んだ。 「まだまだこれからと言うのに、もう反応を示しているんですね」 知られたくなかった身体の変化に、真雪の顔が益々熱くなる。 そんな真雪を見て榊は常に携帯しているナイフを取り出した。 「少しの間だけ動かないでくださいね、真雪を傷つけたくありませんから」 そう言った榊は下着を指に引っ掛けるとナイフを差し入れた。 切れ味の良いナイフは細い音を立てて下着をただの布へと変える。 ただそこにあるだけになった下着を抜き取れば、曝け出された下半身。 |