「子猫ちゃ〜ん、助けて〜」 「猫なで声を出しても無駄だ、遺言があれば聞いてやる」 「凛が怖いー」 ある意味、真雪にも視線が向けられているのと同じなので、凍てつく凛の視線に真雪は硬直してしまっていた。 それを見た榊は大きくため息を吐く。 「皆、真雪が怖がっています。九条をからかうのはもうやめましょう」 「榊〜、ありがとー」 慎哉の顔が歪みホッと安堵の表情になる。 和泉、凛の両名は面白くなさそうな顔で持っていた得物を元に戻す。 しかしまだ怒りが冷めやらないライカの表情は緩んでいない。 「次はないからね」 ライカの声に、真雪の影から慎哉は口の端を上げて笑い、はいはいと軽く答えた。 慎哉の態度に納得は出来ないが、仕方なしとばかりにライカは怒りを消し去った。 「もー、流石の俺でもここの住人四人も相手にできねーって。あー、怖かった」 「とばっちりを受けた私の方が怖かったですよ、慎哉くん」 未だ真雪の後ろにいる慎哉の方に振り向き、小さく怒った。 「あははー、ごめんね〜。ここの住人凶暴だからさー」 「何しに来たんだよ、九条。用もないのに……って仕事の話?」 和泉は堂々とした格好でソファーに座り、凛にお茶を催促する。 それを聞いた凛が部屋のミニキッチンに目をやる。 「カップが足りないな……」 「凛さん、私も手伝います」 「美味しいお茶の入れ方でも教えてやるか」 「はい!」 二人が部屋から出て行く様子を見ていた慎哉は、意味ありげな笑いを浮かべていた。 「なぁ、あの二人なんか仲良くね?」 「凛は真雪にとって、母親に近い存在らしいですよ」 「凛が母親!?……笑える、想像できねぇ」 慎哉は蹲り、出て行ったばかりの凛のばれないよう、声を抑えて笑っていた。 |