「りーん。僕ね栄養ドリンク作ったんだけど、ちょっと飲んでみてよ」
凛は溜まっていた郵便物を片付けようとしていると、ライカが左手に褐色の小瓶を持ってノックと共に部屋に入って来た。
表立っての穏やかな表情に好奇心を隠しながら、それを凛に差し出した。
「……人体実験か」
「違うよ!人聞き悪いな〜。凛、最近疲れてるみたいだからさ、凛のために作ったのになぁ」
さもガッカリだと言わんばかりにしゃがみ込んだライカは、上目遣いで凛を見上げた。
眉をしかめる凛は、そんなライカを訝しげに見る。
確かに最近忙しく食事の準備すら真雪に任せっぱなしにしていたほどで、疲れはピークに達していた。
引く様子のないライカに仕方ないとばかりに、差し出されていた小瓶を素っ気無く受け取った。
「わかった、後で飲む」
「駄目、今飲んでみてー」
小瓶を受け取るや否や、明るい表情のライカはわくわくした様子で飲む事を強要する。
飲まずにこのまま邪魔されるくらいならと、凛は蓋を開けて一気に飲み干した。
「……どう?身体に変化ない?」
「いや、特に変わらないが」
それから十分くらいの間、ライカは同じ事を何度も凛に確認するが、やはり毎回答えは同じで。
明らかに様子がおかしいと感じた凛は、ライカを強くと睨んだ。
「ライカ、本当に人体実験のつもりだったんだな」
「ちぇー、だって凛が一番効果が出難いだろうから、効果覿面の媚薬作るデータ取るのに良いかなぁって。……でも失敗かな〜。あ、身体には無害だから安心してね」
「ライカが試せば良いだろう」
「僕に何かあったら大変だよ。……まぁ、僕には効かないだろうしね。無意味な事をするほど暇じゃないしー」
ライカは小瓶を持ち、軽い足取りで凛の部屋を後にした。
「全く、俺はマウスじゃないんだ。……しかし、媚薬?」
特に変わった様子が感じられない凛は特に気にもせず、今まで溜まっていた手紙を広げて読み始めた。