「ん?仕事の報告、無事完了したってな」
「じゃあこれで仕事は終わりだよね。バイバイ九条ー」
にこやかな笑顔で手を振るライカに、慎哉は引きつった顔で笑っている。
「どーしてここの住人は俺をそんなに帰したいわけ!?ついさっきまで仕事してた俺に、労いの言葉はないのか!?」
悲観にくれる慎哉がソファーで突っ伏し、ライカが冷ややかな視線を送っていると、ふと視線を感じドアに目を向けた。
「……おはよう、ございます」
静かに開けられたドアから、真雪が遠慮がちに顔を出していた。
「おはよー真雪ちゃん」
ライカを皮切りに、住人達は口々に朝の挨拶をする。
真雪はいつもと変わらぬ皆に安心感を覚え微笑んだ。
「子猫ちゃんの寝起きの顔も堪らないね〜、可愛いー」
満面の笑みの慎哉は真雪を眺めていると、和泉が睨みつけた。
「お前は今すぐ帰れ。ハウス!」
「俺は犬じゃねぇよ!」
「そうだよ、犬の方が可愛いよー。九条なんて可愛くないもん」
突然始まった言い争いがどうやれば止まるのか、真雪は榊に視線で助けを求めた。
「ほら、いい加減九条で遊ぶのは止めて。真雪が困っていますよ」
「榊、こいつらの躾は間違っているぞ」
「私はそうは思いませんが。何かいけませんでしたか?」
拗ねる慎哉に真雪は何も言えず、凛に朝食を促されテーブルについた。
「凛さん、今日は寝ててお手伝い出来なくて、ごめんなさい」
「そんな事考えなくても良い。早く食え、腹減っただろう?」
「あ……はい」
実の所、完全なる寝起きで空腹感は全くなく、しかし凛が折角出してくれた料理を無下に断ることも出来ない真雪は少しずつ食べ始めた。