「これが、あの日に起きた事です」
涙を零しながら全てを話した真雪に、榊は優しく頭を撫でていた。
「ありがとう、全部話してくれて。……辛かったですね」
榊は真雪を胸に寄せ、穏やかな声で慰めた。
「しかしこれでわかりました、本当の黒幕が誰なのか。柳川建設はただの傀儡(かいらい)、御堂尊が全てを操っていたのかもしれませんね。柳川建設や木嶋組にここまで頭の切れるような行動を起こせる人はいませんし、そう考えると辻褄が全て合致します。まだ確定ではありませんが、九割方間違いではありません」
「でも何のために!何のために……パパとママを尊さんがっ」
自分では事実かどうかわからない榊の言葉に、頭を撫でているその人を泣きながら責める。
取り乱す真雪を止めもせず、榊は黙ってそれを受け止めていた。
「どうして……、どうして……、殺されなくちゃいけなかったの?」
辛い過去を吐露した真雪は極度の疲労と精神的疲れから、泣きながらそのまま眠りについてしまった。
真雪が目覚めると榊の部屋のベッドで、一人で寝ていた事に気付く。
泣きすぎたせいなのか、頭が重く、瞼が熱を持っているように感じた。
横になっていた身体を起こし、無関係な榊に八つ当たりをしてしまった事を思い出す。
謝りたいと考えたが榊はそこには居らず、ベッドの上に広がるベージュの天井を見ながら榊との先ほどの会話を振り返った。
まさか身内が、まして従兄弟が……と、答えの出せない謎を心の中でいつまでも呟いていた。
「尊さんに聞いてみよう。怖いけど……真相が知りたい」
真雪は自室に戻り、僅かに現金が入ってる財布と携帯を持つ。
尊に会った所でどうなるかなどと細かい事は気にもせず、足の進むままに真雪は外に駆け出して行った。