次の日の昼食後、真雪は榊の部屋に呼び出された。
真雪の両親を死に至らしめた人を探るため、詳しい話を知るために。
ソファに促され腰を落ち着けると、温かな紅茶と小さな砂糖菓子を出され、香しい紅茶の香りに緊張を解きほぐされる。
「真雪は御堂建設の内情を、どこまで知っていますか?」
真雪は紅茶に口をつけ、犯人への燃え上がるような怒りを静める。
「……あまりわかりません。父は仕事の話を家庭に持ってきたくなかったらしくて、仕事の事はほとんど話してませんでした」
「そうですか。では真雪の家に出入りしていた社員はいますか?親族とか」
「はい、数人の役員の方が来ていました。よく来る人と、たまにしか来ない人といましたけど。親戚は……父の弟やその息子にあたる私の従兄弟がたまに」
榊に聞かれた事に対し自分の知っている範囲の事を伝えるが、今更ながら大した話を出来ない真雪は、自分自身に腹立たしさを覚える。
両親が死んだ時にもっと疑問をぶつけていれば、何も知らないままではいなかったかもしれない。
後悔の念だけが、真雪の思考を支配する。
「……真雪にとって憎い仇になる人の情報があります。少々酷な話になるかもしれませんが……聞く聞かないは真雪の自由ですよ」
そんな真雪の心象風景を知ってか知らずか、榊は真雪に一筋の光明をちらつかせた。
榊はいつもの優しい微笑みで、真雪の返事を待つ。
酷な話と言われて聞きたがる人はいないだろうが、両親を死に至らしめた人間の事であれば、それは全く苦とは思えない。
どんな些細な情報でも、それが仇の手がかりとなるならば、それは喉から手が出るほど欲しいとさえ思えた。
「……聞きたいです。その真実がどんなものでも、私は全て受け止める覚悟は出来ています」
「そうですか。わかりました、全てお話しましょう」
真雪は不安と息を一緒に呑み込み、膝の上で拳を固く握ってその時を待ち構えた。