「凛さん……」 「何だ?」 「もう少し……優しく、してください。身体が……持ちそうにありません」 赤い顔の真雪は凛に背を向け横に転がると、シルクケットに身体を包み込んだ。 「真雪がそうさせたんだ、仕方ないだろう?それに真雪も、もう少し優しくしてくれるとありがたいんだが」 「もっと余裕のある人だと思ってたんですけど……。それに、私が凛さんに何かしましたか?」 何の事だかわからない真雪は凛に身体を向け、眉をしかめる。 その姿に思わず笑みを零し、わからないならそれで良い……と凛は真雪を自分に寄せ耳元で囁いた。 「真雪以外になら何でも余裕でいられるんだがな、真雪が関わっていると、どうも俺が俺らしくいられない。……余裕で大人ぶった俺が良いのか?」 「そんな事は……ないですけど」 「これでも平常心の塊のはずだったんだが、真雪が俺の平常心を壊したんだ。責任は取ってもらうぞ?」 真雪は凛の唇を頬に感じ、その言葉に小さく頷いた。 頬を緩めた凛は起き上がり端麗な横顔を見せて、バスルームへと続くドアノブを掴み立ち止まった。 「これからシャワー浴びるが、一緒に行くか?」 「い、いいえ、結構です!」 焦る真雪に小さく笑い声を漏らす凛は、バスルームへと入って行った。 それを見やった真雪はいそいそと自分の服を着込み、凛のいるバスルームをノックした。 「あの……、凛さん」 シャワーの音に掻き消されているのか、真雪の呼びかけに応答しない。 真雪はソッとドアを開け、もう一度凛を呼んだ。 「凛さん」 「真雪?どうした」 シャワーの音が止み、凛がバスルームから出てきそうな気配をみせると、真雪は咄嗟に後ろに振り返り背中を向けた。 「あの……、部屋に戻りますね」 「ああ、わかった」 「それで……あの……」 凛は濡れた髪をタオルでぞんざいに拭き上げ、目にかかる前髪を掻き上げてバスローブを羽織った。 「明日は朝食の手伝いもしなくて良い、今日はゆっくり寝てろ」 凛は大きな掌で真雪の頭を撫で、バスルームを出ようとすると真雪は俯いたまま動こうとしない。 「どうした」 「凛さん……、あの、もう一回だけ……抱き締めて……もらえますか?」 真雪はありったけの勇気を振り絞り、赤くなっているであろう顔を俯かせて、凛に見せようとしない。 「真雪、俺を見ろ」 強い口調の凛の言葉に、真雪は視線を逸らしたまま顔を上げた。 逸らした先にはバスローブに包まれた逞しい胸が肌蹴けられていて、真雪は目のやり場に困ってしまう。 「俺を見ろと言ったんだ」 凛は真雪の顎先を長い指で持ち上げ、見るように促す。 半分命令に近いような強い行動に、真雪はゆっくりと凛に目を向けた。 視線が絡まると同時に唇を重ね、真雪の身体を優しく抱き締めた。 「また明日な」 「は……い、おやすみなさい」 |