凛の部屋に着くまでの、僅かな時間。 誰にも会う事なく抱き上げられたまま、真雪は部屋に入って行った。 静かにドアが閉められると、真雪は凛の肩に置いた手が緊張からか強く掴んでしまった。 立ち止まらない凛はベッドまで来ると漸く真雪を下ろし、ゆっくりと押し倒した。 「怖いか?」 「怖くない……です」 凛はシーツに広がる真雪の髪を撫で、ほんの少しだけ不安げな顔をする真雪を見つめた。 「そうか」 凛が呟いたのを皮切りに、真雪の肌に唇が舞い降りる。 時折軋むスプリングは、凛が体勢を徐々に真雪の身体に覆い被さってきたため。 「……ん、ぁ……、ふ……ぅ」 大きな左手は真雪の頬を包み、右手は真雪の手を取り指を絡めシーツへと優しく縫い付けた。 媚薬に冒された時の荒々しいキスとは違い、真雪を気遣うような強弱をつけたキスは真雪の緊張を解きほぐすのに時間はかからなかった。 「真雪からは良い香りがする」 細められた目は真雪を捉えている。 逃さないとばかりにその瞳から逸らせないまま。 「髪、肌、……この唇に、俺は惑わされる」 凛は髪から頬に手を滑らせ、唇で指を止めた。 赤い唇をなぞり、その柔らかな感触を確かめるようにゆっくりと動かす。 顎に手を添え、凛は触れるだけのキスをした。 「ここまで来て止められないからな。嫌だなんて言うなよ?」 妖艶さを秘めた笑みに、真雪の身体は電気が走ったような感覚に見舞われる。 ビリビリした甘い刺激が指先に伝わり、絡められた手に力がこもった。 「……言いません。私も、止めて欲しくないです」 凜は一瞬驚いた表情になるが、すぐに口元を緩ませ、目が妖しく細められた。 「嬉しい事を言う」 凛は真雪の首筋に顔を埋め、絡めていた手を外してワンピースの裾から上へと滑り込ませた。 その時真雪の足が強張るのがわかり、凛は首筋に唇を押し当てながら囁く。 「慈しんで大事にしてやる。そんなに緊張するな」 「は……い、ぁ……」 首筋に凛の熱い息を感じ、真雪は思わず声を漏らす。 自分でも恥ずかしいような甘い声に、口元を手で覆った。 |