「達したばかりの真雪には……、少しキツイかもしれませんね」
「あん……、あ、や……、榊……さ……アッ!ん……はぁンンッ!」
真雪の片足を肩にかけ榊は結合を深くし、互いの熱を共有する。
水音が耳元で聞こえるかのような錯覚を覚え、真雪は恥かしさに悶えながらも、また榊の動きによって高みへと誘われた。
「真雪、あなたを愛しています。ここに連れて来たのも、あなたに私の事をもっと知ってもらいたかったから……」
耳元で囁かれる言葉に真雪は意識を掻き乱され、榊の身体を強く抱きしめた。
自分を拾ってくれ、悪夢から救ってくれた榊に愛されていると思うと、真雪は抱きしめずにいられなかった。
「榊さ……」
もっと近くに榊を感じていたくて、真雪は自分から口付けを求めた。
「……真雪」
優しく落とされた唇は真雪の唇を食むと、舌を絡め合わせゆっくりと深い口付けへと変わっていった。
最初は冷たく感じた皮のシートが今では自分の熱で熱くなっていて、じんわりとした汗まで肌に浮かび上がってくる。
真雪にはそれすらも、いやらしく思えてしまい身も心も奥底から蕩けそうになってしまう。
「榊……さ……ん…も、……ダ……メッ!ん……あ、はぁ……あん!」
「イキますか……?」
「は……い、ぁ……、も、あ、そこ……やぁッ!だ……め……アアッ!!ぁン――ッ!」
「は、真雪、……は……ッ――」
榊は白濁した液を真雪の腹部に吐き出した。
ぐったりとシートに身を沈ませた真雪の額に唇を落とし、真雪の額に自分の額をくっつけ荒げる息を落ち着かせた。
「……疲れたでしょう?少し休んでいてください」
「は……い……」
力なく返事をした真雪に目を細め微笑んだ榊は、汚れた真雪の身体を拭き、服を着せた。
真雪は暫くぼんやりとその甘い余韻に浸っていると、榊が助手席から運転席へと場所を移していた。
エンジンがかかると、静かに車は動き出した。
「真雪、身体が疲れているでしょうから、寝てても良いんですよ?」
起き上がる真雪に、榊は前を見ながらクスリと微笑んだ。
「いえ……、起きてます。榊さんが運転してるのに、もし私が寝たら、榊さんまで眠たくなっちゃいますよ?」
「そうですか?じゃあ、起きて私の話し相手になっててもらえますか?」
「はい」
来た道を戻り、木々の間からはさっきまで見ていた夜景がチラチラと見え隠れする。
真雪はその車窓から見える風景を、先ほどとは違う面持ちで見ていた。
“私の事をもっと知ってもらいたかった”
そんな言葉が風景と重なり、榊の特別になれたんだと思えば自然と顔が綻ぶ。
「どうしたんですか?何か面白い物でも見えましたか?」
「いえ、何でもないです」
悟られては恥かしく、真雪は手を振って否定した。
見透かされたのか、ほくそ笑む榊は意味ありげに「そうですか?」と答えた。
少しずつ見慣れた建物や通りが、車窓を賑し始めた頃。
「いつも遠慮ばかりしてないで、たまには甘えてください。真雪を支えるくらいなら、何の苦にもなりません」
「これでも十分甘えていますよ」
「甘えているようには見えませんよ?それとも、心から甘えられないくらい、私は頼りになりませんか?」
「そんな事ないです!」
力説する真雪に榊は一瞬目を丸くし、そして、いつものような優しい笑顔をみせた。
「じゃあもっと甘えてくださいね。私が満足するくらい」
榊が伸ばした手は、真雪の頭を優しく撫でた。
おまけ
夜が明けて朝になり、キッチンで朝食の準備をしていた時。
真雪は昨日の榊の言葉を思い出し、凛に聞いてみた。
「凛さん、榊さんって視力どれくらいなんですか?」
「確か、1.0じゃなかったか?でも……どうしたんだ?……急に視力なんて」
笑顔だった真雪の表情が凍りつく。
「……榊さんの眼鏡って」
「敵を欺くための一つだ。眼鏡かけてれば、榊は目が悪いって思うだろ?眼鏡を取れば、見えないと思う馬鹿もいるからな、だから普段からかけているんだ」
押し黙った真雪は顔を赤くして、凛のもとから走り去って行った。
行き先は、榊の部屋。