肩を抱き寄せられ背中に手を回されると、真雪の唇に温かな感触が伝わる。
景色に酔い、榊の内緒と言った時の表情に心を奪われ、真雪はその唇を受け止めた。
背の高い榊に、真雪の頭は真上を向いた状態で、榊からの熱いキスに身が蕩けそうになる。
「榊……さ……」
「真雪」
一瞬だけ離された唇は、また寄せられ、柔らかな舌が差し込まれる。
ねっとりと絡みつく舌は、優しく真雪を誘い込む。
どうして良いかわからない真雪は、榊のされるがままに必死についていこうとした。
たどたどしい舌の動きは男性経験がないのを彷彿とさせ、榊は思わず頬を緩ませる。
「真雪、無理はしなくて良いんですよ?」
「……ぁ、榊さ……」
足が揺らぐ真雪は自分の力だけでは立っていられず、榊の支えなしでは座り込んでしまいそうだ。
そんな真雪を見越したのか、榊は真雪の膝裏に手を滑らせ横抱きに抱えた。
熱い吐息を繰り返す真雪は、黙って榊の胸に顔を寄せた。
「……真雪、こんな場所ですいませんね。違う場所でゆっくりと……と言うわけにはならなくなりましたよ」
何の事かわからない真雪は赤くなった顔を榊に向けた。
「無意識なんでしょうが、罪作りですね」
助手席のドアを開け真雪をソッと座らせると、シートをゆっくりと倒した。
身を乗り出し、助手席に横になる真雪に重なる。
ゆっくりとした動作で眼鏡を外すと、榊の目が細められた。
初めて見るレンズ越しではない榊の瞳は、優しさを孕んで真雪を見ている。
「あの……榊さん……」
「こんな時に、お喋りは不要ですよ?」
笑みを見せ、引き寄せ合うように、どちらともなく瞳を閉じ唇を重ねた。
触れるだけのキスは、榊の柔らかな唇の感触を真雪に味合わせる。
時折離されては寄せられ、リップノイズが籠った狭い車内に響く。
榊の胸に当てられていた手をソッと剥し、指を絡めてシートに縫い付けた。
大きな手は真雪の手を覆い、榊の熱が真雪の手から入り込んでくる。
真雪の肩のすぐ上には榊が肘をつき、顔を榊の身体で包み込むような格好になる。
深いキスに真雪は息が苦しくなり、意識が朦朧としてくる。
甘い雰囲気に酔っているのか、榊のキスに酔っているのかわからなく、もう何も考えられなくなってしまう。