「真雪はこれからどうしたいですか?」
にこやかに笑う榊が口火を切る。
「え?これからって……」
「ですから、これからの事です。私達と一緒に住んでいきますか?」
今までは復讐のために力を貸してくれていた榊達にこれ以上甘えたくないが、やはり行く当てもない真雪には頼る人が榊達以外に居ない。
真雪は申し訳なさそうな顔で話し始める。
「あの……、榊さん達のお許しがあれば、出来ればここで……住まわせてもらいたい、です」
俯き加減に手を所在なさげにさせながら言う真雪は、ゆっくりと榊達に顔を上げて見せる。
「迷惑だとは思います。けど……、私は、皆さんと一緒にいて、安心出来て、とても楽しくて……。私、出来るだけお手伝いします。邪魔にならないようにします。だから」
真雪の訴えを見守るように、笑顔で真雪を見つめる男達がいて。
「では、これからもお願いしますね」
「花嫁修業もついでにしていくか?」
「これからも一緒だよ!」
「目を離したら何するかわかんねーしな、側に居とけよ?」
「子猫ちゃーん!」
「え?」
皆からの温かい言葉に涙が零れそうになっていた真雪は、ここに居ない人の声が聞こえ涙が一瞬にして引っ込んでしまった。
声のする方を見れば真雪の反応が一番遅かったらしく、男達は即座に標的を捉えていた。
男達の視線の先には。
「慎哉くん、どうして窓から……」
窓をよじ登り、リビングに入って来ようとする慎哉がそこに居た。
「俺もこれからちょくちょく来るから、よろしくね!」
「う、は、はい。よろしくお願いします」
「真雪ちゃん、九条なんかに頭下げなくて良いよ〜」
「そりゃねーだろー」
慎哉とライカのやり取りを微笑ましく思い、真雪は笑みを零す。
いつも自分を気遣ってくれる優しい人達。
誰も信じれないでいた自分を、見捨てる事無く、守ってくれた人達。
愛しく思える、この人達に自分は何が出来るのか。
かけがえのない人達に出会えた事に感謝し、真雪は心から笑えている自分が嬉しい気持ちで一杯になった。
真雪の幸せは、目の前に広がっている。
-完-