「そんな事があったんですか。真雪には、本当に驚かされますね」
驚きながらも、少し顔を綻ばせる榊。
榊の考えを察した凛は口元を緩ませた。
「肝が据わってると言うか……。だからなんですかね、私達が怖くないのは」
「かもしれないな。だからこそ、俺達は真雪を側に置いておきたくなるのかもな」
そうですねと同意した榊は優しい笑顔で、楽しそうにお茶の準備をする真雪を見ていた。
榊も凛も口には出さないが、自分達を普通の人とわけ隔てなく見てくれる真雪が愛しく。
自分達の仕事を見ても、今までと変わらぬ態度の真雪に、安らぎを感じていた。
「凛は真雪をこのまま私達と、暮らしても良いと思っていますか?」
「俺は問題ない。和泉やライカは、真雪がここを出て行くなんて思ってもみないんじゃないか?」
「それはそうかもしれません」
トレイにお茶を乗せキッチンから出て来た真雪は、楽しそうに笑う榊達を不思議そうにしながらテーブルにお茶を並べる。
「どうしたんですか、何か楽しい話でもしていたんですか?」
微笑む真雪に榊が目を細めて答えた。
「えぇ、楽しい話をちょっと。和泉とライカを呼んで来てもらえますか?」
「はい、じゃあ呼んできますね」
一体何の用事があるのかわからず、真雪は小首を傾げながらリビングを後にした。
「皆の前でハッキリさせた方が良いでしょう」
「そうだな、一応心配はしてるだろうから」
そんな会話を榊達がしているとは露程も知らず、真雪はライカ達の部屋へ向かっていた。