「ライカくん、昨日はありがとうございました。お香の良い香りで、とても良く眠れました」
真雪は箸を置き、ライカに頭を下げて微笑みかけた。
応えるように、ライカも良かったと笑顔を見せた。
そうして皆の顔をゆっくり見渡しながら、真雪は席を立つ。
「皆さん、昨日は本当にありがとうございました。感謝しても、しきれないくらいです。本当にありがとうございました」
身体を大きく折り曲げ、真雪は皆に自分なりに感謝の意を表した。
自分の我侭を通させてもらい、自分なりに決着がつけれたと嬉しさがあったから。
例え凄惨な状況を目の当たりにしたにしろ、全て自分が望んだ結果。
そう思えば感謝してもしたりないくらいなのだが、自分に出来る事といえば頭を下げ、礼を述べる事しか出来ないでいた。
「真雪ちゃん、もう良いよ、わかったから。元気そうで良かった」
「そうですよ、さぁ顔を上げてください」
榊は真雪の肩に手を置き、顔を窺うように覗き込み頬を緩ませた。
「そうそう、子猫ちゃんは笑ってる方が可愛いから」
「九条に言われなくてもわかるっつーの。な、真雪」
だらしなく笑う慎哉に、和泉は皮肉った笑みを見せる。
それは、自分の方が真雪を知ってると言わんばかりに。
それに気付いた慎哉は零す。
「嫉妬心丸出しの男って格好わりー」
「九条も命知らずだな。うちの嫉妬王子が睨んでるぞ」
皆にコーヒーのおかわりを運びながら、凛は慎哉の耳元で囁く。
視線を感じた慎哉が顔を上げれば、口元を歪ませて妖しく笑うライカが見ている。
「地獄耳も厄介」
怯える慎哉は、凛に隠れていた。