次の日、朝食になっても起きない真雪を心配した榊は、様子を窺いに部屋を訪れた。
控えめにノックをするが応答はなく、ドアを開ければ微かに寝息が聞こえる。
昨夜の疲れが出ているのだろうと、榊は静かにドアを閉め部屋を後にした。
皆の待つダイニングに行けば、朝食を食べ始めていたライカが榊を待ち構えていた。
「真雪ちゃんどうだった?」
「良く眠ってます。もう少し眠らせてあげましょう。しかし、ライカのお香は効きますね」
「へへ、でしょ〜?気持ち良い夢でも、見てくれてれば良いんだけどね」
照れたようにはにかむライカは、眠る真雪を想う。
対照的な和泉はよほど空腹だったのか、榊達の会話を耳にしながら皿に盛られた最後の料理を口に放り込んだ。
「ゴチ、美味かったー。真雪まだ寝てんだ」
「昨日は疲れただろうからな」
凛が朝食をとろうと席につくと、無遠慮にエントランスを走る音が聞こえ、そして勢いよくドアが開けられた。
「子猫ちゃーん!おはよー……って居ねぇし。子猫ちゃんどこに隠した?」
一人で素っ頓狂な事を言う突然の来訪者に、住人は唖然とする。
「朝っぱらからなんだよ、九条。こっちは朝飯中だぞ」
「和泉は食い終わってるじゃん。子猫ちゃんは?」
部屋に入るなり、ソファーに腰を下ろし辺りを見回す。
「真雪はまだ寝ています」
意に介さない榊は、静かに箸を進めながら答えた。
「しかし、お前はどうしていつも屋敷のセキュリティを簡単に突破して来るんだ」
「俺得意だから、そうゆーの」
あっけらかんと笑う慎哉に、凛は大きくため息をついた。
「凛、セキュリティの見直しが必要ですね」
「ちょっと、止めてよ、良いよこのままで。簡単に来れなくなるじゃん」
焦りを見せる慎哉に、それまで静かに食べていたライカが口を挟む。
「別に来なくていーよ。用事があるなら、電話でも良いんでしょ?」
「なっ!お前は俺に会いたくないのか?」
泣き真似をする慎哉に、ライカの冷ややかな視線が注がれる。
「誰が、誰に、会いたいって?」
「ノリの悪い奴」
さも詰まらなさそうに、慎哉はライカに口を尖らせて見せた。