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愛しき殺し屋
ラスト・ショー5



「きゃあぁっ!」

「真雪ちゃん!」

「御堂!止めなさい!」

「……テメェ」


虚を突かれた一同は、突然起こされた行動にいきり立つ。


「変わりに真雪を連れて行く。もう御守りなんかいらない。真雪がいれば何もいらない」


榊達は真雪を盾に取られ身動きが出来ない。
こうして会話をしている間に、尊は少しずつではあるが着実に真雪の動きを封じる。


「アンタ等、一歩でも動いたらわかるよね?首、へし折るから」


そう言って真雪の細い首に手をかけ、力を込める。


「……ゥグッ、た……ける、さん……」

「真雪ごめんね。俺について来て……一緒に死んで?こうなったら自分で片付ける」


真雪を腕に抱いたまま、テラスに足を進める。

テラスの階下には、鋭い鉄柵が天に向って牙をむいている。
月明かりに照らされる尖端は黒い光を反射し、開け放たれた窓から冷たい空気が静かに流れてくる。


「……尊、さん……ヤダ……」


涙ながらに小さく抵抗を示すと、尊は伏せ目がちに真雪を見つめる。


「もうこれしかないんだ。真雪が居なかったら、俺はあの時死んでいたんだ。真雪と……ただずっと一緒に居たかっただけなんだ」

「ヤダ……嫌です……」

「それに誰かに真雪を渡すくらいなら、いっそ」


遂に尊の身体がテラスの柵にぶつかって動きが止まると、真雪にも後はないと悟る事が容易に出来た。

緊張する真雪の身体に絡められた、尊の腕に力が入る。


「真雪の両親も待ってるし、俺も一緒だから怖くないよ?……俺は怖くない、そう……真雪が一緒だから」


耳元で囁かれた言葉に、両親に会えるならと諦めにも似た思いが真雪の脳裏を過ぎる。


寂しそうに微笑んだ尊は、真雪の頬にキスを落とす。

愛しげに見つめる瞳は、とても優しい。





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