「きゃあぁっ!」
「真雪ちゃん!」
「御堂!止めなさい!」
「……テメェ」
虚を突かれた一同は、突然起こされた行動にいきり立つ。
「変わりに真雪を連れて行く。もう御守りなんかいらない。真雪がいれば何もいらない」
榊達は真雪を盾に取られ身動きが出来ない。
こうして会話をしている間に、尊は少しずつではあるが着実に真雪の動きを封じる。
「アンタ等、一歩でも動いたらわかるよね?首、へし折るから」
そう言って真雪の細い首に手をかけ、力を込める。
「……ゥグッ、た……ける、さん……」
「真雪ごめんね。俺について来て……一緒に死んで?こうなったら自分で片付ける」
真雪を腕に抱いたまま、テラスに足を進める。
テラスの階下には、鋭い鉄柵が天に向って牙をむいている。
月明かりに照らされる尖端は黒い光を反射し、開け放たれた窓から冷たい空気が静かに流れてくる。
「……尊、さん……ヤダ……」
涙ながらに小さく抵抗を示すと、尊は伏せ目がちに真雪を見つめる。
「もうこれしかないんだ。真雪が居なかったら、俺はあの時死んでいたんだ。真雪と……ただずっと一緒に居たかっただけなんだ」
「ヤダ……嫌です……」
「それに誰かに真雪を渡すくらいなら、いっそ」
遂に尊の身体がテラスの柵にぶつかって動きが止まると、真雪にも後はないと悟る事が容易に出来た。
緊張する真雪の身体に絡められた、尊の腕に力が入る。
「真雪の両親も待ってるし、俺も一緒だから怖くないよ?……俺は怖くない、そう……真雪が一緒だから」
耳元で囁かれた言葉に、両親に会えるならと諦めにも似た思いが真雪の脳裏を過ぎる。
寂しそうに微笑んだ尊は、真雪の頬にキスを落とす。
愛しげに見つめる瞳は、とても優しい。