薄く笑う少年の後ろ、開かれたドアの向こう。
「……真雪、何でここに。それにその男、確かホテルで会った……」
真雪は和泉の後ろに隠されるように伴われ、榊と一緒に部屋に入ってきた。
ありえない状況に尊は自分の目を疑った。
「ライカくん、もう来ていたんですね」
「うん、どんな奴か見たくて早く来ちゃった」
「……こいつは真雪の知り合いなのか?」
尊は真雪に問いかけるが、真雪は尊を睨むだけで答えようとしない。
喩え射抜くような視線を向けられても一番逢いたかった真雪に会え、身体が歓喜で打ち震えるような気持ちでいた。
「真雪笑ってよ。俺の顔を見る真雪は、いつも笑顔以外なんだよな。怒った顔、泣いた顔、怯える顔。俺は真雪の笑顔が見たい」
尊は椅子から立ち上がり真雪の近付こうとするが、即座にライカと和泉が立ちはだかりそれを阻止する。
「――ったく、邪魔するなよ。俺は真雪と話したいだけなんだから」
「尊さん、私も話があります」
ライカと和泉の腕を引き、真雪は頷いて大丈夫だと二人に目で訴えた。
動きを止められた二人は何か言いたそうにしていたが、真雪の真剣な目に出掛かった言葉を飲み込み、尊を一睨みしその場を引いた。
榊は壁にもたれて腕を抱え、事の成り行きを静観している。
「叔父さん達……、尊さんの計画に加担していた人達は、もうこの世にはいません。尊さん、もうここまで来たなら全部話してください」
「この世にいない?まさか……親父達が死んだ?どう言う」
「それは俺達が始末したからに決まってんだろ。お前等の悪行の後始末を付けに、今日は来たんだ」
和泉は高圧的な態度で口を挟んだ。
その台詞に尊は俯き、拳を震わせ始めた。
「死んだ?親父達が?ザマーミロだな、愉快だよ!」
突如として高揚する尊は笑い声を上げ、その姿を見た真雪は動揺した。
「叔父さん達が死んで悲しくないの!?」
「はっ、悲しいなんて思わないね。あんな奴等死んで当然だと思ってるから、手間が省けた。本当笑いが止まらないよ」
豹変した尊に驚き、一同は声を出す事が出来ないでいた。
狂笑が止み、尊は真雪の瞳を優しく見つめる。
「わかったよ真雪。話してやるよ、俺がこの計画を立てた本当の理由」